株式会社オチマーケティングオフィス 


<76>(顧客視点で、商品を絞れ!テイストでくくれ!ブランドを育てよ!)

「GMS衣料品売場の現状と今後」


リーマンショック以後、低迷していました景気も一昨年秋より、徐々に消費者の買い控えも脇が緩み出してきました。しかし、昨年3月の東日本大震災に一度元に戻りかけましたが、昨年4月以降夏の後半まで、順調に継続していました。その後はまた、低迷です。
これは消費者の節約モードに飽きがきて、購買意欲が高まっていたのであり、一巡した昨秋秋以降からはまた、節約モードに戻りつつあります。
この1年前の震災時には通信販売も必需品の供給不足と流通事情の悪化により、取り立てて芳しくなく、昨年末より漸く復活しつつあります。

1. 小売業の衣料品売場の明暗
現在の衣料品の小売業は大きく6つ(百貨店、専門店=FB+SC、GMS、ディスカウントストア、アウトレット、NET)に大別されますが、すべてのチャネルにおいて中々順調には推移していないのが現状です。

百貨店は前年割れがスタンダードとなり、一部の店が男の自主購買にチャレンジをした事で注目を集めていますが、全体的には紳士服売場どころか婦人服売場までQRのデメリットである同質化により、いままでの勢いを失いつつあります。

専門店については、統廃合が一段落して、紳士服においては大手有力専門店チェーンのドミナント戦略も進行の度合を深くしています。また、FBやSCにおいては、カジュアル中心に店のコンセプトを明確にしたショップが高収益を維持し、メンズ・レディスともに売上の優劣が出始めている業種です。

ディスカウントストアにおいては、まだまだ日用品の域を出ていなく、お客様の期待感も必需品の購入程度であり、日本のマーケットにおけるディスカウントストアの将来は、この高粗利カテゴリーの衣料品の構築が必須条件になるでしょう。

アウトレットでは、ある程度飽和状態であり、日本のお客様の理解度も欧米にくらべ低く、色・サイズ切れに対する不満が多いのです。それにより、当初からのアウトレット用商品開発をして投入している有力店までが存在し、またそのアパレルにおいてはアウトレットの売上が全社の60%を超えている事例は、日本における特殊なアウトレットの定義を構築しています。

通信販売(NETを含む)業界については、過去のレポートにて表現しているために、割愛します。

GMSにおいても、前年実績・前年踏襲型の売場構築・商品調達がまだ多く存在しており、経営トップの言う「変革の時代」に現場が対応出来ているとは売場を見る限り言えない状態です。
そこで、今回はGMS業界の衣料品について、掘り下げてみます。

2.GMS衣料品売場の現状分析
現在の売場は、婦人服はある程度のエイジ別ゾーニングが出来ている店が多いのですが、紳士服はアダルト・シニア層に向けた平場が縮小傾向にあり、ヤング・ニューファミリー向けに挑戦してきていますが、まだまだ完成度は低いのです。安定しているのはNBコーナーで、ほとんどテナント任せが主流となっています。子供服は婦人服と同様の平場とテナントとの併用が大半です。

その平場はアイテム展開がメインであり、テイストゾーニングなどはほとんど存在しないのです。ただ単にラック(販売員の減少により圧倒的に棚が少ない)に掛けてある状態で、同一品番が多量に並んでいるのも購買意欲をそそらない原因です。
売場には価格ヴァリューのみでなく、そのシーズンのファッション傾向やコーディネイトをヴィジュアルに提案して欲しいものです。

そこには根本的にブランド・テイスト不在の商品調達が見え隠れしています。
専門店に比べ、数段大きな面積の衣料品売場を持ち、大量の発注におけるコストダウンは元より、昨今は中抜状態まで進行しており、表向き買取条件で有利な仕入れが出来ているのは当然ですが、商品調達の中身は、まだまだ完璧な商品構成が出来ているとは思えないと言えます。

