株式会社オチマーケティングオフィス 


<72>自主編集・自主販売の課題

リーマンショック以後、低迷していました景気も一昨年秋より、徐々に消費者の買い控えも脇が緩み出してきました。しかし、昨年3月の東日本大震災に一度元に戻りかけましたが、昨年4月以降夏の後半まで、順調に継続していました。その後はまた、低迷です。

これは消費者の節約モードに飽きがきて、購買意欲が高まっていたのであり、一巡した昨秋秋以降からはまた、節約モードに戻りつつあります。
この1年前の震災時には通信販売も必需品の供給不足と流通事情の悪化により、取り立てて芳しくなく、昨年末より漸く復活しつつあります。

1.自主編集売場の構築
過去よりお伝えしてきている事ですが、小売業の自主編集売場の構築とは、自店の顧客マーケティングの徹底把握により、自店の顧客に次シーズンに着て頂きたいファッション傾向をマーチャンダイザーが模索し、その方向性に沿って仕入先の展示会をバイヤーが巡回し、必要な上代の商品を必要な量、必要な時期に、適正価格にて仕入れる事から始まります。各社の展示会にて不足商品を自ら作成し、そのアイテムの得意なアパレルでの生産を依頼するのです。
これで商品は準備できますが、その商品をどのような売場展開とプロモーションにて自店顧客に伝えていくのかがポイントです。売場展開は売場マネージャーとプロモーションは販促担当者とマーチャンダイザーがしっかりと固めて、シーズンに臨むのです。

2.自主販売売場の構築
自主編集を準備しても自主販売を構築できていない売場も多々散見され、半自主と呼称している売場も存在しています。つまり、商品編集はしていますが販売員を自主で運営すれば人件費の増加で利益が出にくいので、アパレルの販売員に委託しているのです。
あるいは販売代行を入れて、平均的な販売が出来るように構成を組む事も模索しつつあります。

3.自主売場の面積(自主管理実力の把握)
百貨店やGMSは自主面積を実力以上に確保している事が多く、百貨店で言えば1ターゲットでの自主編集売場の編集力が50坪とすれば100坪の面積を確保しており、顧客ターゲットに対し編集したシーンに対する商品提案が2倍の面積での表現となり、薄まった訴求となって顧客に響いていないのです。
GMSも同様であり、自主編集力が全店で6000坪であるのにも関わらず、15000坪や9000坪等を確保し、埋めるための商品を企画・生産・投入しているのです。このような状況が効率を悪化し、自店顧客にマッチしたコト提案やモノ提案が出来ない原因なのです。

4.経営層の戦略判断
ここ数年百貨店業界は、地方・郊外店をSC化してきていますが、果たして正しい戦略なのでしょうか?都心店では自主編集・自主販売が可能で地方・郊外店では本当に難しいのでしょうか?地方・郊外店の方が都心店よりも面積が少ないので、都心店での自主編集・自主販売面積が実力並の広さならそのまま地方・郊外店にて自店マーケティングの徹底の上に構築すれば、益率は確保できると思われます。当然、家賃や人件費等も低いので、坪効率が低くても運営できるものと思われます。短絡的にSC化でリーシング家賃収入のみに甘んじていると言っても過言ではないでしょう。逆に都心店ほど面積が大きいのですから、自主管理面積以外をリーシングすべきでしょう。
GMSにおいても同様で、自社能力を超えた自主面積を諦め、当面自主運営できる面積からのリセットが重要で、そこの自主面積が売上や利益目標を安定してクリアできるようになってからの自主面積の拡大を望むべきと思います。

また、最近百貨店の地方・郊外店の閉店も上記SC化戦略が上手く運営できていなかった事を証明しているのではないでしょうか?
そごう・西武の東戸塚店はSC化されましたが、思惑通りの売上を取れているのなら、今回のように沼津店の閉店にはならずに、東戸塚店のようにオーロラモールのようなSC化に向かっていたのではないでしょうか?

実践はやってみないと判らない事もあるのですが、やる前に判断できる事は事前に抑えておくべきです。是非とも健全なる売場構築に早急に改革できる事を祈念致します。

2012.08.27
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之

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