株式会社オチマーケティングオフィス 


<88>クリスマス商戦

政権交代を皮切りに、経済回復への模索が漸く始められようとしています。
しかしながら、先は消費税増税といういばらの道があり、そう簡単には行きそうもない現状です。
各企業は現状からの脱却を求めてはいますが、現実手を付けられているのはほんの一握りの企業に過ぎないのです。
何故かと言えば、大半の企業の経営者達は実は現状にそう切羽詰まった危機感がなく、過去の成功体験にしがみつき、不景気という台風が過ぎ去っていくのを待っているのです。
しかし、一部の企業の経営者達は、現状を踏まえて先々を予測し、経営の舵取りを難しくても、信念を持って挑戦して行こうとされています。

年末のビッグイベントであるクリスマス商戦は、年々売り上げの低迷を余儀なくされています。可処分所得の減少が第一の理由ですが、業界の努力不足も大きな要因とは言えるのでではないでしょうか。
例年11月20日過ぎから、クリスマスのイメージに店頭を模様替えし、1人当たりたった数枚のギフト売り上げ確保のために、実質的に1か月余のイベントに経費も人材も時間も費やすのです。
しかし、この間の購買状態をみると、クリスマスプレゼント用に商品を購入する日とよりも、自分用に購入する人のほうが多いのです。つまり、プレゼント需要は「父の日」と同様、最終の1週間が最も多く、それ以前の購買には至っていないのです。この現状を踏まえれば、フェアの仕掛けも変わってくるはずなのです。

クリスマスが「父の日」と異なる点は、プレゼントする相手が父親には限らないということです。御主人や彼氏であるので、プレゼントの内容もより豪華になりやすいのです。実際、こだわりのあるグッズなども好評です。とくに、後半の2週間(12月10日頃から25日当日まで)の売り上げの内容は、セーターやシャツの組み合わせや財布、マフラーなど洋品雑貨へのシフトも見られます。
しかし、シーズンとしては、冬物の最盛期であり、コートやブルゾンなどの単価の高い商品を売り続けている時期でもあります。
従って、11月20日からのクリスマスフェアで、最初から洋品や雑貨を展開すると、単価ダウンを引き起こしかねないのです。できる限り、単価の高いアウターの売り上げを伸ばす必要があります。そして、直近の2週間になって初めて洋品雑貨を中心としたギフト需要対応型に転換すべきでしょう。


この時期は、もうアウターはセール待ちに入っており、実際は気温からしてもコートなしでも生活には困らないのが通常です。東京の12月の平均気温は7.9度であり、3月の8.6度とほとんど変わらない状態だ。11月後半にコートを買った人は、トレンド重視で、実用重視の人はもっと寒くなってからセールで購入しているのです。
そのため、女性客向けのノベルティーを準備すべきであり、男性へのプレゼントを買ったら、ついでにグッズなど自分への「ごほうび」がもらえるという仕掛けなのです。また、クリスマスフェアでも男性向けの商品では、オリジナル商品も開発しておき、彼女とのペアルックのセーターなども提案するのも良い方法でしょう。
オンリーワン=ナンバーワンのプレゼント用に、少し高価にはなっても、オリジナル商品も開発可能な体制を整えておくことが必要です。

しかし、クリスマスフェアの直後に、早い売場はセールに突入してきます。とくに百貨店のセーター売り場などは、12月26日から当然のごとくセールが実施されています。このことも「父の日」の後のセールと似通っています。では、いつ冬物を売るのでしょうか。
とくにセーター売り場は、カットソーやフリースの台頭を受け、11月20日から12月25日までがまともなプロパー期間であり、それ以外はほとんどがセール期間となってしまっているのが現状なのです。
また、セーターの春夏物の需要は圧倒的に小さく、日本のように湿度が高く、1日の寒暖の差がほとんど少ないマーケットにおいては、需要がほとんどありません。春のサマーセーターでさえ、一番売れる時期は3月初旬であり、一番着用しやすい時期は9月の第1から2週目です。このことが、セーターメーカーの疲弊に繫がっています。
これからのクリスマス対応は、11月末からの2週間をアウター販売に注力し、後半の2週間をギフトに徹底することで、効率の良い商売を追及する以外にはないのです。

以上、メンズ業界の四季折々について述べてきました。
さまざまな現状を踏まえて、今後も業界の方向性と対策を提言して行きます。

衣料品売場の活性化に向けて、是非とも顧客ニーズにフィットできる商品提案を望むものです。
実践はやってみないと判らない事もあるのですが、やる前に判断できる事は事前に抑えておくべきです。是非とも健全なる売場構築に早急に改革できる事を祈念致します。

2013.10.29
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之

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