株式会社オチマーケティングオフィス 


<83>カタログ通販とリアル店舗の併売率向上戦略

現在ネット通販において、リアル店舗とネットの併売率が話題になっています。セレクトショップ等はお店をショ―ルーミング化して商品の素材や風合い、色サイズ等を確認して、自宅に戻ってのPCやモバイルによる発注にシフトしてきており、その購買方法がリアル店舗のみのお客様や、ネットのみのお客様よりも年間購買金額が高いので、企業としての戦略として捉まえているのです。

リアル店舗同士の併売については、過去にそごうは八王子店があるのに、近隣に橋本そごうや柚木そごう等を作り、1+1=1.5で良い、他社に取られる位なら自社でニッチを抑えようとしていました。しかし、リアル店舗同士では投資も大きく、目論見は外れ、橋本そごうや柚木そごうのみでなく、基幹となる八王子そごうまで閉店となる有り様です。

このような状況で、百貨店はセレクトショップのように、リアル店舗とネットの併売率を高めようとした方向に向かっていると思いますが、果たして戦略として妥当なのでしょうか?
現状の百貨店の顧客の中心層は50歳代をメインに、40歳代〜60歳、またはそれ以上です。
セレクトショップ等はリアル店舗に来店されるお客様の層が30歳代を中心であるために、リアル店舗とネットの併売が可能なのであり、百貨店は大きく遊離しています。

実際女性をターゲットとしたネットサイトを構築しても43歳位より若いお客様はサイトを自分で探して入ってくれるのですが、それ以上の年齢の方はカタログを見ながらのネットサイトへの導入がメインなのです。よって、百貨店の中心顧客にはまだまだカタログの必要性はあるのです。総合通販が何故カタログを辞めないのか、経費だけ考えるなら中止している筈なのですが、カタログが送付されて初めてPCに向かうお客様の比率が高いからなのです。

百貨店としては、ネットサイトのみの受注を狙うのではなく、カタログを有効利用したお客様対応に目を向け、リアル店舗とカタログ事業のリンクを戦略として取り込み、併売率を高める方向が必要です。その為にはリアル店舗に来られるターゲットのマーケティングを実施し、その顧客に必要な商材を開発し、それを衣料品で言えば紙面も単品依存型からコーディネイトでの訴求をしたカタログにリニューアルし、1客単価の向上も目指すべきでしょう。

いままでは百貨店リアル店舗の顧客層とカタログの顧客層が異なるという事とリアル店舗がカタログ通販に売上が取られると言った言い訳により、売場には三越日本橋本店を除いてはほとんどの店に自店カタログが置かれていませんでした。しかし、百貨店のリアル店舗には既存顧客に対しても、ライフスタイルに必要な全ての商品を網羅出来ていません。例えば電化製品や家具等、CDや書籍等も効率の問題で満足できる品揃えとは言えません。

よって、百貨店のカタログ通販では家電や家具も対応し、リアル店舗の補完も実施してきているのですが、リアル店舗においては客層が異なるとか、売上が取られるといった理由により、実質カタログまでを置かない実態なのです。これは百貨店の縦割がなせる不都合であり、横串の管理も踏まえ、まずはお客様の顕在需要に向き合い、どのような対応(MD、商品、販売、物流、サービス、組織)を取ればお客様の満足度が向上するのかを見極める事が必要不可欠です。その上、お客様の潜在需要の掘り起こしまでに目を向けて頂きたいものです。

通販業界は猫も杓子もネット、ネット、ネットですが、カタログのマーケットは前述の43歳位の女性を底に、女性の平均寿命80歳代まで40年間シュリンクはするものの、長いタームのビジネスモデルなのです。つまり、カタログなしでPCやモバイルでサイトに入って、発注できるお客様のマーケティングが不足しているのです。また、短絡的にカタログは経費が掛るからと言って、ネットのみにシフトする事に問題があると考えます。

このような戦略、戦術により、まだまだ百貨店カタログ通販のマーケットは維持、拡大できるのです。みんなで渡れば怖くないではなく、みんなで渡れば怖い時代なのです。一日も早く自社顧客の実態把握による適した戦略、戦術を選んで実行していただき、お客様の満足度の高い商品やサービスを提供できるビジネスモデルへの転換を期待するものです。

2013.07.01
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之

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