株式会社オチマーケティングオフィス 


<10>衣料品売り場の顧客との接点

=カスタマーズ・サティスファクション=CS


小売業・マスコミが顧客満足度向上(カスタマーズ・サティスファクション=CS)を本格的に
唱えて、既に20余年になります。

しかし、完遂した企業は1つもありません。これは小売業の永遠の課題とも言えます。
逆にバブル崩壊後、企業経営が悪化し、コストカッターの名の下に、人員削減をして、
売場の販売員を減少させる方向になっている事は否めない事実となっています。

1.百貨店のCS
ある百貨店の企業改革では、売場を接客タイプ別に分類し、そのタイプ別売場に適した
人員配置をレイアウトして、それの余剰人員を削減している企業もありますが、
まだまだ頭数優先の人員削減が主流です。

また、残った販売員に顧客の心に訴えられる接客・サービスやレベルの高い
商品知識の蓄積が確保されているのでしょうか?

特にメーカーからの応援販売員については、相対的にレベルが高いのですが、
百貨店本来の社員は人事異動の問題(食料品から衣料品への異動等)もあり、
人時管理中心のマネージメン
トがメインで、特にキャリアのある人が昇格し、
接客していないのが実態です。

また、百貨店に新入社員として入社し、まともな接客教育を受けないで売場に配属され、
顧客を実験台にした実践教育が主流となっています。 

早急に接客教育に注力し、顧客にお買い物の楽しさを味わっていただける対応のできる
販売員の育成に取り組んで欲しいものです。

2.衣料専門店のCS
現在の衣料専門店については、少なくとも百貨店より専門知識において
上位に位置付けされています。理由は百貨店に比べ、
他のカテゴリーへの人事異動がない事が挙げられます。

しかし、重衣料中心の店は少なくともスーツ等の知識も充分持ち合わせていますが、
カジュアルについてはセルフに近い状況であり、商品アイテムも時代に応じて
変化していますので、スーツ等に比べ、商品知識の幅が異なり、常に勉強していないと
新しい素材、デザイン等に対応できにくいのも実情です。
セレクトショップ系は昔のVAN,JUN時代の就職活動の様に、ファッションが好きで
その企業に入社してきていますので、商品知識等の勉強にも本人自体が積極的です。

また、社員教育(接客)に力を入れ、効果を表している素晴らしい企業もあります。
しかし、業界全体においては、店の商品を良く見せる等の売場構築に、
まだまだ課題が多いのが実態です。

要は今の店頭の商品を、ゾーニング、ブランドリレーション、什器レイアウト、
商品レイアウト、VPを変更するだけで、前年売上より大幅に伸長させる事も至難の技では
ありませんので、今後はその点にも注力していく事が望ましいと考えます。

3.GMSのCS
GMSは食料品中心のセルフ販売が基本であり、衣料品と言えどレジと売場への
商品フォロー用員のみの人員レイアウトがほとんどで、余剰人員もありません。

よって、衣料品売場にはたたみ直す人もいないので、棚やワゴン内は乱れた状態で
放置されているケースが多々あります。当然、顧客はその売場に立ち寄らないのです。
いつまでも「安さ」のみが必要条件との考え方を捨て、箪笥在庫が山の様にある顧客に
提案するなら、付加価値のあるブランド開発に注力し、
必需品の買替需要のみを追うのではなく、必欲品開発により、ブランド・リピーターの蓄積と
上記の売場構築力の育成を目論むべきです。

但し、食料品や日曜雑貨品の必需品ブランドと衣料品の必欲品ブランドはストア名とも
異なるブランド名を設定する必要があります。

要はNBよりも自社ブランド(PB)を高めようとする意識を全社で認識して、
全社一丸でPBを開発・推進することが必要です。

4.通信販売のCS
通販も同様であり、カタログ、ネット画面が売場であり、これが買い易いと見える紙面・
画面構成になっているのでしょうか?
総合通販各社は自社の顧客が「ベーシックであり、必需品しか購入しない」と言う表現に
感じられます。
必需品を購入される顧客には必需品を、しかし、必需品とは言え着用したら回りの人
(家族や友人や恋人)から「素敵ね!」と言われたら間違いなくリピーターになるのです。
そのためには、商品単品展開ではなく、ブランド化によるテイスト統一が必要不可欠です。
また、モデルの見た目のイメージと着ている商品が、大きく遊離しているように感じます。
モデルは見た目20歳代後半でありながら、着用商品はGMSの65歳位対象の平場に
展開され
ているような商品が多いのです。一体ターゲットはどこなのでしょうか?
百貨店通販においては、GMS売場でコーナー展開しているようなブランドの羅列であり、
ストアロイヤリティの高い百貨店の顧客に対しての提案とは思えない状態です。
このブランドを購入したいのなら、GMS売場の方が、品番数も5〜10倍展開しており、
その場で
選んで購入できる利点があるので、わざわざ通販で購入する顧客は
「買いに行くのが面倒で、ファッションはどうでも良いので、取りあえず百貨店だから」と
言った意識の購入と思われます。
これらを包括的に把握し、目的を絞ったマーチャンダイジングによって、
通信販売独自のプライベート・ブランド開発がターゲット顧客のライフスタイルを理解した
商品の開発となり、併せて必需品とのバランスを上手く仕掛けることが
重要であると言えます。これからも、特にブランドを資産と捉え、ブランド価値創造による
消費者のライフスタイルの確立を目指すビジネスの重要性が増すものと考えます。

この実行が、皆様の企業の発展に寄与できるものと確信しています。

2007.07.01

株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之



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