株式会社オチマーケティングオフィス 


<32>コトにこだわる

百貨店やGMSの衣料品売上が苦戦し続けています。
これは「天気、景気、人気」の三気にすべての要因がある訳でもありません。
経済環境の不透明感の中、消費者は生活防衛に入っているのです。
また、ここ10数年、百貨店やGMSはモノよりもコトを重要視してきました。
現在はモノに特化した企業が業界のみでなく、牽引していますが、今回再度、百貨店や
GMSにおける「コトへのこだわり」の徹底の重要性について掘り下げます。

1.現在の百貨店の状況
現在の百貨店は大半、委託や消化条件によるアパレルへの場所貸しビジネスに等しい
状態です。よって、価格の主導権は在庫リスクのあるアパレルが握っているのです。
また、百貨店としては、仕入先が百貨店にグレードの低い商品を納品しないだろうと
考えています。
しかし、その事から特に催事における品質へのチェックは甘くなっており、安いから
仕方がないと、百貨店の看板の安心感で、大半買取で対応している紳士服専門店
チェーンやGMSよりも価格が高くなっているのです。
要は品質の割に価格が高く設定されているのです。
それでもセール品などは百貨店しか展開していないブランドであればいざしらず、
GMSに展開しているものまで混入されており、全くバイヤーの目の届かないところまで
入り込んでいるのです。
これでは、お客様の信頼感や満足感と、大きく乖離していると言えます。
いままでは、すべて百貨店というストアブランドの安心感と百貨店ブランドという
アパレルが築き上げてきたステータスのあるグッズブランドへの信頼感、ヴィジュアルの
完成度、販売員の接客のレベルの高さ等のコトへの傾注によって売上を構築して
いましたが、モノと価値のバランスが崩れてきており、コトに対する探求心は
薄れつつあります。

2.現在のGMSの状況
例えば、メンズウェアで言えば、同ブランドや同平場において、現在のスーツの価格と
シャツやスラックスやタイとの価格バランスも悪すぎます。
カテゴリーの一部のアイテムが価格破壊されており、衣料品ではスーツは大幅に安く
なってきていますが、他のアイテムでは価格破壊ができていない状況もあります。
例えば、GMSで10000円のスーツがメインで展開されているならば、ジャケット5000円、
スラックス3000円、シャツ2000円位の商品がスタンダードとして並んで欲しいものですが、
コンスタントにプロパーでは展開されてはいません。セールになってからバランスが
取れるものもあります。
もう一つのGMSの売上低迷の原因は、売場環境も理由の一つに挙げられます。
例えば、GMSで29000円のジャケットが柱巻で展開され、その隣に7900円のジャケットが
平場で展開されていると、全くと言って29000円のジャケットが売れる筈もないのです。
百貨店の売場環境であれば29000円のジャケットは問題なく売れるのに、GMSの
平場では高く感じられているのです。
GMSで高額品を売るには、少なくともブランド・ショップに見える工夫が必要不可欠です。
特に、GMSにおいては、女性が男性物を購入する比率は高いのですが、自分の物を
購入する比率は百貨店に比べて低いのです。
理由は単純に、近隣のGMSにおいて、自分のウェアを購入している姿を近所の人々に
見られたくない人もそこそこいるのです。平場ならNOでも、イン・ショップならOK。
お客様にこの心理的ハードルをクリアしていただくためにも、売場を平場ではなく、
コトを提案できるテイストのあるブランド・ショップやコーナーに見える工夫が
重要なのです。

3.モノにこだわる勝ち組
業界を問わず、現在の勝ち組の共通項はモノにこだわる姿勢が如実に現れている
企業が成功していると言っても過言ではないでしょう。
昨今の食品問題でも、歴然と評価の基準がシフトしてきており、「安全、安心」の
キーワードを忘れた商品開発が企業を脱落させているのです。
百貨店ももう一度モノにこだわりを持ち、本当にお客様にとって価値があるのかを
吟味していく事が必要です。
何もファストアパレルの様にすべて価格破壊をしていく事ではありません。
百貨店やGMSの経営者や社員が自ら、自店で、正価で商品を購入し、自分の目で
この商品を購入して良かったかを確認していく事をお勧めします。
そして、自らが満足できる品質の見直しをし、販売実力に合わせた発注量にて、
消化率を高めて、上代を抑えていく方向を推進すべきでしょう。
GMSに比べ百貨店の価格設定には、「この商品をこの価格で売りたい」と言う
バイヤーの思いがまず表現されていません。そこからがスタートと言えます。

4.自店顧客への時代にマッチしたコトの提案
要は、自店の顧客マーケティングが不足なのです。
徹底した顧客マーケティングにより、自店顧客が自店に「何を望んでいるのか?」の
把握とそれに対するコトの提案をしていくのです。
お客様目線を持つと、多様なニーズが明確に分類されてくるのです。
「これは高くても買う」=必欲品
「これは安くないと買わない/安ければ買う」=必需品
「これは安くても買わない」=不要品
と言うスタンスを見極める事が重要です。
また、自分が自店で、定価で、自分着用の商品を購入しましょう。このような売場
レイアウト、商品レイアウト、コトの訴求、接客等で、自ら商品を買えるのでしょうか?
自分がお客様になる事において、商品提案や売場環境の不備が認識できるのです。
その時に初めて顧客目線が身に付くのです。
「顧客視点での課題(商品と価格のバランスや提案力不足)発見、プロの技での改革」が
必要です。

是非とも健全なる店頭売上になるように、自店顧客への時代にマッチした衣料品の
「コトの提案」を、早急に再構築できる事を祈念致します。

2009.04.28
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之



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