株式会社オチマーケティングオフィス 


<121>百貨店の生き残りに向けて


百貨店におけるインバウンド需要が失われつつあり、訪日外国人は増加しつつも高額所得者ではなく、中間層の増加が大きいのです。中国での輸入品に対する関税の効率化に合わせ、高額所得者はわざわざ日本にまで来なくても済む時代になりつつあります。確かに高度な医療技術や安心安全の日用品や食品に関する需要はそう簡単には崩れていませんが、、
訪日外国人の中間所得者層は日本でアウトレットでのラグジュアリーブランドのセール品やアウトレット内に増えつつあるマツモトキヨシのような日用品(アウトレット価格ではないが、、)を一か所で購入しているのであり、観光や医療のようなコトにも目が向き始めているのです。
百貨店としてはインバウンド需要の陰に隠れての日本人顧客の囲い込み戦略がおろそかになっており、外国人売上を除けば前年比には届いていないお店が大半なのです。

このような環境の中、百貨店でやらなければならない事とやってはいけない事の軸をしっかり見定め、それに向けての具体的施策を徹底実行する必要に迫られてきています。
各社は販売員のスキルを上げ、売上の向上に努めようとしていますが、その前に入り難い売場を改善していないのです。入店客が増加していない現状で、売場の前の通路を1日100人が通り、VPやメインテーブルを見て10人が売場に入り、5人が購入されたとすれば、通路を200人歩けば10%の20人が売場に入って頂き、50%の10人が購入されれば前年比200%は可能なのですが、先ほどのように2倍の人が売場の前の通路を歩いては頂けないのです。
それであれば100人が前提として20%の人が売場に入れるような売場構築(見易く、買い易い)を構築し、入って頂いたお客様に教育下販売員のスキルが役に立つのです。
人の入らない売場の販売員にいくら技術を教えても役に立たないのです。

既に百貨店の売場の方たちは、入り易い売場が出来ていると思っているようですが、大きな間違いで、売場に入って来られないお客様は何故入らないのかを研究し尽くせていません。
お客様はその理由を明確に判っていないからなのです。何か気に入らない状況が結果として、入り難い売場を構成しているのです。プロの技が不足しているので、売場の方は気が付かないのです。例えば商品を出しすぎて何を訴求しているのかが判り難い売場であったり、什器が多すぎて通路が狭くなっていたり、お客様の一番見易い目線よりも高い商品陳列であったり、照明が暗くて判り難い状況であったりすることなのです。常に売場に立っているとそれが当たり前になっていて、気付きが出来ていないのです。

小職から見るとほとんどの売場に殺人事件が起きると警察が立入禁止の黄色いテープ(KEEP-OUT)を張っているように見えています。このような売場ではいくら良い商品を陳列しても、販売員をいくら教育しても何の役にも立たないのです。当たり前のことが出来ていると考えている点~間違いが始まっているのです。
もっと楽に売上は獲得できるのに、難しく考えすぎなのです。基本に忠実に、計画は綿密に、実行は大胆に、スケジュール管理は徹底に、、、勿論、時代時代に経済環境や背景は変化しているのですが、その時代。時点にて、自社・時点におけるベストチョイスが判断できうる人材育成も必要不可欠です。

別途、百貨店の売場はテイスト軸に展開されているケースが少なく、カテゴリーやアイテム軸の売場が多いのです。「財布下さい」や「スーツはどこですか」と言ったお客様の声に応じた売場展開が多く、テイスト混載の売場なのです。よって、トラッド嗜好の方が来店しても、お客様自体がファッションを勉強して自ら選ぶか、販売員についてもらってお勧め頂くかしない限りはテイストの揃わないコーディネイトになってしまうのです。
その点、セレクトショップやブランドショップはテイスト軸で構成されており、そのブランドやショップが好きなら自らセレクトしても、カラーコーディネイト以外は十分購入可能なのです。
お客様の声には裏に潜在需要が隠れており、(参観日に行くための)「スーツはどこですか?」や(釣りに行くための)「ベストはどこですか?との背景を洞察した売場構築が必要不可欠なのです。

百貨店業界は9.兆円強の売上があったにも関わらず、現在は6兆円に喃々としています。業界全体や協会等が足並み揃えての底上げは難しく、各社・各店が自社・自店のピーク時まで戻す努力をすべきなのです。自らは一生懸命やっているので、これ以上無理との判断をされているのなら難しいでしょうが、ピーク時から何が欠けてこの状態になっているのかを考えてみて下さい。
百貨店のお客様は来店時に明確な目的買いのお客様もいらっしゃいますが、百貨店に来たら何か良いものがあるのでは、何か良い提案があるのではとの期待感での来店も多いのです。何も購入商品を決めていないで来店され、気に入ったものを購入され、お店を出る時には満足感満載で店を出られるのです。家に帰れば同じような商品がクローゼットに満載にも関わらず、自分に必要だとの言い訳を自らしてご満悦なのです。

要は必欲品を少なくし、売らなくなったことに起因しています。先ほどの目的買いに応じ、明確な言葉で声を出したお客様に向けた必需品とその売場の増加が結果として、その目的買い以外のお客様の離反に結びついているのです。バーバリーがなくなり、それに相当する他のブランドが売れているのでしょうか?、また、東急日本橋が閉店した時点の百貨店顧客の売上がその後、三越日本橋や高島屋日本橋で確保できたのでしょうか?ショップブランドやグッズブランドに紐付いているお客様はそう簡単には他のブランドには移行しません。如何にブランディングが重要か、がおわかりになるでしょう。勿論ショップブランドとグッズブランドは別物ですが、、

経営者は企業の理想をしっかり持ち、現実を的確に把握し、その差を直線で埋める施策をスピード感覚を持って、実行することが必要不可欠な時代と思われます。
健全なる企業経営に早急に改善・改革できる事を祈念致します。

2016.07.25
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之


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