|
<27>52週VMDは可能か?
百貨店衣料品売上が苦戦しています。 「みんなで悪ければ怖くない?」 決してそうではありません。 商品提案の不明瞭さのみでなく、売場が誰に何を提案しているのかが、判り難いのです。 そこで今回、「百貨店の52週VMDは可能か?」を紳士服中心に掘り下げてみます。
VMD(ヴィジュアルマーチャンダイジング)とは 業界用語として定着していますVMDとは、 基本的にはヴィジュアルプレゼンテーション(VP)+マーチャンダイジング(MD)、 つまり「見せて+売る」と言うシンプルな定義なのです。 要は、お客様の視覚を誘導して、本来訴求提案し、買っていただきたい旬な商品を 売って、お客様の満足度を高める戦略的手法なのです。 まずは自店の売場の顧客ターゲットの把握・認識が重要です。 自店のお客様に何を提案すべきかを把握し、それに沿った仕入れ計画の下、 5RIGHTS(適時、適品、適数、適価、適所)における仕入れ計画を実践し、 それをお客様に判り易く、欲しいと思っていただけるような提案をVPで訴求し、 その商品をその周辺にレイアウトする事なのです。
52週VMDの実態 現在の百貨店の衣料品売場では、52週VMDと称して、VPを週時に変更する指示が なされているケースを多々見受けます。 実際、上記の定義から言えば、52週、毎週売りたい商品が変わり、その都度、 それに合った商品に奥行きを付けて仕入れている店など全くありません。 ただ、売場にある商品を計画通りに飾っているに過ぎないのです。 この様な実態では、お客様には何も伝えられなく、面白くない売場を作っているに 過ぎないのです。 本来はレディスでも2週間単位の切り替え(26週VP)がやっと出来ている程度であり、 実際、そのVPされた商品の週時の売上が、そのブランドの売場や自主編集売場の 30%も占めてはいないのです。 つまり、週単位で売場の商品をオール入替えするくらい、提案と売り筋商品をリンクする 必要があり、現在その様な対応をしている百貨店もなく、受けるアパレルもありません。
気温の変化と業界の季節感 百貨店の紳士服売場の過去は、年間3シーズンしかなく、春、夏、冬であり、秋などは 全くといって良いほど、ビジネスにならなかったものでした。 スーツも半裏が夏物であり、総裏がそれ以外のシーズンをすべて対応していたのです。 しかし、温暖化現象と季節感のずれによって、一番暑い月が8月、7月、9月、6月となり、 一般的な夏(6〜8月)より、1ヶ月遅れています。当然冬も同様であり、一番寒い時期が 1月末〜2月初旬であり、過去の12月末〜1月初旬は寒いから、約1ヶ月遅れています。 この様な実態の中で、セールのスタート時期も7月、1月からでなく、季節感からすれば 8月、2月と昔のニッパチ(2月、8月)に戻そうと言う動きはごく自然なのです。 しかし、現実はアパレルも在庫過多であったので、他社よりも早く処分したい と言う理由により、また百貨店側もセール売上の前年実績があり、 前倒しによるセールから脱却できないでいるのです。 しかも、アパレルが商品在庫調整できつつある現在でさえ、覆せないでいるのです。
端境期対応商品の開発 過去は上記の様に、春、夏、冬の3シーズンであり、9月など全く売上低迷の月でした。 秋物は期間が短く売れないとの実績主義で、プロパーの提案も弱く、 奥行きも付けずに売場を埋めているだけであり、残暑厳しき折、セールの方が まだ売れている事もありますが、夏物のセールのため、冬のセールより単価が低く、 年間売上の低い月になっているのです。 アパレルとしても、実績ベースの考え方で、売れないから秋口の商品開発を おろそかにし、冬物を10月より投入して売場を確保しているに過ぎなかったのでした。 現在でも、実際冬物のセーターやコートが売れる時期は、11月20日を過ぎないと 全く動かないのです。 漸く、アパレルもセール用の商品も生産していた時代より、プロパーでの商品生産が メインとなり、セール用までわざわざ作らなくなってきています。 プロパーのマークダウンをベースに考え、作りこんだセール商材の新規投入を減少 させてきているのです。 但し、プロパーの消化率が低迷してきているので、店頭残が多く残ってきており、 思ったほどセール在庫が減少している状況ではありません。 しかし、この様な状況の中、晩夏企画商品(秋色+夏アイテム)、梅春企画商品 (春色+冬アイテム)等の商品も少しずつ芽を出しかけています。 この商材はプロパーですが、次シーズンのプロパーより少し安く、セールよりは少し 高いのですが、新規品番であり、色サイズが揃っていると言う強味で、お客様の認知を 取りつつあります。特にシャツやカットソーやセーターなどの洋品アイテムが多いのです。 理由としては、アウターは外出時しか袖を通しませんが、洋品なら部屋の中でも常に 着用しているので、前シーズンの色には飽きてきている事も要因の一つに挙げられます。
メンズの季節ターム これからのメンズ業界は、年間8タームを意識し、まずこの実行を徹底すべきでしょう。 1.
梅春(12月下旬〜2月初旬) 春カラーのカットソー中心とセール(1月下旬〜) 2. 春(2月中旬〜4月中旬) 春物オールデビュー 3.
初夏(4月下旬〜6月初旬) 夏物の洋品(特にカットソーより)中心 4. 盛夏(6月中旬〜7月中旬) 夏物オールデビュー 5.
晩夏(7月下旬〜9月初旬) 秋色の夏アイテム(半袖Tなど)とセール(7月下旬〜) 6. 初秋(9月中旬〜10月初旬)
秋色の秋アイテム(オーバーシャツや長袖Tなど) 7. 秋(10月中旬〜11月中旬) 秋物オールデビュー 8. 冬(11月下旬〜12月中旬)
冬物オールデビュー この各タームに必要な商材を研究開発し、店頭に並べて、どのような仕掛けやVPを すべきかを検討し、それを実行に移す事が最優先事項と考えます。 この8タームのVMDを徹底実行した上で、衣料品としては理想であり、 実現可能な26週VMDに向けて着実に積み上げて行きましょう。
「顧客視点での課題(提案と売場のバランス)発見、プロの目線での改革」が必要です。 是非とも健全なる店頭売上になるように、百貨店衣料品の売場を早急に 再構築できる事を祈念致します。
2008.11.26 株式会社 オチマーケティングオフィス 生地 雅之
|