本当に自店のお客様がこれで満足されているのでしょうか?「商品が多量にあっても、欲しい商品が無ければ1枚も買わないし、逆に10枚しかなくても欲しい商品なら2枚でも買う」と言った事を理解し、マーチャンダイザー(MD)が売場のレイアウト・商品構成・商品展開方法・告知方法・接客方法・販売員の商品知識のレベルまで縦串を刺した目を持って把握し、運営すべきです。

またそれを、バイヤーや販売員に徹底した指示を実行することが必要と思われますが、まだまだ組織の分担制のデメリットが阻害要因となっているようにも思えます。
お客様から見て、大雑把に見える商品群・商品展開の方法・販売員の知識・接客対応のレベル等まだまだ改善できる要素があると言う事は、それを改善すればもっと良化すると言う事です。

3. GMS衣料品売場の今後の方向性
自店のお客様の購買行動の分析による「理想とする売場モデル」の設定をして、自店の現状とのギャップを如何に埋めて行くか?これに尽きるのです。

金太郎飴的な品揃えに終始する事なく、各店の特徴を把握し、「共通部分とイレギュラー部分の認識」により、地域顧客に密着した品揃えをモットーとし、本当の意味での顧客満足度の向上を目指して欲しいものです。

共通部分はより仕入れの強化を実行し、イレギュラー部分はタイプ別に分類し、地域を問わずに店舗タイプのくくりを実践するとある程度集約も可能となり得ます。

また、販売員はパートが多い事も逆に強味と言えます。彼達、彼女達は全く仕事に熱心な人が多いのです。商品知識も接客知識も教えていないから「知らない、やれない」のであって、教育を待っている状態です。よって、教えれば教える程店の戦力になってくれるのです。

一般的には資料を送付したり、各店の店長やマネージャーに一任したりがスタンダードです。店の管理職は管理が得意ではありますが、「このニーズにはこの対応」等のある程度具体的な実践を踏まえた指導が出来ていないのです。これが一番お客様の購買意欲を擽ります。
これこそ会社全体で指導する事により、顧客満足度の向上に寄与するものなのです。

4. GMS衣料品売場の今後の対応策
1)顧客視点のよる全体の再点検
=売場ゾーニング、什器レイアウト、商品構成、商品企画、商品調達、商品配分オペレーション、店頭表現、告知。販売接客、アフターケア等
作り手・売り手から買い手・使い手へ

2)ブランドビジネスの再構築
=ターゲットを絞って、そのライフスタイルに向けてのウェア提案
付加価値ビジネスへの転換

この2点に絞って対応を提言していくと、
A)売場の商品の30%カット
(同質化の排除で売場をすっきり)
B)同テイストによるグルーピング
(商品をまとめてトータル購買へ)
C)A+Bのベーシックにテイスト別差別化商品10%ON
(匂い出しで売場への導入)
D)テイスト別にネーミング(ブランド)して育てる
(認知=リピーター作り)

特にテイストグルーピングについては、大きく分けると団塊の世代の上の世代(ハッピーリタイヤ)と団塊の世代から団塊ジュニアの上の世代と団塊ジュニア以下の3分割であり、サイズグルーピングは団塊ジュニアから下の世代とそれ以上の世代の2分割が望ましいのです。

この様に区分の仕方の変化がスタンダードの時代にMDの見直しは常に必要であり、結果としての前年踏襲型はOKであるが、次シーズンを先に設定せずに、前年実績に基づく定番・継続品番・ベーシック品番・ボリューム品番等が一人歩きしている事も改善の余地が伺えます。
これにより、これからのGMSの衣料品売場は活性化するのです。

一つひとつの売場にスピリット(魂)を入れないで、完成度の高い売場構築ができる筈がないのです。その上で、パート社員の販売のレベルアップを追及するのです。パート社員は、教育すれば十分に期待以上の答えを出してくれます。
但し、まずは教育する側の意識改革が前提ですが、、

衣料品売場の活性化に向けて、是非とも顧客ニーズにフィットできる売場構築を望むものです。
実践はやってみないと判らない事もあるのですが、やる前に判断できる事は事前に抑えておくべきです。是非とも健全なる売場構築に早急に改革できる事を祈念致します。

2012.12.31
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之

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