株式会社オチマーケティングオフィス 


<82>父の日対策

政権交代を皮切りに、経済回復への模索が漸く始められようとしています。
しかしながら、先は消費税増税といういばらの道があり、そう簡単には行きそうもない現状です。
各企業は現状からの脱却を求めてはいますが、現実手を付けられているのはほんの一握りの企業に過ぎないのです。

何故かと言えば、大半の企業の経営者達は実は現状にそう切羽詰まった危機感がなく、過去の成功体験にしがみつき、不景気という台風が過ぎ去っていくのを待っているのです。
しかし、一部の企業の経営者達は、現状を踏まえて先々を予測し、経営の舵取りを難しくても、信念を持って挑戦して行こうとされています。

今回からファッションのシーズンMDを切り口について、四季MDを提言してみようと思います。

メンズウエア業界にとって「父の日」は、年度前半の最大イベントになっているのです。しかし、売上は押しなべて不調なのです。そのため、早いブランドや売場では、「父の日」の次の日からセールに突入してしまうこともめずらしくありません。消費者は1日遅れの「父の日」まで出現している状態です。

7月1日からのセールを視野に入れた「父の日」のあり方について、再度見直しが必要です。
「父の日」のイベントは約1か月前の5月20日頃から始まっています。
しかし、実際の「父の日」のプレゼント購入は、間際の1週間に集中しており、その期間で90%を占めているのです。このうち、最後の2日間の売上のウエートが多いのです。

このことから見ても、店頭を「父の日」のイメージに表現していても、最初の3週間は本人用の購買になっているのですから、VP表現等も前半2週間と後半2週間とは差をつけておく必要があります。1か月間も店頭の変化をつけないで、「父の日」のイベント頼みになっている状況がスタンダードであり、そこに何の工夫も感じられないのです。
まだまだ、改善の余地が残っており、売上の低迷等の理由に「全国不況」を言い訳に使っているに過ぎないのです。

「父の日」のフェアのノベルティーにしても、男性向けがはたしてよいのでしょうか。ヴァレンタインディの女性客が自分用の「ごほうび」感覚で購買している状況を見ても、「父の日」にプレゼントをする自分に対する「ごほうび」という需要はあります。紳士物を購入したときに、贈り手自身が使用できるこだわりグッズを店側からプレゼントをされたら、心地良く感じるものではないでしょうか。

また、「父の日」のメインアイテムでは、雑貨や洋品が多いのが通常です。その中身が奥様や子供が、「かっこいい親父になってほしい!」と思ってプレゼントする商材になっているのでしょうか。
「父の日」にプレゼントをもらう人は、ニューファミリーの若いお父さんから、シニアのハッピーリタイア族まで、幅の広い年齢層の男性です。

ニューファミリー層の若いお父さんは、子供が小さいため実際は奥様の好みで購入したものを、子供からのプレゼントとして贈られています。団塊世代やその上のリタイア族は、大学生から成人になっている子供からのプレゼントですので、商材も幅広い種類が要求されます。

その人たちはどのような店でプレゼントを購入しているのでしょうか。実際自分がよく行く百貨店や専門店、GMS、ショッピングセンターなどのショップやコーナーで選んでいるのです。
購入商品は、贈る側のこだわりを優先しているケースも多く、「このようなウエアを着て、カッコ良くなってほしい!」「このようなグッズを使って、カッコ良く見られてほしい!」といった感覚と、ヴァレンタインディで言うところの義理チョコの感覚の義理プレゼントに二分されます。

この購買心理をとらえ、ショップやコーナーの商品構成を見直し、こだわりウエアやグッズを集積して売場を表現することも後半の2週間には必要と考えられます。
前半の2週間は、店頭イメージを「父の日」にしておくにしても、より実需イメージの商品展開を心掛けるべきでしょう。
このようなMDを設定し、実践、検証して「父の日」の新しい需要を掘り起こすことが望まれる。

衣料品売場の活性化に向けて、是非とも顧客ニーズにフィットできる商品提案を望むものです。
実践はやってみないと判らない事もあるのですが、やる前に判断できる事は事前に抑えておくべきです。是非とも健全なる売場構築に早急に改革できる事を祈念致します。

2013.06.25
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之

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