株式会社オチマーケティングオフィス 


<9>通信販売の現状と今後


昨今、通信販売事業は欧米で、急伸しているビジネスとなっています。
一方国内では、店頭売上が低下している状況の中では、健闘していますが、
まだまだ伸長率が低い状態です。
原因は欧米と異なり、百貨店などの大型小売業が近郊にあり、
1〜2時間も掛ければ店に行くことが出来て、
商品を触れられるといった環境も一因となっています。
しかし、日本のマーケットの中で、本当にそれが理由として正しいのかは疑問です。


1.顧客の通信販売の利用理由
現在の消費者は通信販売を利用する理由として、
 1)一般の小売店や大型店に無い商品がある。(48.6%)
 2)買い物に出掛けなくても良い。(48.0%)
 3)生活に便利な商品がある。(37.5%)
 4)カタログを見て探すのが楽しい。(35.9%)
 5)品質が良い。(8.9%)――すべて複数回答。東京都産業労働局資料(H15.3)
が挙げられます。
しかし、通販会社や小売業の通販事業で、このようなニーズに対応できているの
でしょうか?

2.通信販売の問題点
現在の通信販売については、新規のお客様のカタログの申し込みから始まり、
問題点は多い状況となっています。

1) PCでどこをクリックしたら良いのか、
申し込んだ事が本当に間違っていないかを確認したいが
一部の会社は確認メールがないなど、
小売業であれば店頭のどこに行けばカタログが入手できるのかが不透明な状況です。
また、どのようなカタログがあるのかの全容が判らなく、今回は期限切れでも、
次回の発行予定はいつであるかなどを知らしめられていません。
このような状況で新規顧客の獲得など「夢のまた夢」でしょう。

2)一人住まいの女性などは、お昼は不在であり、夜に配達に来られても顔を
合わせたくないなどの心理的ハードルもケアしなくてはなりません。

3)カタログ通販とオンライン通販の展開品番が異なり、在庫も別々になっていたり
しています。
本来の通信販売事業としては同じであり、たまたま手段が異なるだけであるはずの
通信販売の展開品番や在庫の集約も当然でしょう。
まず、通信販売の経営者から現場の方まで、自社の通販をカタログから商品まで
申し込み、他社の通販も申し込んでみるといった顧客スタンスでの視線で、
事業を見直す必要があります。


3.通信販売の今後の方向性
上記1の2)3)に対しては、必需品を効率良く展開していく事も重要ですが、
上記1)に対しては通信販売にしかないPB(プラインベートブランド)と
NPB(ナショナルプライベートブランド)が必要です。
本当に自店の顧客にとって必要な商品が見えているのでしょうか?
既存の仕入れルートであるアパレルにその要素を備えた商品がないのでしょうか?
ないのであれば、アパレルにPBやPNBを依頼する事も理解はできます。
また、百貨店通販の衣料品ブランドは百貨店の売場にないGMS中心のブランドの集積と
なっているカタログもあります。
確かに自店の売場にないものですが、GMSに行けばバリエーションも含めて、
多量に展開されています。
顧客視点のマーケティングに基づく商品の開発ができていれば、
ストアロイヤリティが高い小売業なのですから、通販ブランドを構築しやすく、
限定販売を前提にしての買取条件で計画的な数量を仕入れられます。
当然、他店との差別化ができている商品であるなら、付加価値が高いのであり、
NBよりも安くする必要もありません。
しかし、現状では、売場よりもカタログやオンライン通販の価格の方が
安く設定している商品が多いのです。
バイヤーの自社ブランド力のなさと顧客マーケティングへの自信のなさが伺えます。
要はNBよりも自社ブランド(PB)を高めようとする意識を全社で認識して、
全社一丸でPBを開発・推進することが必要です。

4.通信販売事業の改革阻害要因 
それができ難い環境があり、その根幹には「通販は店頭の小売とは異なる」という
考え方があるのでしょう。
本来なら、各社の顧客のライフスタイルを徹底的に分析し、
その中で自社の得意なターゲットを見出し、それに提案できるブランドを構築すべき
でしょう。
それ以外に必要な商品があれば、それは必需品として展開すべきです。
「結果として、自社のターゲットに即した提案がブランド化している」ことが
自然な流れの表れと思われます。

これらを包括的に把握し、目的を絞ったマーチャンダイジングによって、
通信販売独自のプライベート・ブランド開発が
ターゲット顧客のライフスタイルを理解した商品の開発となり、
必需品とのバランスを上手く仕掛けることが重要であると言えます。
特にブランドを資産と捉え、ブランド価値創造による消費者のライフスタイルの確立を
目指すビジネスの重要度が増すものと考えます。

これからのマーケットの推移を予測しながら、通信販売事業も顧客視点による
マーチャンダイジングの徹底が、必要な時代に突入してきています。
この実行が、皆様の企業の発展に寄与できるものと確信しています。

2007.06.01

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