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<50>GMS衣料品改革-1(トップバリュコレクション)
リーマンショック以降も低迷を続けていますGMSの衣料品改革が少しずつ、始動しつつあります。今回はイオンの「TOPVALU COLLECTION」について検証してみます。
1.トップバリュコレクションの現状実態
8月27日(金)にイオン津田沼店、幕張店にて立ち上がりましたイオンの「TOPVALU COLLECTION」を当日朝一に見てきました。
事前告知ではSPA型ブランドとされていましたが、見た目はテイスト編集型ショップであり、単品の強さよりもトータルのテイスト表現でこなしていますGLOBAL-WORK的なショップです。
PBを作ればすべてSPAではないのですが、専門店会社を子会社として作り、そこで商品開発から販売までやっているからなのでしょうが、これはあくまでGMS平場の1ブランド多シーン集積型コーナーであり、専門店ではありません。
店頭データを駆使して商品開発を実施したり、ユニクロのように垂直統合を強化しているようではなく、レディスで言えば、EARTH MUSIC & ECOLOGY、ファミリーで言えばRIGHT-ONのような水平型PBイメージですが、展開方法はGMSの平場NBのシーン違いの寄せ集めを1ブランドネームにしたと映ります。
商品グレードと価格は従来のGMS平場商品と同等であり、小職が過去から言い続けていました「RIGHT-ONやGLOBAL-WORK、BISPAGE等の商品より、GMS平場の商品の方が品質等はレベルが高い場合が多いのですが、見せ方がアイテム展開の域を出ていないので、価格が低くても良く見えない」との指摘を売場編集が向上し、テイストで纏め上げているのは良い方向に進み出しているものと評価しています。
しかし、商品のブランドネームは多種混在しており、タグも統一感がなく、2年前から温めていた事業フレームとは思えません。
まず、2年間も温めている余裕がGMS衣料品事業部の現状にはありません。「良いアイデアがあるなら即やれ!」となるのは明白で、今回のようにタグやブランドネームの不揃いを見ても、今年に入ってからの事業スタートであると推測できます。
でも、やらないよりやった方が良いので、完成度が低くても、方向性が間違っていないなら、立ち上げてからの軌道修正で十分大丈夫です。
すべての企業が事業計画を立てて、その通り実行しても良い結果が生まれない状況の中で、トライ&エラーは当然です。
百貨店のリニューアルを見ても、実行しても効果無く、思惑と違ったところを手直しして初めて効果が出てくるのです。手直ししていない店舗は下降線を辿るのみです。
商品のくくりとしては、NATURAL以外はメンズ+レディス共通であり、NATURALは現在旬なテーマであり、SCでも前述のEARTH MUSIC & ECOLOGYやGREEN PARKS TOPIC等も時代の流れに沿った表現で順調です。
ジーニングについては、商品内容以前に、このネーミングは既に時代遅れではないのでしょうか?ジーニングとはデニムを着用したライフスタイルという意味なのでしょうか?
既に現在ではアウトドアでも、マリンでもデニム素材は適用していますので、このような素材でくくるテーマはいかがなものかと思います。
商品内容はアウトドア系であり、テーマもアウトドアで十分理解されたと思われます。
また、トラッドについては、セレクト系(UA-BEAUTY & YOUTHやTK-MIXPICE等)が展開していますモード・トラッド-系をずばり展開しており、25〜35歳ターゲットの商材です。
トラッドテイストのコンテンポラリー性は十分必要ですが、ヤングそのままでなく、35〜55歳に上手にアレンジすることが出来なかったのが残念です。
そして、スポーティフ(スポーツライフ)については、GMS得意の平場商品であり、折角このテーマ別ショップに展開するのですから、もう一味加えて、提案型にすべきであったと思われますが、まだエイジ幅が一番広いカテゴリーですので安定はするでしょう。
最後に白黒のモード系の商品がメンズもレディスも片隅に見受けられましたが、これは旬な時期には展開するが、これから暫くは無くして行くと発表されていました。
それならば、ブランド・ショップの立ち上がりに展開はしないでしょう。
他の商品の上がりが悪く(納期遅れか?)、売場が埋まらないから他の商品で埋めていると映りました。
それにしても、先程のトラッドのようにヤングすぎる商品構成です。
津田沼店はメンズ+レディスで180坪の展開で、女性の多いお客様を想定しているなら、壁面什器の上段のフェイスアウトの高さは高すぎて、女性は取れない状況です。
こういった事をお客様目線で修正を掛ければ、迷路のような什器レイアウトはお客様に飽きがなく、楽しめるものと思います。
また、エスカレータサイドで展開していましたチノパンツ等の柱になるアイテムが売場の中になく、TOPVALU COLLECTIONではないとの事で、もったいない展開と思われます。
2.トップバリュコレクションの今後の課題
まず、顧客ターゲットが明確であるかの確認が必要です。GMSは基本的に食品・日用品の売上比率が高く、カード顧客データにおいても、圧倒的にそのカテゴリーを目当てに来店されています。
しかし、その食品や日用品目当てのお客様が衣料品を購入されているのでしょうか?
