|
<87>百貨店、GMSのこれからの経営戦略−1
(テイスト軸のライフスタイル型売場構築のためのライフスタイル型PB開発の必要性)
ショップブランドには歴史のある老舗ブランドが多く、百貨店で言えば三越、高島屋、伊勢丹、大丸、松坂屋、東急、東武、西武、小田急等、素晴らしい歴史と伝統のある呉服系百貨店、電鉄系百貨店が代表たるお店です。また、GMSにおいてもイトーヨーカ堂、イオン、ユニ―、イズミヤ等、そうそうたる規模を誇る小売業です。
彼らの強みは総合小売業ですから、店名によるテイストの絞り込みができない代わりに、様々なテイストを包含し、幅広いお客様に対応しているのです。
結果、店名からは1テイストの表明が不可能で、テイスト志向によるお客様がテイストの明確なセレクトショップや1ショップ1ブランドによるSPA型専門店に移行しているのです。
直近の百貨店売上は安定しているように見えます。
GMSもPBの売上は拡大基調ですが、売上全体としては既存店ベースで低下しており、PB比率が高まっているので益率、益額は良化しています。
しかし、ここ20年の業態別売上の推移を見れば明確に業態離れは起きているのです。
店頭売上はお客様の評価バロメーターであり、利益は経営者への評価バロメーターなのです。
別途、SPAを標榜するZARA、GAP、H&M、FOREVER21等は、1ショップ1ブランドを貫き、1テイストを軸にした提案による店舗数による規模の拡大を図っている戦略なのです。
彼らの強みは1ショップ1ブランドによるコーディネイトが可能であり、百貨店やGMSのように、お店の中の多様なテイストの中から、自分またはアドバイスを受けながら、コーディネイトをセレクトする事は不要なのです。
要はお客様の気に入ったテイストのショップブランドであれば、そこに行けば迷わなく全て揃う提案が出来るショップなのです。
SPAとは店頭起点の1ブランドによる企画から生産、そして1ショップ名での販売までを一気通貫させるビジネスフレームなのです。
バーニーズやユナイテッドアローズ、ビームス等はバイヤーの考えるコンセプトによるセレクトショップであり、現在でこそオリジナル比率を高めてはいるものの、SPAではないのです。
彼らは自分の考えるコンセプトの編集を第一義に置き、意思を表現してお客様に提案し続けている企業なのです。
またアパレルも1ブランドのテイストを重要に考え、拘りのあるグッズブランド開発を心掛けているのです。時間を掛けて熟成して、ロングタームでのビジネスを深耕して行こうとしているのです。ヴィトンやエルメス、シャネルも、ある意味ファクトリーやアトリエから派生した1テイストでのコンセプトを軸にしたグッズブランドです。
この中でも売手市場にしているのがラグジュアリーブランドであり、ブランドエクイティを高めて利益は後で付いてくるといったビジネスを心掛けているのです。
売手主導だからと言って、お客様を無視して企画、生産している訳では当然ありえません。そのような考え方であれば既にマーケットから淘汰されています。
これを衣食住で展開しているのが無印良品であり、ライフスタイルブランドとして、1ショップ1ブランド展開にてテイストを気に入って頂いたお客様のライフスタイルをすべて包含しているのです。但し、衣料品にはハンドルに遊びがなく、時代のニーズにもう少し柔軟なMD対応ができれば完璧です。
しかし、この無印良品の考え方は、ターゲットを置き換えれば十分に百貨店、GMSにおいても通用します。要は考え方を先人に学び、自社顧客マーケティングを徹底して実行し、その既存顧客にこうあって欲しいとの提案を続ける事がそんなに難しいことなのでしょうか?
これからの百貨店、GMSにはテイスト軸のライフスタイル売場構築が必要不可欠ですが、まだまだ緒にも付いていません。その上このライフスタイル売場構築に必要不可欠なテイスト軸のライフスタイルPB開発(衣食住の1ブランド)も、単品PBしか出来ていないのが現状です。
PB開発こそテイスト軸のライフスタイルを提案可能にできるショップ&グッズブランドにすべきなのです。
究極的にはリスクのない所に利益はないのですから、自社マーケティングの徹底によるPB開発が必要不可欠なのです。
出来ない理由を探せばいくらでも出てきますが、「こうあるべき」を決めたら、その阻害要因を浮き彫りにし、徹底して出来ない理由を潰していくのです。
出来ると考えない限り現状からの脱却は一歩たりとも不可能なのです。
百貨店、GMSにおいては、多テイストを包含した売場なのですが、カテゴリー別売場からテイスト軸の売場に転換させ、自分の気に入ったテイストはこのAショップブランドであれば、そのフロア以外は訪れないで良いフロア(衣、食はカフェレストラン、住)の構築をテイスト別にフロア構成を構築すべきでしょう。
要はテイスト別に多ブランド化(当初は2つ程度)が必要なのです。
但し、食品売場のみは1フロア構成が必要で、イタリアンテイストの生活をしているお客様でも、毎日イタリアン食を食べている人はいません。それでも食品売場には和なら日本食でのワールドを構築し、その売場内に惣菜、グロッサリー、菓子等をゾーニングし、そのワ―ルドで今日の食品購買は完結できる売場構築までは必要不可欠でしょう。
まずは企業ヴィジョンが明確に定められていないので、テイスト軸のライフスタイル売場やテイスト軸のライフスタイルPBのコンセプトも見いだせていないのです。
モノ作りの機能を構築する以前に、企業の方向性を早急に設定し、これからのお客様をどのように引っ張っていくのかを決定する事が重要で、自社の経営戦略が問われているのです。
お客様が必要としているモノやコトを探して、お客様の前に置くといった手法のみでは、これからの時代は生き抜く事が出来なくなります。よって、自社の企業ヴィジョンを明確にして、そのヴィジョンをお客様に提示して、共感を頂く努力の上、お客様に指示して頂く方向性が求められています。
2013.10.16
株式会社 オチマーケティングオフィス 生地 雅之
|