株式会社オチマーケティングオフィス 


<12>GMSの魅力あるメンズPB構築@(現状と理想)

GMSの衣料品メンズ売場は、「メンズ」と名付けられても、入店客の80%以上は
女性客です。
当然、女性を意識した売場構築、商品構築が望まれます。
まずは[女性」であり、ウィークディに来店される女性の目を通して、ウィークディの
代理購買とウィークエンドに男性と同伴で来店してもらう事を意識した売場構築が
必須条件です。

GMSの衣料品メンズ売場は、レディスか子供服と2分したゾーニングになっている
事が多いのです。
入店客の80%を女性が占めている中で、果たして本当にこのままで良いのでしょうか?
入店客の中での、購買層(実際にレジでお金を支払っている人)と着用層(購買された
商品を実際に着用されている人)のギャップを認識すべきであり、この購買パターンを
意識した商品構成や売場構築が最も重要です。

その中で、各GMSはPBの強化に乗り出してきています。
果たして現在のPBは自店の顧客の満足するものになっているのでしょうか?
再度、GMS衣料品フロアに来られている既存顧客をベースにして、これからのメンズ
PBの在り方と売場構築・商品提案を見直して見ましょう。

1.PBの位置付け(VISION)
プライベートブランド(PB)は、自店の顧客に一番適している商品構成ブランドで
あるべきです。「このようなライフスタイルで生活をしていただきたい」と言う提案商品
ブランドであるべきで、全国展開のナショナルブランド(NB)では地域密着型ニーズに
対応できない欠点をカバーするものです。

アパレルや商社を通さないから安く仕入れて、利益率が高いなどは結果論であり、顧客に
より密着した「欲しい」と思われる商品提案をできる事が最優先されるべきです。
また、自店で価格コントロールがやり易いように、仕入先に自社しか展開させないOEM
ブランドを紐付けさせ、平場に積ませている事も多いのが現状です。
これでは、ブランドの育成など覚束なく、このような記号型ブランド(ただネームが
付いているだけで、AをBに変更してもなんら売上は変化しない程度のブランド)の
展開をしていくなら、ブランドによるリピーターなど「夢のまた夢」であります。

PBは顧客に商品のリピーターでなく、ブランドのリピーターになっていただく方針を
立案し、それに向けて会社全体で育成していく事が重要です。

2.メンズPBの売場環境
現在のGMSのメンズ売場はショップ、コーナー、アイテム平場の3つに大別されており、
アイテム平場の売上の減少が一番の悩みです。
それは、顧客の購買心理が変化してきているのにも関わらず、旧態依然の売場構築に
問題があります。

消費者は単に安価なものを求めているのではなく、他店と同じものなら安く購入したいが、
衣料品では、気に入ったものがより安価であれば良いが、少々高くても購入されます。
要は、「コカコーラ」なら利便性が購買心理に働き、即冷たいものを飲みたいなら、
自動販売機で150円払って購入し、大量に購入して確保しておく必要のある場合は、
ディスカウンターや100円ショップでの購入になります。
どこで買っても同じである場合は安い店で購入しますが、他店になく、自分が欲しいと
思った衣料品は少々高くても購入されます。
要は、必需品と必欲品の認識と区分が重要という事です。

そのような提案が売場から消費者に訴求できれば十分であり、半額で安いからと
ジャケットを2枚購入しようなんて人は希です。
要は半額にしても倍の枚数は売れないという事です。

また、ネィバーフッド型GMSでは、ストアロイヤリティが低い店の平場で、ご主人の
ものとはいえ衣料品をGMSの衣料品平場で購入している姿を、近所の奥様達に見られ
たくない消費者心理が働いている事も否めない事実です。
事実を事実として捉え、この消費者心理を逆手に取ってのショップ、コーナー展開が
ポイントです。
要は、テナントに見せる事により、消費者心理の抵抗感を和らげる必要があります。
よって、PBを前述のライフスタイル提案型にシフトし、ショップ、コーナー展開による
売場構築で、トータル・コーディネィト販売をイージーにし、1人当りの購買単価を
向上させる事が重要です。
「GMSの中のテナントなら購買し易く、平場は嫌だ」と言う消費者心理のハードルは
結構高いのです。
また、レジ袋にも問題があります。コストの問題もあるでしょうが、「食料品と同じ袋や
ストア名の入った袋では家に帰る途中に近所の奥様達に衣料品の入ったGMSの袋を
見られると嫌だ」という心理も働きます。テナント専門店の袋ならOKです。
要は如何に高くて良いブランドの商品を購入しても、GMSのストア名の袋では持って
帰りたくなく、テナント名やブランド名の袋に入れて欲しいのです。
百貨店で3000円の靴を購入しても、百貨店の袋ならOKで、GMSで37800円の
ブランド靴を定価で購入しても、GMS名の袋では持って帰りたくないのです。
要は、ストアロイヤリティはそう簡単に上がらないと言う事です。

それならば、それを逆手に取って、ブランドロイヤリティを向上させる事により、
衣料品売上を拡大させる事に視点を移動させるべきです。
ブランドの訴求とは商品のみでなく、ブランド下げ札、ネーム、什器、ハンガー、
商品袋まで一元管理したブランド管理体制にすれば良いのです。

