株式会社オチマーケティングオフィス 


<8>セントラルバイイングの功罪

1.仕入れの形態と多様化している消費者ニーズ
仕入れの形態は、セントラルバイイングとエリアバイイングに大別されますが、
いずれもメリットとデメリットがあります。
GMSはもとより、コンビニエンスストア、専門店チェーンなどのチェーンストア化した
小売業は、ほとんどがセントラルバイイングによる仕入れを行っています。
現在では、百貨店でさえセントラルバイイングによる仕入れで、
コスト低減のメリットを享受しようとしています。
しかし、顧客のニーズは地域によって、また、一人ひとりにおいても異なります。
バブル崩壊以降は、「十人十色」どころか「十人百色」とまで言われるくらい、
多様化が顕著になっています。
本部が一元管理するセントラルバイイングで、こうしたニーズに対応できるのでしょうか?

2.多様化した消費者ニーズへの対応
多様なニーズに対応するには、店頭在庫を多様に持てばよいと言うものでもありません。
企業(小売業、アパレル、素材メーカー、縫製メーカー)としても、品番数が増えれば、
企画、生産、販売、在庫のロスが生じてしますのです。
そのためGMSやコンビ二のバイヤーは、仕入れる商品を絞り込み、
商品ごとに大量発注する事によって仕入れ率の低下に邁進しているのです。
百貨店も同様であり、集中仕入れに目が向いているのです。
しかし、百貨店はオリジナル商品の拡充を重視する余り、
ピンポイントのイレギュラー商品を投入し続け、
多品番にわたってロスを生じさせている事も多々見受けられます。

3.プライベートブランドとナショナルプライベートブランドのあり方
問題はPB(プラインベートブランド)とNPB(ナショナルプライベートブランド)の
コンセプトであり、本当に自店の顧客にとって必要な商品が見えているのでしょうか?
既存の仕入れルートであるアパレルにその要素を備えた商品がないのでしょうか?
ないのであれば、アパレルにPBやPNBを依頼する事も理解はできます。
しかし、そのベースとなるコンセプトがあいまいであり、
十分なマーケティングに基づいた説得力が感じられない事が多い状態です。
顧客視点のマーケティングに基づく商品の開発ができていれば、
買取条件で計画的な数量を仕入れられます。
他店との差別化ができている商品であるなら、付加価値が高いのであり、
NBよりも安くする必要もありません。
しかし、現状では、NBよりPBの価格の方が安く設定している店が多いのです。
バイヤーの自社ブランド力のなさと顧客マーケティングへの自信のなさが伺えます。
要はNBよりも自社ブランド(PB)を高めようとする意識を全社で認識して、
全社一丸でPBを開発・推進することが必要です。

4.セントラルバイイングの功罪  
それができ難い環境があり、その根幹には「まずセントラルバイイングありき」という
考え方があるのでしょう。
本来なら、各店の顧客のライフスタイルを徹底的に分析し、その中で全店の共通項を
見出し、その共通項に当てはまる商品をセントラルバイイングすべきでしょう。
それ以外にエリア毎に必要な商品があれば、それはエリア毎に必要分を発注すべきです。
「結果として、セントラルバイイングになっている」ことが自然な仕入れのあり方と
思われます。

これらを包括的に把握し、目的を絞ったマーチャンダイジングによって、
共通商品を中心としたコアターゲットに向けた商品MDとエリアの特異性を理解した
商品の開発をバランス良く仕掛けることが重要であると言えます。
特にブランドを資産と捉え、ブランド価値創造による
消費者のライフスタイルの確立を目指すビジネスの重要度が増すものと考えます。

これからのマーケットの推移を予測しながら、顧客視点によるマーチャンダイジングの
徹底が、必要な時代に突入してきています。
この実行が、皆様の企業の発展に寄与できるものと確信しています。

2007.05.02

株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之


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