株式会社オチマーケティングオフィス 


<30>モノにこだわる

百貨店、GMSの衣料品売上が苦戦し続けています。
これは「天気、景気、人気」の三気にすべての要因がある訳でもありません。
不透明な経済環境に、消費者は生活防衛に入っているのです。
百貨店やGMSにおいては、いままでコトにこだわり、消費者に提案してきましたが、
生活防衛に入っている現在は、「どうせ買うならベーシックで、永く着られるもの」「価格も
安いに越した方が良いが、品質も良いもの」に目が向き始めています。
そこで今回、衣料品のモノについてこだわってみます。

1.現在のモノの基準
百貨店やGMSは、「仕入先の持ち込む商品はそれなりの商品である」との前提で、
品質管理については無防備な状態です。
よって、商品の品質の主導権は在庫リスクのある仕入先が握っているのです。
百貨店やGMSが自らの自店の品質基準を持って、それをベースに基準以上の商品を
納入しているのですが、その基準と言うものは、色落ちの様な素材の品質基準と
釦付けや縫い目スリップ等の縫製の品質基準がほとんどで、その商品の持つ特性、
つまり風合いや着心地までを示唆したものではありません。
お客様に不都合が発生した時の対応書類として、自社基準と外部検査機関団体の
証明書を提出するための主旨です。
要は負の要素の有無を確認する事に目線がある基準なのです。
しかし、このような基準はクリアして当たり前の条件であり、お客様の満足度向上の
ためには、セーターの手持ち感や風合い、発色性、着心地など、お客様の琴線に
触れるポイントに目を向ける必要があります。

2.コトからモノへの転換
百貨店やGMSの商品部は、仕入先はそれなりの商品を納入していると言う前提で、
経営幹部やバイヤー達はモノにこだわらずにコトに目線を向け続けてきました。
つまり、売場は一部のアイテム展開平場を除き、テーマやシーン表現になり、お客様に
判り易い状況に見えています。
しかし、モノへのこだわりを置き去りにして、ラムセーターとかカシミヤセーターとかを
謳い店頭では表現していますが、本当にラムやカシミヤの風合いや味が出ている
商品なのでしょうか?昨年は偽装表示問題が食品を中心に発生し、衣料品のカシミヤ
表示まで及び、大手百貨店、GMSまで話題になり、回収を余儀なくされました。
また、現在の不安な状況下においての勝組は、衣料品のみではなく、
モノにこだわった小売業が並んでいるのです。
百貨店やGMSも再度モノにこだわり、「これを自店のお客様に着て貰いたい」と
思える商材の開発をすべきです。
仕入先の提案商品に、「これでは自店のお客様には提案できない」と
NOと言った事があるのでしょうか?

3.再度コトへの回帰
要は、自店の顧客マーケティングの徹底と分析不足なのです。
徹底した顧客マーケティングにより、自店顧客が自店に「何を望んでいるのか?」の
把握とそれに対する提案商品の品質と価格とのギャップを認識し、自店顧客に
合った商品を開発していくのです。
お客様目線を持つと、多様なニーズが明確に分類されてくるのです。
「これは高くても買う」=必欲品
「これは安くないと買わない/安ければ買う」=必需品
「これは安くても買わない」=不要品
と言うスタンスを見極める事が重要です。
また、自分が自店で、定価で、自分着用の商品を購入しましょう。
着用、洗濯等により自分がお客様になる事において、モノの不備が認識できるのです。
その時に初めて顧客目線が身に付くのです。
その商品が開発できた後に、再度コトを見直して肉付けしていくのです。
「顧客視点での課題(品質と価格のバランス)発見、プロの技での改革」が必要です。

是非とも健全なる店頭売上になるように、モノとコトのバランスが取れた衣料品MDを、
早急に再構築できる事を祈念致します。

2009.02.27
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之



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