恐らく食料品は近隣の老若男女が幅広く来店されて、購入されているのでしょうが、衣料品においてはその中の一部に特化して購入されているものと推測できます。
過去阪急大井町店の1Fが食品売り場であり、週に3回も来店されている人が週に1回も2F以上の衣料品売場に上がらないのです。
上がる人は食品購入者の一部(エイジが偏り易い)であり、商品対応に苦慮していました。
同様に、イオンの衣料品売場にてレジでお金を払っている人は50歳代以上か、20歳代未満のヤングが多く、いままでの平場の商品構成が如実に表しているものと思われます。
カード顧客の平均年齢は35〜45歳としても、衣料品顧客の平均年齢は20歳と55歳の山の平均年齢の40歳前半(シニアが多いので半分より少し上と推定)になるので、ニアリーと判断されているのではと思います。
イオンサイドに衣料品の顧客平均年齢をマスコミが聞いても、答えが無いようです。
要は一般的に衣料品売場のみの実態は把握できていないものと思われます。
この事は他のGMSでも同様と思われますが、セブンイレブンのレジのように、レジを打つ人は見た目の年齢を性別とともに10歳刻み程度で、入力しています。
特にファッションであれば実質年齢よりも見た目の年齢で実態把握をした方が、今後の商品企画には有効です。これからのGMS衣料品売場も同様にすべきと思います。
当然、男性用でしたら実質着用年齢も想定して入力すべきでしょう。
要は実質購入者(お金を払っている人)と推定着用者(実際使用している人)を把握し、代理購買比率が高くても、実際の使用者の顔を見る努力が必要です。
それにより、リアルターゲットが明確になり、商品企画が的を射た対応になるのです。
また、ウェアブランドを作るということは、1人のライフスタイルを追及し、その中の一部か全部を表現することが無ければ、コンセプトやイメージなどという言葉も使うべきではないのです。
無印などは1つのテイストで絞り込みしているので、衣料品の広がりができない逆の事例もあります。無印のコンセプトが好きな方はすべてあの衣料品を着用しているとは思えないではないでしょうか?
コンセプトが好きでも違うシーンへのこなしが提案出来れば、無印ももっと衣料品の幅と売上が増加するでしょう。
つまり、1人のお客様がテイスト的にすべての商品(シーンやテーマは多種あってもOK)を着られるという前提で企画すれば、結果としてそのテーマやイメージを理解されるエイジ幅の広いお客様にも購入されることになってくるのです。
このような考え方での絞り込みが結果として幅の広いノンエイジ対応ブランドになっていくのです。
モノ作りにおいては、現在のテイスト表現で問題はないのですが、SPA要素を各アイテムに2品番組込み、それをパワーアイテムとして展開すべきでしょう。
例えば津田沼店のメンズで言えば、10AWのボリュームになるチノパンとTOPVALUの880円JEジーンズを売場中央の大箱(フィッティングルームのある)の廻りに棚で提案し、それをパワーアイテムとして奥行きを付けたフォロー型商品と位置付け、その廻りにアウトドア(現ジーニング)を、コンテンポラリートラッド(45歳が着られるこなしに)を、スポーツ(これもワンマイルウェアに見えないアレンジ)にして、すべてのボトムをチノとデニムに結び付けてコーディネイトできる売場構成が必要です。
これでシーン提案のアウターや洋品と柱になるボトムとのコーディネイト提案できる環境作りができ、コーディネイト販売が容易くなり、よって1人当たりの購買単価も向上させられるのです。
レディスも考え方は同じで展開が可能です。
但し、この価格で販売員を付けて維持できるのでしょうか?
