株式会社オチマーケティングオフィス 


<85>晩夏・初秋商材開発

政権交代を皮切りに、経済回復への模索が漸く始められようとしています。
しかしながら、先は消費税増税といういばらの道があり、そう簡単には行きそうもない現状です。
各企業は現状からの脱却を求めてはいますが、現実手を付けられているのはほんの一握りの企業に過ぎないのです。
何故かと言えば、大半の企業の経営者達は実は現状にそう切羽詰まった危機感がなく、過去の成功体験にしがみつき、不景気という台風が過ぎ去っていくのを待っているのです。
しかし、一部の企業の経営者達は、現状を踏まえて先々を予測し、経営の舵取りを難しくても、信念を持って挑戦して行こうとされています。

8月(晩夏)と9月(初秋)に提案する商品の開発が、メンズ業界では、まったくと言って良いほどできていません。アパレル各社は研究してはいるものの及び腰だ。それは、10月下旬にもなれば、まったく見向きもされない商材だからです。
小売店も、とくに買い取り条件で仕入れをしている専門店などは在庫の増加を恐れて、アパレルの展示会の提案でさえ、見向きもしないのが実態です。

8月は残暑が厳しく、東京の平均気温は27.1度であり、7月の25.2度を上回っています。9月でも23.2度あり、6月の21.7度を上回っています。
こうした状態を考えたとき、本当に7月からの期末セールでよいのでしょうか。旧暦に従って、8月へとセールの開始を遅らせることを再度業界で検討する必要があるものと思われます。
とは言っても、各社が売り上げ不振や生産過多による期末在庫の過剰に陥る中で、1社でも早期にセールを仕掛けたら、我も我もと雪崩れ込んできてしまいます。

実際、ショートパンツや水着は7月に入ってからの実需時期が、セール時期になっている。子供の夏休みに一緒にプールやリゾート地に遊びに行くときのためです。
また、半袖シャツ等の着用時期も学生は早いのですが、大人はクールビズとはいっても一般的には6月も後半になってからなのです。サラリーマンは、まだまだオンタイムではスーツの着用を余儀なくされ、ウィークエンドの休みでも、特にアダルト、シニアは半袖シャツにジャケットを羽織って外出しているのです。

このような状態の中で始まる期末セールは、夏の実需品を必要とされている時期にマークダウンしていることになっています。商材もある程度、色・サイズがそろっており、冷夏でもなければ順調に売れていきます。その後の8月はセール商品が色・サイズ切れを起こしており、8月末には秋物が投入されます。しかし、気温が高いこともあって、新鮮な色であっても売り上げとしては、ボリュームにはなってこないのです。

この時点での商材開発とは、晩夏企画なのか初秋企画なのか、言葉はどちらでもよいが、どのような商品なのかを考えてみると、次の四つの条件が考えられます。
1. 価格=セール価格またはその少し上
2. 素材=夏
3. アイテム=半袖のカットソーと長袖の布帛シャツとアウター
4. カラー=布帛は秋色で、カットソーはコーディネートできる夏色
要は、売り場はセール展開であり、お客は価格に敏感になっていて、セールでもよいのだが、色・サイズ切れしていると見向きもされないのです。日本のアウトレットショップと同様で、色・サイズ切れに不満をぶつけるお客が多いのです。セールとは言え、お客は気に入った商品でなければ、我慢したりしないものです。
それならば、セール価格で、再度、商品を投入してはどうでしょうか。

そのためには、その時期までにセールで在庫圧縮ができていなければならず、1シーズンの販売量に対する高度なレベルの予測を必要とされ、これを見極める事が最重要課題となってきます。
この時期の販売計画と、それに対する商材の設定は、気温とそれまでの店頭売り上げの推移とが絡んでおり、商材開発とともに投入時期と価格設定も難しいのです。
セールとの展開の差別化はもちろん、残暑が厳しい中での、店頭のVP表現などにも工夫をして行きたいものです。

衣料品売場の活性化に向けて、是非とも顧客ニーズにフィットできる商品提案を望むものです。
実践はやってみないと判らない事もあるのですが、やる前に判断できる事は事前に抑えておくべきです。是非とも健全なる売場構築に早急に改革できる事を祈念致します。

2013.08.29
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之

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