ここで、「GMSのPB」としての告知でなく、「お客様に密着したブランド」という
告知を第一に置いた考え方での訴求が必要です。
「買って良かったな」と顧客に感じていただき、結果として自社が提案している
PBであったと言う認識を消費者にしていただけるように実行すべきでしょう。
この事を継続実行していく事により、ブランドのリピーターが増加してくるのです。

3.商品MD
現状の各GMSのPB商品はNBより安価であり、価格誘導での売上拡大しか手を
打てていない状況です。一部のGMSがショップ、コーナー提案をしていますが、中々
結果が出ていません。
これは、ブランドのターゲットが明確でなく、今月は何を提案しているのかが消費者に
伝わっていない事が原因です。勿論、平場はそれ以上に酷い状況です。
PBとはいえ商品のテイストがバラバラであり、アイテム展開しているために見えては
いないが、そのPBを集積すれば、ただ昨年の自社、他社の売れ筋商品にPBネームを
付けただけが実態です。これでブランドとして育つ筈もないのです。

次に重要なポイントは、必需品と必欲品のブランド名の区分けです。
また、食料品と日用品と衣料品のPB名を統一しているGMSもあります。
食料品にテイストは表現しにくく、ファッションでトラッドティストの人が食べる
「トロ」とイタリアンテイストの人の食べる「トロ」を区別して提案できる筈もなく、
食品の切り口と衣料品の切り口とは、大きく異なるものです。

また、PB価格についても各GMSの考え方は異なります。「ベーシックは安価に」は
共通ですが、高価格の上限は各GMSにより異なっています。平場でやり過ぎのGMSも
あります。
売場環境が整わない状態で、例えばジャケット4900円の横に39000円の
ジャケットが混在しているアイテム平場は、消費者に価格に対する不信感を煽っています。
つまり、39000円のジャケットが価値があるように見えるのであれば、それは
それなりに重要ですが、その説明責任が見えていないという事です。高額品には高額品の
売り方があります。

その上、NBとの連動も重要なポイントです。自店PBにてカバーできないテイストを
持つNBにて顧客ターゲットへ不足部分を補うNBの展開の方法も重要です。
ただ、NBを展開するに当り、出来る限りブランドの存在価値をアピールする必要が
あります。
各ブランドのカラーやロゴを勝手に統一して売場を構築したりする事は厳禁です。
某百貨店の衣料品売場がブランド表示を極力抑え、自店の編集によって集積売場を構築
していますが、成功している理由はブランド表示を抑えた事でなく、自店バイヤーによる
自店のお客様に対してベストな品揃えをしている事であり、展開方法を触らずに、
ブランド表現をより出せばより売上拡大ができます。
ブランド力に頼らないというのなら、同じ商品を百貨店PBで同じ品質・上代で展開
すれば良いのですが、できないのです。
やれば売上は激減します。まだ百貨店のPBでさえ、育成できていないという事の証です。

要はブランドホルダーのいままでの積み重ねたブランドイメージやリピーターは、そう
簡単には取って変えられるものではないのです。
そうであるならばNBを展開するなら徹底してそのブランドのイメージやリピーターを
活用する事が必要不可欠です。
自社PBを育成する過程において、NBとのバランスはかなり重要な課題と言えます。

4.接客・販売
最後に、GMSの販売員について触れておきましょう。
ほとんどのGMSの衣料品売場には販売員は不在です。一部のGMSでは、ショップ、
コーナー展開しているブランドにおいて、メーカーの派遣社員か自店のパート社員が
付いている程度です。要はほとんどセルフ状態です。
某百貨店のCEOが売場の人事効率をタイプ別に分類して、売場の不要な人員を必要な
売場に配置換えして向上させている事例がありますが、現状のGMS衣料品売場は食品と
同じくすべてセルフ状態です。
よって、手っ取り早く価格を安価にして、消費者に取っていただく事にしているのです。

前述の売場環境に記載の通り、衣料品はただ安ければ良いと言うものではなく、欲しいか
否かが重要であり、現状のような乱雑状態でもたたみ直しもできない環境では、売れる
商品まで売れない状況です。要は「欲しい」と誰もが感じていないのです。
手を付けるのはPBの商品企画もそうですが、売場環境整備と販売員の強化も重要な
課題です。

企業として、この3点がバランスよく構成できると価格はここまで下げずに売れ、顧客の
満足度も向上し、トータル・コーディネィト販売によっての顧客単価UPも図れます。
一度原点(消費者目線)に立ち返り、自分で「この提案で、この品揃えで、この企画で、
この品質で、この価格で商品を自分のお金で購入するか?」を自問自答すべきでしょう。
是非とも、自店の顧客に合った商品構成のライフスタイル提案型PB構築を望むものです。

これらを包括的に把握し、目的を絞ったマーチャンダイジングによって、共通商品を
中心としたコアターゲットに向けた商品MDとエリアの特異性を理解した商品の開発を
バランス良く仕掛ける事が重要であると言えます。
特にこれからは欧米のように、ブランドを資産と捉え、ブランド価値創造による消費者の
ライフスタイルの確立を目指すビジネスの重要度が増すものと考えます。

これからのマーケットの推移を予測しながら、顧客視点によるマーチャンダイジングの
徹底が、必要な時代に突入してきています。
この実行が、皆様の企業の発展に寄与できるものと確信しています。

2007.09.01
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之


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