株式会社オチマーケティングオフィス 


<48>関西地区リサーチ情報R
 =大阪高島屋「gokai」+心斎橋大丸「うふふガールズ」+京都大丸「うふふガールズ」

小売業の売上が苦戦していますが、少しずつ底打ち感が感じられる様になってきています。
特に百貨店の閉塞感の中から、新しい息吹が感じられる売場もそこここに現れ始めました。
リーマンショック後の低迷の中、じっと耐えているのみでは何も生まれません。
一部の店は自店のマーケティングを再度実行し、ターゲットを明確に浮き彫りにして、仮説を立てて挑戦をし始めています。
そこで、「輝く売場」について、話題の店舗を中心にお客様目線にて感じるままに纏めてみます。

1.高島屋大阪店gokai
2010年3月2日に高島屋大阪店5F東館にオープンしましたレディス・ヤングブランドの集積「gokai」はいままでの百貨店には稀な売場として生まれました。
特にファッションビル系のブランドが多いのですが、売場構築としては完全ショップではなく、フラットに見える売場作りがポイントで、ブランドリレーションも判り易いものです。
中央館からの導入口にバーバリーブルーレーベル、トゥービーバイアニエスベーとドゥファミリーを配し、中央にメイクアップソリューション、シューズ等、奥にシェルター、ラズルベリーと大箱を構え、間に小さいブランドを繋ぎ、面白くて見易い環境を整備しています。

3月2日のオープン時には中央のエスカレータ前に位置していましたピュアルセシン、スーパーハッカもゴールデンウィーク前の4月28日にはメンズ・キャラクターの一部移設跡地に移動し、元の場所はイベントスペースに変更されていました。
この場所は常に売場としてのシーズンテーマの顔となる表現が必要ですので、固定のブランドでなく流動性のあるイベントスペースにしておく事は良いと思います。
また、その隣に3月2日時点ではメンズ・カジュアルでしたが、移設後の4月28日にはインディゴバーと称して、リーバイス、エドウィンやミスシックスティ等を配し、今年のトレンドの一つでもありますインディゴを編集しているのは評価できます。
このイベントスペースのシーズン変化と、インディゴバーの秋冬版も、どう変化しているかが楽しみです。

2.大丸心斎橋店北館うふふガールズ
2009年11月14日に大丸心斎橋店北館のB1F〜B2Fにオープンしました「うふふガールズ」はレディス・ヤングブランドの集積であり、百貨店においては挑戦的な展開となりました。
伊勢丹本店の地下にターゲットを絞り込んだ「イセタンガール」をオープンしていましたが、それとは異なり、より一般的に落とし込んだMDとなっています。
B1Fでは、下りエスカレータ前にサマンサタバサプチチョイス、バナーバレット、アイズビットダイカンヤマを配し、エスカレータ裏側にジルバイジルスチュアートとカフェ等が展開されています。
B2Fでは、セシルマグビー、フリーズマート等の話題のショップを配し、ビス、ロミィジュリエッタ等が展開され、都心のファッションビル系のショップをそのまま持ってきた感覚であり、靴下屋まで混在しています。

過去大丸心斎橋店は独自に「うふふクラブ」と称して、アラサーを中心とした顧客を別途囲い込みしたカード戦略を取っていたものでした。しかし、大丸松坂屋統合の産物か、カード統一の名の下に消滅しており、その顧客の取り込みが出来難くなっていましたが、今回の「うふふガールズ」の新設において、その顧客までも包含できつつあります。
また、「うふふガールズカード」も2010年2月26日に開設し、顧客に密着できつつあります。
ゴールデンウィークの5月2日には、北館14Fの大丸心斎橋劇場にて、神戸コレクションとコラボで、ファッションイベントを開催しており、今までにない斬新な店舗イベントも今後の楽しみです。

3.大丸京都店うふふガールズ
2010年4月22日に大丸京都店の1Fの一部〜2Fの約半分に「うふふガールズ」京都版がオープンしました。京都版はアラサー狙いであり、ブランドもオーソドックスなものが多いのです。
1Fについては、ポイントの「コレクトポイント」の4ブランドを導入し、2Fにノーリーズ、エヌナチュラルビューティベーシック、ビッキー、メイソングレイ、組曲、リューデべー、バーバリーブルーレーベル、マークBYマークジェイコブス、マーガレットハウエル、ポールスミス等を配し、ボリュームゾーンもしっかり捉えたブランドリレーションとなっています。

1Fのコレクトポイントは原宿店に比べ、ブランドの差別化が少しずつ出来てきているので、見易くなっています。基本的に自社多数ブランドの混載ショップでの差別化は難しいものであり、一番上手く纏めているのがJUNで、後は看板を付けなければどのブランドか判り難くなっているのが、同質化しているブランドの悪癖です。その他、1Fはキャスキットソンが話題作りに貢献しています。
2Fは半分がインターナショナルブティックがあり、「うふふガールズ」との客層の違いをどう逆利用できるかが課題ではないでしょうか?

4.まとめ
大丸の良さは顧客が右に行けば、右に商品を並べるといった時代適合型ビジネスであり、心斎橋の客層との違いを見極め、京都版としてエイジを少し上げた対応は素晴らしいものです。
高島屋も大阪店の「gokai」を自社他店に持ち込む場合に、その店の顧客ターゲットを見据えたMDに転換されると思いますので、持ち込み方の差別化が興味をそそるところです。

いままでの百貨店はヤングが来ないからヤングブランドを置かないとキャリアやミセスを中心に構成した売場が多かったものですが、実態はヤングブランドを置かないからヤングが来なかった事に漸く気が付き始めたのです。

要は百貨店を含めて小売業は地域に密着した顧客に対応できないと生き延びない業態であり、如何に顧客にフィットできるかを問われているのです。
高島屋の「gokai」も、大丸の「うふふガールズ」も顧客マーケティングを確実に実行・分析し、仮説を立てて実践し、検証しながら修正を掛けて、よりMDの精度向上を求めているのです。
今後のチャレンジに期待しています。

「お客様目線で商品と売場の課題を発見し、プロの技での改革」が必要です。
是非とも健全な顧客満足度の向上になるように、小売業の顧客対応力を早急に再構築できる事を祈念致します。

2010.08.30
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之


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