GMSのNBでは最低1名の販売員が年間PB込みで2000万円程度売れなければ、人件費がペイしません。
また、GMS-NBの半分か3分の1という平場の価格では枚数で3倍近く売らないとペイしません。
既にGMS-NBもコーディネイト商品構成で、販売員もコーディネイト対応が教育出来ている前提での売上です。
そして、イオンの売場はTOPVALU COLLECTIONからは販売員付消化条件との事ですから、他のGMS-NBアパレルと全く同じで、知名度が無い分、売場が一等地を与えられるとバーターです。
しかし、売上が取れなければ店長としては、NBを前面に出してくるのは明白で、商品次第の真剣勝負となります。
売れなければ在庫の山と化し、最後はイオンが引き取り処分に回ると予測されます。
3.次世代顧客ターゲット対応
イオンにとってのTOPVALU COLLECTIONは、現在の自店衣料品顧客の中心層を意識して構築したものではなく、いままで取れていないターゲットを確保しようとして展開していると映るのです。
当然、食品売り場や日用品売場に来店されているので、衣料品売場にて購入していただく事は、いままでイオンに1回も来店されていない方に向けてのラブコールよりも楽な戦略で、当然必要なのです。
但し、衣料品売場の既存顧客に対しての戦略がこれ以上取れないと判断しての次世代確保戦略なら問題があります。
衣料品既存顧客のマーケティングが確実に出来ていれば、現在展開しているような商品は半分程度で十分で、もう少し若々しい商品のMDも必要です。
若くするのではなく、若々しく見えるウェアが必要なのです。特にサイジングが重要であり、ほとんどサイズで失敗しているのです。
スーツにしても、現在SUIT-COMPANYが展開しているようなヤングスリムに見えて、実はAB体まで確実に展開しているから、50歳代までがSUIT-COMPANYで購入しているのです。
Y体、A体、AB体のスパン比率を見れば、5年前と大きく変化しており、5年近く前にはAB体スパンはほとんど無かったものです。
この若々しく見えるデザインでサイズ対応を幅広げることにより、50歳代までスタイル良く見えるファッションを提案出来ているのです。
このような対応をこまめに潰していけば、GMSもまだまだ活路はあるのですが、小さく生んで、大きく育てる方法が必要と思われます。
ユニクロの1勝9敗論は1勝が100億円で、9敗の1敗は10億円規模と見れば、1勝9敗でも91億円のプラスなのです。
GMSでもターゲット分析を徹底して、お客様目線での商品開発と売場構築さえやれれば十分利益が出る可能性を秘めているのです。
4.最後に
要は、自店の顧客マーケティングに不備があるのです。徹底した顧客マーケティングにより、自店既存顧客が自店に「何を提案して欲しいのか?」の把握とそれに対する的確な提案商品のラインナップこそが不可欠なのです。
出来ていると言われる向きもあるでしょうが、今一度自分に厳しく現状分析をされるべきです。出来ていると考えた瞬間から自店の成長は止まっているのです。
また、自分が自店で、定価で、自分着用の商品を購入しましょう。着用、洗濯等により自分がお客様になる事において、商品や売場環境の不備が認識できるのです。その時に初めて顧客目線が身に付くのです。
この内容はお客様と接点を持つ百貨店やアパレルにも適用できるのです。
「顧客視点での課題(商品と価格のバランス)発見、プロの技での改革」が必要です。
是非とも健全なる店頭売上になるように、小売・流通、アパレルの早急な戦略再構築を祈念致します。
2010.10.25
株式会社 オチマーケティングオフィス 生地 雅之
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