株式会社オチマーケティングオフィス 


<116>セット・プルミエ


イトーヨーカドーが展開しているセット・プルミエ(仏語でセブン・プレミアムと発表)はジャンポールゴルチエ監修のブランドで、主要店の衣料品売場のメインに場所に什器を製作し、そこそこの面積を確保しているブランドです。価格もいままでのイトーヨーカドーの20%も高くなく、著名デザイナーの監修であれば安く感じられる価格ラインです。しかし、全くお客様が売場に入っていないのです。販売員は専従で3名、常駐で2名を固定していると新聞にも発表されていて、2名は配置されているのですが、夕方でもお客様がほとんどいないのです。

また既に春物がセールになっており、レディスのポリエステルトレンチコートなどはあるイトーヨーカドー店やネットスーパーでは6000円(税込)=ほぼ半額に値下げされており、そごう西武のeデパート(NET)では5400円(税込)になっています。同一写真の下に価格が2つ表示されていますそごう・西武のNETとIYのNET/店頭の価格が異なる理由は判りませんが、、(その後統一されていましたが)、GMSやユニクロ等は期間限定と銘打って、価格をUP&DOWNさせており、価格の不透明感が顧客の信頼を失っている事に気が付くべきです。百貨店ではありえなく、旬な時期に着たければ高く、旬を逃せば安くなるとの理論通りの価格です。GMSは特に第1次、第2次値下げまでは本部コントロールで、その後は店任せのケースも多いのですが、、

著名ブランドでも売れない理由は一つ、商品がイトーヨーカドーに来店されている顧客のニーズを全く分析できていなく、ずれているのが原因です。鈴木会長がチャネル顧客をクロスして百貨店ブランドであろうが、GMSブランドであろうがどこでも買えるという発想の下、このような展開をしているのです。現実はありえなく、百貨店のグレード感を求めているお客様はモノが同じであればGMSの売場でも購入するという事はないのです。現にグランツリー武蔵小杉の西武そごうの売場を見ても、SCに百貨店顧客は来店していなく、SCで百貨店のモノを購入しようとしていないのです。

このような事例としては、そごう・西武のPBであるリミテッド・エディションがIYコラボで価格を下げてイトーヨーカドーで展開しだしてからの百貨店顧客はイメージが崩れ、リミテッド・エディションプラチナムを百貨店顧客用に発売するとTOPの意向とは逆の発想でのブランド展開をするとの発表も先日ありました。このようにチャネル顧客のマーケティングを実施できていなく、モノだけを購入されていると考えての売場や商品施策では小売業は成り立たないのです。

もっと顧客分析を徹底すべきですが、百貨店もGMSも顧客データはカード中心に半数以上確保できているにも関わらず、分析方法が単純すぎるのか、外部の現場MDを知らない企業に丸投げしているのかは別にして、真実を捉えられていない事が原因です。これを社内で出来る人材をOJTで育成できる教育プログラムから入らないと百貨店やGMSに将来はありません。

セブンイレブンには顧客分析の手法として、レジでの見た目年齢のボタンがあると聞いていますが、特にファッションはカードでの実年齢でなく、見た目のイメージ年齢が嗜好を大きく変えていますので、イメージ年齢をどう捉えるかがマーケティングの大前提です。イオンはトップバリュが多くなり、お客様から選択肢が少ないとの評価を受け、NBにまた一部戻している動きもありますが、自社PBがすべてお客様目線で開発されていれば気にすることは全くないのです。セブンイレブンのセブンプレミアムなどはその最たる事例であり、常に自店のお客様のニーズに適していたり、半歩進んでこのようなモノがあればより満足されるという考え方での商品開発が的を射ているのです。

しかし、同グループのイトーヨーカドーでは上記のセット・プルミエのような自店顧客にいないターゲットの商品開発を展開し、すでに春物はセールに掛っているものが多く見られます。過日展開しているボンボンホームでさえ、展開即セールをしていました。ボンボンホームはフランフランとの提携でノウハウはあるのですが、展開場所が従来のイトーヨーカドーの中なので、もったいない展開になっているのです。つまりお客様が別のイメージを持って頂けていないのです。このことを見ても、自店顧客の半歩先(たんす在庫にない提案)をすべきであり、1歩2歩進んだ展開をGMS顧客は全く望んでいないのです。

これはアパレルのブランド展開にも言える事で、バーバリーはステイタスがあり、光っているからでこそブルーレーベルやブラックレーベルの展開が上手く行ったのですが、現在のマッキントッシュロンドンはマッキントッシュフィロソフィーが先に展開をして広まっているので、その後グレードアップのロンドンを拡販するには時間が掛るものと見受けられます。三陽商会の商品開発力とブランド展開力がどこまでカバーできるかが課題です。

話を戻して、セブンイレブンのセブンプレミアムの商品開発チームの半分をイトーヨーカドーに入れ、マーケティングを徹底し、食からでもPB開発をすればIYプレミアムを構築できうると思われます。その後その手法で、衣料品、住居関連まで広げるとPBは可能性が広がるのですが、これでも単品カテゴリーの開発にすぎません。PB開発の最終形をテイスト別ライフスタイル型に設定すれば、無印のようにブランドファンが付く可能性を秘めています。これを目標にするならば食は単品からでも開発しやすいですが、テイスト別のライフスタイルPB開発は住居からの開発がベストですが、それにしてもマーケティング、マーチャンダイジング、プロモーション等の一気通貫型の考え方を備えたテイスト別ライフスタイルPBの事業部長の育成が最前提です。
健全なる企業経営に早急に改善・改革できる事を祈念致します。

2016.02.29
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之


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