株式会社オチマーケティングオフィス 


<46>衣料品の適正価格A

リーマンショックの後の景気の大幅悪化に伴い、ファストファッション小売業の台頭や
GMSの単品追求型価格破壊商品の登場により、本来のファッションビジネス自体が
方向を見失っているように見受けられます。
小売業の百貨店、GMS、専門店やそれに供給しているアパレル、商社がこの難局を
乗り越えるためには、マーケットをお客様目線で見ない限り、妥当な解決策は
見出せないのではないでしょうか?

コスト率と消化率
百貨店の適正価格は現在の30%OFFくらいとも言われています。
アパレルのコスト率は1970年代に上代の30%強であり、アパレルの販売管理費を
計算しても十分利益の出る状態でした。
現在のアパレルのコスト率は20%を切る会社も多くなり、それでも販売管理費を除くと
利益が残らなくなってきています。
理由はプロパー販売の消化率が50%を下回ってきており、百貨店の入店客数、
購買客数の低下に伴い、販売点数の低下に陥っているのです。
各アパレルは販売員を付けたビジネスであり、彼らは高額品でも売れるスキルを身に付けて
いるので、販売点数が低下しても粗利を確保するために上代を上げてきたのでした。
よって、プロパー販売消化率の低下により、各アパレルも価格を上げ、その悪循環により、
在庫が残り、その処分経費が掛かるといった負のスパイラルに陥っているのです。
当然、店頭やお客様を見ない企画マン、MD、デザイナーが多く存在し、机の上の仕事や
推測の議論のみの会議で商品開発が行われているのです。
これではお客様に付加価値や満足を与えられる商品を開発できる筈もないのです。

経費カットのポイント
小売業の売上は客数X客単価ですから、客数の確保が必然なのです。
しかし、百貨店の人時効率の見直しによる販売人員の削減やアメニティのアイデア不足等
により客数は低下の一途を辿り、当然売上の低下となり、その粗利補填を経費カットや
人員カット、納入率の引き下げによる経費見直しで生き延びてきているのです。
確かに自店のキャパ以上の必要の無いホストコンピュータの見直し等、不要なコストカットは
当然ですが、売場の接客対応に最低限必要な人員までカットするような対応になっており、
接客できない百貨店がここそこに点在しつつあるのです。

価格の信頼性
GMSにおいては、生鮮食品でもない衣料品の価格まで「期間限定」等の逃げ道での
価格の上げ下げが頻繁です。お客様は良く見ているのですから、期末の最終価格まで
GMS得意のベーシックアイテムには手を出さないのです。
最初から価格を安くしている店もあるのですが、それでも期末のセール時期にはマークダウン
しています。また、他のGMSにおいて同等商品の定価が高いものが期中よりマークダウン
して、同価格になった場合には、お客様は自店の青札の価格より他店の赤札の価格の方が
「価値があるものが安くなっている」と捉え、同価格ならその赤札の商品を購入しています。
これをGAPは3年くらい前に逆手に取り、価格を上昇させ、2週間くらいプロパーで展開したら
即20%OFFで販売しています。この手法が日本に合っているので、客数は多くなっています。
この心理を上手く利用すべきで、お客様には一度下がった価格が、また元に戻ったりしている
事に対する不信があるのです。
前述のGAPは「期間限定」の20%OFFが終了した次の日には、価格シールを貼っての
新プライスになっていますが、元に戻っているものはなく、20%OFFの時のプライスの
10円台の端数を切り捨てた価格になっており、お客様を裏切るものではありません。

お客様目線への回帰
このようにアパレルの「企画精度低下のつけ」や、小売業が「価格の不信感」を与えてきた
事が結果としてお客様を失ってきているのです。

アパレルや小売業はもう一度お客様目線を取り戻し、自分が自分のお金で、この売場から
商品を購入するのかといった自問自答をしていくべきなのです。その目線が結果として、
売場や商品の改善に繋がるのです。
これらの実行が、今後の発展に寄与できると確信しています。

2010.06.28
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之



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