株式会社オチマーケティングオフィス 


<118>セブン&アイのお家騒動を見る


今回の鈴木氏、村田氏の退任と後任に社長に就任予定の井坂氏について、伊藤家と鈴木氏によるお家騒動と面白おかしく記載しているマスコミも多いようですが、果たして本当にそうなのでしょうか?
鈴木氏はカリスマ性を持った日本の流通業にはまれにみる経営者ですが長所のみではなく、人間ですから不足部分も当然持っているのですが、長所が短所を上回って短所が隠れていたので、維持されてきたのです。

小職がみる不足部分はホールディングスの会長と主要子会社の会長に据わり、すべてCEOであり、社長がすべてCOOの職務と設定していたことにより、CEOが考えて方向性を示すから、COOはその道を走れと周りは思っていたので、すべてCEOを見て仕事をしていたのです。それでも業種によっては凸凹がありましたが、ホールディングスとしては最高収益を上げていたので、誰も不満は口には出さなかったのです。

また、経営者は現場を知らなくても会社を黒字化できるのですが、現場を知らないで口を出していたのです。セブンイレブンのお弁当の試食等はその最たるものです。一消費者の意見と思ってくれと考えていてもその発言はすべてCEOの発言なのです。

今回の騒動は井坂氏に期待していたが、新しい需要の創造が出来ないので退任させると言う事がきっかけでしたが、日頃からその趣旨を井坂氏に話してその方向に導いていたのか疑問です。鈴木氏の心の中に秘めていても伝わりませんし、伝えていたとしても井坂氏がそれに応えられたかどうかは疑問です。

人間には4通りのタイプがあると考えます。
1.言われなくてもできる人
A=VISIONを明確にし、新しいマーケットを創造できる人
B=与えられた業務のほころびに気付き、応急処置や根治治療が出来る人
2.言われて出来る人
A=会社の軸が設定されている事が前提で、その指針に沿って業務を遂行できる人
B=上記Aの後ろについてでも遂行できる人
3.言われても出来ない人
A=指示された方向や会社の軸を無視して異なる道を選択して暴走する人
B=指示されても実行出来ない人
4.最初から言われない人
このようなタイプの人間をバランスよく配置して仕事をさせる必要があるのです。

井坂氏は数年前にセブンイレブンの社長に就任された際に、レジボタンのエイジ区分をそれまで若年層が多く、50歳以上が1ボタンであった点に気付き、既におでん等を売り出して、年齢の高いお客様が多くなっているので、50歳以上を3つのボタンに区分けしないとマーケティングに不備がでると気付かれました。まだすべてのレジが変更されてはいないようですが、、

最近では関東基盤の企業であり、関西でおでんが売れない事に対し、ローカルマーケティングを実施させ、関西のおでんは牛筋等が入り、出汁も味も濃い事を把握し、関西バージョンを開発されて、売上を大きく伸ばして来られました。これは上記1-Bで気付きの出来る人なのです。

本来なら鈴木氏が井坂氏に趣旨を話して期待値を明確すべきであったと思われますが、日本の企業の考え方であり、出来る人は上司から言われなくてもその殻を自ら壊してのし上がってきます。セブン&アイホールディングスの鈴木氏1名の経営体制や手法に不満が溜まっていたと思われますが、グロスの高収益でモノが言えなくなっていたのではないでしょうか?

しかし、井坂氏はここで勝負に出たのでしょう。今回外されると先がないので、ホールディングスのトップに出られないと判断し、社外取締役等の動向を判断して鈴木氏に苦言を呈されたのでしょう。すべて自分がやったとのコメントに鈴木氏は情けないと思われたようですが、日本経営の考え方の最たるもので、良いも悪いもすべての責任を取る社長のコメントとすれば問題ないと考え、58歳でよく言ったと思います。

小職はこのお家騒動の前から、イトーヨーカ堂の社長に井坂氏を起用されればIYのほころびを改善してくれると考えていました。今回の発表で井坂氏がセブンイレブンの社長を降りる訳ですから、後任人事でもやっていけるとの井坂氏と取締役達の判断なのでしょうから、、

GMSの改革はイオンリテールもそうですが、構造改革から必要と言われており、各店仕入や販売員が必要との疑似百貨店を意識した方向に向いており、この手法ではインバウンド効果のないこのままでは衰退していく地方百貨店の二の舞です。まずは業務改革で十分改革、改善できます。つまり現状精一杯やっているのに答えが出ないのですべてを否定しているのです。現状が精一杯やっていると思っている点が間違いの始まりなのです。軸がありません。

上記1-Bの気付きの出来る人が社長に据わり、企業の軸を明確に作り、それに向けての現状を冷静に分析してほころびを見つけ、それを補修する事でも十分に改革・改善は可能です。
また、現場(百貨店なら店長から部長級まで、GMSなら店長から課長級まで)への利益額予算の明確化とそれを実施するための権限移譲と評価制度の明確化が前提であり、売上至上主義から利益至上主義への転換が必要です。

小職の前職の会社で当時の社長に教えられた点は多いのですが、
その一つにお客様のニーズを把握して適した商品を開発することは当然重要ですが、それをお客様が購入されるか、それを百貨店に卸す場合にバイヤーがそれを必要とされるかは自社外でのイニシアティブが半分くらい存在しますが、

社内で100%完結出来る事、適正な必要量の把握による在庫圧縮、利益追求によるプロパー消化率の向上策、仕入原価率の圧縮、販売管理費の圧縮、店頭販売員の1名当たりの売上の向上策等、いくらでも社内で決定できる事なのです。これを徹底しながら外のイニシアティブ比率を抑えていくブランディングを並行して徹底すれば75%は計算できる経営ができると叩き込まれました。

それには下記の項目の徹底実施が前提ですが、、
1.自店に来店されるお客様のニーズ把握(マーケティング)
2.自店に来店されるお客様のニーズに適した商品供給(マーチャンダイジング)
3.自店に来店されるお客様へのプロモーション
4.自店に来店されていないが、その商品を必要とされるお客様へのプロモーション
5.売上に対する必要量の洞察力(妥当な仕入数の判断・在庫管理=MD)
6.その商品を販売するに適した売場構築力(什器と商品レイアウトとVMD)
7.その商品を販売するに適した販売員と最低必要人員(商品知識と販売技術)
8.それの全体を管理するマネージメント
9.その他

売場以外にはヒントとマネーが落ちていないのですから、常に現場でヒントや気付きを見つける知力と、それを拾う体力を身につける事が企業を維持向上させていく重要なファクターなのです。マーケットはブルーオーシャンなのですから、マーケティング力とマーチャンダイジング力、それをお客様にお伝えするプロモーション力、そしてマネージメント力のバランスの良い構築が必要です。
健全なる企業経営に早急に改善・改革できる事を祈念致します。

2016.04.25
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之


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