株式会社オチマーケティングオフィス 


<63>百貨店業態改革−2

リーマンショック以降低迷を続けていました百貨店売上が少しずつ底打ちし、浮上しつつあります。しかし、GMS衣料品売上は低迷を続けています。またこの震災の影響で一時低迷していましたが、4月以降消費が戻りつつあり、リーマンショックからの脱却が昨秋より1年を過ぎ、一巡した9月から再度低下傾向にあります。
この時期にこそ自店の在り方を根本的に見直す良いチャンスなのです。
そこで今回、百貨店業態が今後、安定基調に戻るためにクリアすべき課題を衣料品売場中心に掘り下げてみます。

リーマンショックという台風が過ぎ去り震災復興の後は、従来のマーケティング&マーチャンダイジング手法では生き残りません。オールORナッシングと言っているのではなく、理想を研究し設定しそれを掲げて、現状分析しそれを把握した上で、既存の良い部分はより精度を向上させ、悪い部分は思い切って改善するといった事が必要な時期なのです。「計画は慎重に緻密に!実行は大胆に迅速に!」が必須です。

1.既存顧客
百貨店の中心顧客層は、50〜60歳が中心であり、そこが飽和状態だから次世代顧客に向けてのターゲット戦略を取り出そうとしているケースが多いのですが、既存顧客が本当に飽和状態なのでしょうか?既存顧客のニーズを完璧に取りきれているのでしょうか?甚だ疑問に思われます。
既存顧客がいままで年間4回自店に来店いただいていたとしたら、回数は減少していないのでしょうか?また、1回当りの購入単価は落ちていないのでしょうか?

既存顧客は年間来店頻度ト1回当りの購買金額は落ちてきていると推測されます。
現在の売場に彼らが欲するものが少なく、不要なものが如何に多いか?
既存顧客に向けてのマーケティング不足が露呈してきていると言っても過言ではありません。
まずは、この自店の既存顧客のライフスタイルのマーケティングによるニーズ把握を徹底し、それに基づく商品仕入れを徹底すれば少ない商品で、適正な売上が確保できるものです。
それから、次世代顧客に向けての施策を打つべきでしょう。

2.次世代顧客
では百貨店の次世代顧客とは一体誰なのでしょうか?
百貨店のバイヤーの一部が考える次世代顧客層とは自店のメインターゲット層の10歳下の層を意識しており、かなり難しい層なのです。彼らは現在、自店より少し若いターゲットを主力に下百貨店で購入しており、年齢が高くなると自店に来ていただけると勘違いしているケースなのです。
実は、自店に取っての次世代顧客とは自店のメイン顧客ターゲットの25歳下、つまり自店の顧客の中心層が60歳であれば、35歳が次世代顧客層にすべきなのです。

現在60歳くらいのお客様の第一子は25歳くらいに生まれており、彼らは子供の時に両親に手を引かれてきた来店しやすい百貨店(自店)なのです。
しかし、現在自分で商品を購入しようとなじみのある百貨店に来てみても、自分達の欲しい商品はどこにもなく、結果として他の流通小売業(例えばFBやSC、ロードサイド店等)に流れ出しているのです。彼らはその店で購入する必要のない方達なのですが、現在の百貨店にはアダルトシニア向け商品が中心となっており、面白く感じていないのです。
まして、彼らはすべてがトレンド嗜好者ではなく、80%以上はコンサバ・リッチなお客様なのです。

このターゲットのお客様を意識した売場構築や商品構成を組み、プロモーションを仕掛ければ十分に自店の次世代顧客を獲得できるのです。
この顧客を獲得できれば、その子供達(30歳下)をターゲットにしたトドラー強化策等も取れるのです。

3.最後に
要は、自店の顧客マーケティングに不備があるのです。徹底した顧客マーケティングにより、自店既存顧客に自店が何を提案してくべきなのかを模索する必要があるのです。
来店されているお客様の顔とライフスタイルが見えれば、次はお客様が「何を提案して欲しいのか?」の把握よりも、お客様に「何を提案すべきなのか?」が重要です。

お客様は何を提案して欲しいのかが明確に認識出来ていないのです。それに仮説を立てて、潜在需要を顕在化する的確な提案商品のラインナップと、それを必要とする顧客ターゲットへの的確なアプローチが必須条件なのです。そして、その情報を流すチャネルの見直しが欠けているものと考えます。

「困っていない」と言われる人もあるでしょうが、困って無ければ売上不振にはなりません。
その人達は「困っていることに気が付いていない」のです。怪我をして血が流れ出しているのに、痛くないと言っているのです。今一度自店・自分を厳しく現状分析されるべきです。出来ていると考えた瞬間から自店・自分の成長は止まっているのです。

また本部のMDやバイヤー、店長や販売員は、自分が欲しい商品はどの様に探しているのでしょうか?自分が正価で購入というお客様になる事において、商品情報の流し方や売場表現の不備が認識できるのです。その時に初めて「お客様目線」が身に付くのです。

特に経営判断についてはスピード感がなく、即断即決が不可能に見えます。理由は決定権者に現場感覚がなく、自分で判断できる知識、経験を持ち合わせていない事が挙げられます。このような状態が続くと投資会社の経営感覚になってきます。「世の中が右に行くから、我々も行く」や、「他に成功事例がないから判断できない、やれない」といった回答が示しています。
要は「みんなが渡れば怖くない」状態で、自分の目での舵取りが出来ていないと思われます。

今後は「顧客視点での課題(商品と価格のバランス)発見、プロの技での改革」が必要です。
是非とも健全な店頭売上に向けて、百貨店業態の早急な再構築を祈念致します。

2011.11.29
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之

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