株式会社オチマーケティングオフィス 


<124>苦悩するアパレルー2


アパレルが苦戦しています。特に百貨店アパレルは百貨店の低迷に引きずられて、大苦戦です。いままで百貨店向けのグレードの高いブランドを開発し、展開してきましたが、百貨店が現在の百貨店顧客への対応の遅れとともに、大苦戦に陥っています。

百貨店の衣料品は紳士服や婦人雑貨等の自主編集やアイテム展開売場の多いところはまだしも、婦人服売場のように、ブランドへの箱貸しのウエイトが大きい売場の苦戦が際立っています。百貨店もようやくPB開発や自主販売による自主編集売場に目が向き出しています。今までも挑戦はしていたのですが、消化・委託のビジネスモデルに胡坐をかき、真剣味が薄かったのは事実でしょう。

これから本気になればまだ良いのですが、腰が座っているとは思えません、そごう・西武はPB開発に一歩抜きん出ており、単品の商品開発によるものではなく、テイスト軸のように、キャリアやミセス、ヤング等に区分したリミテッドエディションの展開で、売上1100億円まで成長させていますが、発注の精度が低く、在庫過多にあえいでいるようです。

三越伊勢丹はナンバートゥエンティワンのように、婦人靴からのアイテム開発で、年間6万足までに至っていますが、テイスト軸によるトータルブランドでもなく、まして衣食住のライフスタイル型にまでは及んでいません。京王は婦人服PBを開発し、新宿店と聖蹟桜ヶ丘店の2店の展開をしており、LOTカバーのためにも他社への卸も始めています。

自主編集と言えば、高島屋の今秋からのスタイルラボを始め、百貨店顧客のボリュームゾーン向けの展開で、出足は好調のようですが、紳士服のCASE-STUDYのように買取在庫が膨らみだしてるようなケースもあります。三越伊勢丹のリ・スタイルはグレードの高いトレンド型の編集で、まだまだ成果までは至っていません。
また、自主編集はPBをゴールとする本来の小売業にとっては通過点であり、PB売場と自主編集売場とブランドの箱型売場のバランスをどう変えていくのかが時代に合わせたビジネスモデルになっていくでしょう。

このような状況の中、アパレルの生き残る道は、、OEMやOEMの受注生産拡大と、自主でコントロールできるPB開発によるFBやSC向けのSPA展開、そしてEC事業の拡大しかないように思われます。
自社の得意とする領域では百貨店アパレルは百貨店向けのクライアントに対するOEMやODMの拡大を当面の課題とし、FBやSC向けの百貨店プライスの50%程度の価格のSPAブランド開発が必要不可欠です。

別途、GMS系アパレルはいままでOEMやODMガメインであった為に。OEMやODMで維持しながら、FBやSC向けSPAブランドの展開に向けて、消化のビジネスモデルの研究とトータルブランド開発力が必要でしょう。まだまだ売場運営力や販売力にも課題がありますが、これを乗り越えなければ未来はないでしょう。

両業態ともそれをベースにしたEC事業が必須であり、ブランド知名度がなければ成功はおぼつかないので、両業態ともSPA型ブランド開発とブランディングが当面の課題と言えます。ECは今から焦っても難しいので、自社でできうるブランド開発と育成に注力し、育ってからEC事業参入でも遅くはありません。先行企業のTRY&ERRORを見ながら、成功事例の後追いでも十分追いつくのです。無理な事前準備は全くの経費の無駄遣いと思います。

まずは、現状を的確に把握し、その欠陥に手を入れて改善していかないと取り残されるのです。
本業がシュリンクしたとしても、営業利益が安定黒字化できない企業に新規事業が成功するはずもないのです。経営者は企業の理想をしっかり持ち、現実を的確に把握し、その差を直線で埋める施策をスピード感覚を持って、実行することが必要不可欠な時代と思われます。
健全なる企業経営に早急に改善・改革できる事を祈念致します。

2016.10.31
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之


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