株式会社オチマーケティングオフィス 


<20>紳士服の売場構築

百貨店、GMSの衣料品売上が苦戦し続けています。
「みんなで悪ければ怖くない?」決してそうではありません。
商品提案の不明瞭さのみでなく、売場そのものが判り難くなっています。
百貨店やGMSの経営者が自社売場のゾーニングや売場構築の方針を明確に持ってい
ない事や、持っていても社内に開示、徹底できていない事も重要なポイントです。
そこで今回、衣料品の売場ゾーニングと売場構築について掘り下げてみます。

1.現在の百貨店の紳士服売場設定
現在の百貨店はショップ、平場ブランド・コーナー、アイテム平場の3つに大別されます。
しかし、トップダウンで持ち込まれるブランドも多く、持ち込む経営層自体が自店の顧客
ニーズを的確に把握しているとは思えない事もあります。
当然、店は進化し続けていくのですから、チャレンジも当然必要ですが、何をもってこの
ブランドが必要なのかをバイヤーに説明し納得させて、あとはバイヤーにそのブランドの
品揃えや納期等は一任すべきでしょう。
その時には、売場ゾーニングを壊してしまう事も充分に検討しておく必要があります。

まずは自店の売場の顧客ターゲットの把握・認識が重要です。
既存顧客に目を向け、彼らの購買履歴等から、今後の提案すべきブランドや商品を開発
し、自店のブランドに欠けているのかを検証し、あれば表現を強化し、無ければ導入を検
討すべきでしょう。
要はまず既存顧客への提案を強化し、顧客の自店離れを阻止する事です。
そう簡単に新規顧客は確保できない事と、既存顧客が自店の現状の品揃えで満足して
いないといった事が挙げられます。
このような状況を打破するためには、バイヤーは自店顧客ターゲットのライフスタイル分
析と顧客のニーズ把握を徹底して実施し、それに向けたブランドのセレクトとそのブランド
の商材に見極めを行い、お客様の買い回り目線にてゾーニング設定をすべきでしょう。

現在の百貨店はオン/ オフの区分けを前提にしている店が多く、伊勢丹メンズ館や阪急
メンズ館の様に、男性自身を売場に呼び込もうとしている店が注目を浴びています。
しかし、現在の日本のダブルインカム比率はまだまだ低く、百貨店来店客の80%が女性
であり、紳士服売場でさえ、平日は女性客が大半の状態です。
この実態を踏まえ、紳士服売場の売上を向上させるためには、女性客に男性服の素晴
らしさを伝え、土日に男性と一緒に来店していただき、女性にコンシェルジュを務めてい
ただく位の売場構築が必要です。
オンとオフを完全区分けする事など、全く逆行していると言っても過言ではありません。
つまり、オンの売場も平日に女性客にも見ていただく環境が必要であり、エイジ別のライ
フスタイル・ゾーニングが重要です。
当然、売場の什器の高さも、女性に合わせた高さに設定しておく事も重要事項です。

現在であれば、メンズファッションはヤング、ヤングアダルト、ミドル〜シニアと大きく3つ
に大別し、ヤングはほぼ切り捨てているので、ヤングアダルトとミドル〜シニアの2つに
区分し、それぞれにオンとオフをグルーピングすべきでしょう。
ヤングアダルト向けのオンのキャラクターブランドとそのカジュアル平場(セレクト編集)の
セットとミドル〜シニア向けのオンの特選ショップとビジネス平場とコーディネイトブランド
のコーナー(テイスト無きアイテム平場は不要)のセットを2分し、ゾーニングすべきです。
これにより、カジュアルシーンの売場の周りにビジネスシーンの売場がレイアウトしてあ
れば、平日の女性客がご主人か子供や親のカジュアルウェアを見に来ていただいた時
に、ビジネスアイテムの提案まで見ていただき、土日にご主人や子供や親までを連れて
来店いただける布石になりえます。

2.現在のGMSの紳士服売場設定
現在のGMSの紳士衣料品売場設定は、アイテム展開が主流であり、テイスト表現が欠
けています。よって、必需品の目的買い以外は全くと言って良い程、魅力がありません。
食品売場に週に何度も来店されているお客様(90%は女性)を如何に衣料品売場まで上
げてくるかが課題であり、目的買いを意識した売場のみではとても課題のクリアは不可
能です。当然、女性の目の高さを意識した什器の設定も重要事項です。
そして、単品の価格訴求商品をメインに、コーディネイトをベースにしたライフスタイル提
案が必要不可欠です。
そのためには、紳士衣料品売場の前面に価格訴求の単品を集積し、その周りにその単
品とコーディネイトできる商品群をライフスタイル別にレイアウトする事が必要です。
この価格訴求単品商品をセレクトする事により、その周辺の商品とのコーディネイトを提
案すれば、お客様の満足度の高い売場になる事は間違いありません。

本来は自店の食品売場への来店されるお客様のライフスタイルを分析し、ニーズを把握
して、そのお客様に向けてのサムシングニューの提案を企画し、バイイングを実施すべき
です。しかし、全くと言って良い程、実行されていないのです。
つまり、折角食品売場に来店されているのに、衣料品は他で購入されていると言う事な
のです。こんなに勿体無い事はありません。
このままでは、GMSの衣料品売場も、そこに納入している仕入先も、消滅してしまうのは
明白です。
これを回避するには、先ほど記述の様に、自店顧客のニーズを把握し、来シーズンにど
の様なライフスタイルを提案すべきかを研究し、そのライフスタイルにどの様な商品が必
要不可欠なのかを設定して、商品開発に入らなければなりません。
まずは、バイヤーは店頭を廻り、お客様を見る事が一番重要で、そこが出来ていれば、
後の作業は簡単です。現状はバイヤーが店頭を見ないで、机の上で前年実績データを
見ながら、前年踏襲型のバイイングや売場構築に埋没しているのです。
これでは、GMS衣料品売場の未来はありません。

前年売上が最悪の状況であった小売業では、前年実績を白紙状態に戻して、自店の
顧客には「このライフスタイル提案商品をこの売場で購入して欲しい」と理想を掲げ、そ
の後に前年実績を認識して、そのギャップに対し、どのルート、方法でそれに向けて進め
ていくかを決めるべきであり、その提案をどのようにすれば売場で顧客に伝えられるの
かを検討すべきでしょう。

「顧客視点での課題(提案と売場のバランス)発見、プロの目線での改革」が必須です。
是非とも健全なる店頭売上になるように、紳士衣料品の売場構築を早急に再構築できる
事を祈念致します。

2008.04.30

株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之

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