株式会社オチマーケティングオフィス 


<129>GMS衣料品改革-4

衣料品売上の低迷状況

ここ何年もの間、総合スーパー(GMS)の衣料品売上が低迷し続けています。日本チェーンストア協会のデータでこの20年間の暦年売上額を見ても、ピーク時の19年前には総売上が16.8兆円強あったものが、平成28年では13.0兆円(77.3%)しかなく、衣料品売上に至っては3.5兆円弱あったものが、1.1兆円強(28.3%)まで下落し、衣料品の構成比も20.6%から6.5%までに低下し、大幅な凋落ぶりです。中小型GMSは食料品の依存度が高く、衣料品のシェアが低いのですが、GMS2強のイオンリテールやイトーヨーカドーでは構成比も15~20%はあるのですが、同様に売上は減少傾向にあります。

衣料品売上の低迷理由

低迷している理由を2つの角度から見てみます。つまり店頭売上はお客様の売場、商品等への評価バロメーターなのですが、営業利益は経営者への評価バロメーターなのです。
よって、まずは売上から見ると、
お客様のニーズを把握できていないので品番数が増え、売っていくではなく買ってもらう「待ちの商売」になってきている事。よって、売場には不要商品が多く、何を訴求しているのかが判りにくく、お客様にとって探すのも一苦労する売場になってしまっている事なのです。
セルフでも十分売上が取れる売場を構築できるのに、目的買いを中心にしたカテゴリー売場のみしか構築できていなく、目を閉じて掴んでもコーディネイトになっているテイスト軸のライフスタイル売場を編集出来ていないので、単品買いのお客様のみしか対応できていない事が原因です。

そして、営業利益から見ると。
自店のカードデータの収集はできているのに、分析、解析力に問題があり、顧客ニーズを把握できていないのです。
お客様のニーズを把握できていないので品番数が広がり、奥行きが浅くなり、不要な商品までも機会ロスを恐れてメリハリのない買取仕入を行っているのです。
そのために、販売実力以上の膨大な仕入が発生して在庫増に苦しんでいるのです。
その処分により、衣料品の非効率に陥り、赤字に転落しているのです。
併せて、価値の有無を判断できずに、チラシの乱用まで経費を使い、商品知識や接客技術のの低い販売員まで配置していて高コスト運営になり、儲からないのです。儲からないから原価率の低減に力が入り、価値を上回る価格になり、悪循環の堂々巡りに終始しているのです。

GMSの衣料品は何故魅力に乏しいのか
GMSの店頭にある商品はすべてとは言いませんが、ユニクロやしまむらやショッピングセンター(SC)のショップブランド以上に、良い商品もたくさんあるのです。しかし上記のように不要な商品も混在し、お客様にとって良い商品を見つけられない環境にあるのです。

まずは自店のお客様にとって、必要か否かの目線軸を持って、不要な商品を店頭から下げて、見る事から始めるべきで、それに不足の商品を加えて合算し、その商品を見易く買い易いように、テイスト軸で括った売場レイアウトする事が最優先されます。

売場は基本 引算のマーチャンダイジング(MD)であり、不要な商品を見つけて排除する事から始めるべきなのです。必要であり売場に不足してい商品を加えるのは即間に合わなくても、売場の不要な商品を、在庫があるからと店頭に出して置く事に問題があるのです。

ユニクロはパワーアイテムと中間的アイテムを徹底深堀し、売れても売れなくても良い商品とその奥行きを徹底管理しており、売れない商品を見越して、売れる商品での営業利益確保は盤石なのです。ロットも確かに多いのですが、ヒートテック等はイオンの同様の商品の生産量もそう変わらないのです。ユニクロも「島村も売場構築はGMSよりも劣るのですが、売れているとすべてが良いと見えて真似をする企業も多いのです。目線軸がないのです。、

また、しまむらは機会ロスを恐れず、次から次へと新品番を展開し、常に売場を楽しく見せての顧客訴求を意識しています。しかし、単品の商品力はGMSとそう遜色はないのです。これでも自主開発商品を増やそうとしているので、現状では満足していない表れなのです。この手法がしまむらに適しているかは疑問ですが、、

要は両社とも、強固なビジネスモデルを構築できているのです。GMSの衣料品においても、自社・自店にとっての強固なビジネスモデルを構築すれば勝てない訳はないのです。

GMSの衣料品売場が活況を取り戻せる見込みは?
箱を作ってから入れるモノを考えるのではなく、食品、衣料品、リビングにおいて、また紳士服、婦人服、雑貨等や、紳士服で言えば、スーツや、カジュアル、洋品、雑貨等の各部門別のプロの育成が優先され、それを束ねるマーチャンダイジンザーの育成と、それをお客様にお伝えできるプロモーションを徹底し、その上で全体を包含するマネージメントを深堀すれば、カテゴリーキラーにも十分太刀打ちできる事が可能なのです。

