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<81>ゴールデンウィーク後の中弛み対策
政権交代を皮切りに、経済回復への模索が漸く始められようとしています。
しかしながら、先は消費税増税といういばらの道があり、そう簡単には行きそうもない現状です。
各企業は現状からの脱却を求めてはいますが、現実手を付けられているのはほんの一握りの企業に過ぎないのです。
何故かと言えば、大半の企業の経営者達は実は現状にそう切羽詰まった危機感がなく、過去の成功体験にしがみつき、不景気という台風が過ぎ去っていくのを待っているのです。
しかし、一部の企業の経営者達は、現状を踏まえて先々を予測し、経営の舵取りを難しくても、信念を持って挑戦して行こうとされています。
今回からファッションのシーズンMDを切り口について、四季MDを提言してみようと思います。
ゴールデンウィークの後は、売上が低迷するのが常です。前年割れをしているのが現状であり、中弛みはある程度理解できますが、例年同じゴールデンウィークの後なのに、前年実績を割ってしまうのは何故なのでしょう。
経済不況の影響があるのでしょうが、とそれでは何も解決できません。
でも、通常の落ち込み以上の落差を感じるのです。
お客にしてみれば、旅行疲れでショッピングに出かけたくない、お金を使ったばかりであり、さらに店に行ったら、ついつい必要のない物まで買ってしまうので行かないようにしているなどの理由が挙げられます。しかし、それは前年も同様のことです。ということは、店側の主体的要因が「中弛み」を引き出していると考えられます。
第一に、季節・気温の分析ができていません。
そのことが、気温の状態と店頭の商品構成のバランスの悪さとなって表れているのです。
5月の平均気温は、東京で18.6度であり、10月の17.6度と大差はないのです。それなのに、ヤング対象の売場では、長袖商品が消え、半袖商品が並んでいます。アダルトでもその傾向は強く、シニアゾーンでシャツを中心に長袖が半分ほどしか残っていない状態なのです。
アダルトカジュアルにおける5月のシャツ売り上げの比率は長袖が70%、半袖が30%であり、シニアゾーンで、長袖が80%を占め、ヤングアダルトゾーンでは長袖が60%になっているにもかかわらず、店頭在庫の長袖比率はアダルトで40%程度しかなく、ヤングゾーンはもっと少ない状態です。
半袖の売上が長袖を上回るのは、5月の最終週に入ってからですが、5月の初め、早いところでは4月20日頃からその状況の売場があることに原因があるのです。
長袖の色・サイズ切れが発生し、品番集約をしないで放置して、売り減らし状態の中で半袖を投入していくので、色・サイズがそろっている半袖に目移りする人も一部にはいます。しかし大半は、現状の長袖の中から探して、我慢して購買しているのです。チェーン化した店なら、長袖の品番を集約することで、色・サイズ切れを最小限にとどめておくことのほうが重要ポイントなのです。
第二に、店頭のフェアがまったくといっていいほど実施されていないことが挙げられます。
各社はゴールデンウィークのフェアと次に控えるメンズ業界のビッグイベント「父の日」に向けて、経費の節減もありますが、5月の店頭フェアはまったくと言っていい程実施されていないのです。
ゴールデンウィーク後の中弛み状態とはいえ、この時期の店には何がしかの来店はあります。しかし、お客は店頭に欲しい商品がなく、色・サイズ切れしている商品を見せられ、買わずに帰ってしまっています。このニーズをフォローすれば、売上増を狙える時期になるといえるのです。
前述のように長袖シャツの品番を絞ってくくり直すとか、新品番を差し込みで生産して売場を必要アイテムでまとめ、新鮮さを表現できれば、売上拡大することができるのです。
それに加えて、他社・他店が実行していないフェアを5月に仕掛けることにより、来店が促進されることは自明の理です。みんながやらないからこそ、差をつける可能性も生まれます。頭から否定せずに一度検証して見る必要があると思いませんでしょうか?
例えば、フェアは他社・他店が実施していないのですから、小規模のものでも十分と思われます。
「みんなで渡れば怖くない」ではなく、今や「みんなで渡れば怖い」時代に突入していると言っても過言ではないのです。
衣料品売場の活性化に向けて、是非とも顧客ニーズにフィットできる商品提案を望むものです。
実践はやってみないと判らない事もあるのですが、やる前に判断できる事は事前に抑えておくべきです。是非とも健全なる売場構築に早急に改革できる事を祈念致します。
2013.05.28
株式会社 オチマーケティングオフィス 生地 雅之
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