出来ないと思えばそこまでで止まります。まずは出来ると思い、やろうと一歩踏み出す事が必要であり、それに対する阻害要因を見つけ、それを一つ一つ排除していくべきなのです。
そのために、自社の力量を認識し、自社で出来うる事は自社で行い、不足を外部の力を借りてでも実行に移し、結果を完遂させる事が必要なのです。特に不足しているのは知恵であり、資金や人材、人数やハード面はそれなりにあるのですから、、、

ビジョンを明確に設定し、結果を出すために、「いつまでに」、「誰が」、「何を」、「どのように」、「どれくらい」達成すべきなのかを決め、出来ていない事を論う社外取締役や、理想のみを追求するコンサルティングではなく、理想と現実を見極め各社に応じた具体策を持っているコンサルティングの知恵を借り、OJTで実践して、社員にその手法を身につけさせる事に他ならないのです。

既に社員は「どうして良いのかがわからない」のであり、上を見て仕事をしているのですから、経営者が研鑽を積み、的確な指示を出し、実行させるトップダウン以外に道はありません。社員は自分の手法に自信があるのなら、自社が崩壊していくのを黙って見ているのは怠慢でありますが、自ら立ち上がって戦える人材は殆ど皆無です。その様な人材は既に戦ってきている筈なのです。物流会社で宅配事業を構築した方のように、上司や周りを口説いてでものし上がって来ているのです。その様な方がいらっしゃらないなら、いないと決めて回る仕組みを作るべきなのです。但し、モノを言える土壌は作っておくべきですが、、

スタートダッシュが遅れても、正しいゴール(ビジョン)を見定め、現在の自社、自店の立位置を的確に把握し、その差を一直線で走る以外にはないのです。拙速は禁物です。要は「計画は慎重に!、実行は大胆に!」なのです。

GMSの衣料品を回復・再生させるには?

1. 自社、自店の販売実力の把握(売上に見合う仕入の見直し=不要で無駄な仕入の削減)
2. 自社、自店の顧客マーケティング(カードデータは戸籍年齢であり、ファッションはイメージ年齢であり、年齢体型との相関関係で対応)
3. 店毎の顧客データによるローカライズ商品供給(店毎に顧客層が異なるので、店毎の品揃えが必要であり、それを俯瞰したセントラル・バイイングとエリア・バイイングの相関関係)
4. それからコト提案を設計し、そこに入るモノを開発
5. コト提案(テイスト軸によるライフスタイル提案)型セルフ売場構築=お気に入りの売場、ブランドですべてが揃うPB開発による売場構築とそれまでの繋ぎとしての編集売場構築
6. それをお客様に的確にお伝えするプロモーションの確立(チラシ、広告、宣伝等の投資価値があるか否かの軸による見直し=すべて数値化検証=方法は各社の立ち位置により)
7.ローコストオペレーションの徹底・必要な経費と不要な経費の見直し(これ以上販売管理費は圧縮できないと言う部門も十分に削減可能です=必要な部分は倍でも使用し、効果のある投資を実践=自社は「から雑巾」と言われた企業もまだまだ効果が出てきます)
8.以上の実践をOJTしながら、その「気付き」の出来る人材の育成(時代時代に経済環境が変わるのは当然ですが、その都度その都度にベストな判断の出来る)が企業を永続させるための重要な課題なのです。要は汗をかいて、知恵を出せる人材がすべてなのです。

最後に
再度、売上はお客様の売場や商品に対する評価バロメーターであり、営業利益は経営者への評価バロメーターです。売上が伸びても利益の取れない企業が多いのも事実です。利益率もGMSは現状低いのです。儲けなければお客様に満足して頂ける良いモノや良いコトを良い環境でお伝えして買って頂く事を継続できないのです。要は、お客様とウィンウィンの関係を構築しないと商売は維持できないのですから、他業界も参考にしながら、売上と利益の回復に向かうべきなのです。

売場以外にはヒントとマネーが落ちていないのですから、常に現場でヒントや気付きを見つける知力と、それを拾う体力を身につける事が企業を維持向上させていく重要なファクターなのです。食欲は限界がありますが、物欲、名誉欲は青天井であり、ファッションは箪笥在庫に沢山持っていても、「欲しい」と思って頂ければいくらでもまた買って頂けるカテゴリーなのです。

要は「欲しい」と感じて頂けるモノやコトの開発が課題であり、それを実践できるスキーム作りが必要なのです。そういう意味でもマーケットはブルーオーシャンなのですから、マーケティング力とマーチャンダイジング力、それをお客様にお伝えするプロモーション力、そしてマネージメント力の「的確で、バランスの良いビジネスモデル」の構築が不可欠なのです。

弊社は「企業ビジョンを明確にし」、「本当の貴社・自店の顧客マーケティング分析・解析により」、それを「クライアントに的確なマーチャンダイジングをコンサルティングし」、「それを可能にできる人材育成」を実践し、「クライアントの営業利益拡大」を目指しているのです。

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健全なる企業経営に早急に改善・改革できる事を祈念致します。


2017.03.27
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之


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