株式会社オチマーケティングオフィス 


<75>百貨店通信販売

リーマンショック以後、低迷していました景気も一昨年秋より、徐々に消費者の買い控えも脇が緩み出してきました。しかし、昨年3月の東日本大震災に一度元に戻りかけましたが、昨年4月以降夏の後半まで、順調に継続していました。その後はまた、低迷です。

これは消費者の節約モードに飽きがきて、購買意欲が高まっていたのであり、一巡した昨秋秋以降からはまた、節約モードに戻りつつあります。
この1年前の震災時には通信販売も必需品の供給不足と流通事情の悪化により、取り立てて芳しくなく、昨年末より漸く復活しつつありますが、また消費税の時期が見えてきましたので、、、

1.百貨店通信販売の現状
現在の百貨店通信販売の現状は、通信販売を別会社にしていたり、社内事業部での管理をしている部分の売上ではファッションやリビング雑貨、食品とバランスよく取れているように見受けられますが、食品ギフトは店売上としての計上が多く、それを巻き込むと半分以上が食品になっています。

また、顧客層は百貨店の暖簾(ショップブランド)を信頼しているミセス、アダルトやシニア層が中心であり、今後は益々高齢化に向かい、健常者の比率も下がってきます。逆にヤングやヤングアダルト層にはまだまだ知名度が低く、次世代顧客層への取り込みはリアル店舗以上にハードルが高いのです。各社NETにも力を入れつつありますが、暖簾(ショップブランド)の認知度の低さと連動し、自社名サイトへの導入は至難の業です。

ヴィトンやコーチなどを購入したい場合に、百貨店名のサイトからは入らずにダイレクトにヴィトンやコーチ等に入っていくのです。このラグジュアリーブランドサイトを構築し、時間を掛けて熟成したのがZOZO-TOWNであり、ZOZOに行けばブランドが揃っているとのイメージを植え付けていますが、それでも1つのブランドファンはダイレクトにブランドサイトに入ります。

このような購買行動から分析して、ヤング、ヤングアダルトにはサイト名は自社、自店名でなく、そのサイト名を見れば、自分の欲しいものが揃っているとの認識を植え付ける必要があります。
これはサイトブランディングであり、一朝一夕では構築できないのです。

2.百貨店通信販売の今後
現在の百貨店通信販売は、まず既存顧客(ミセス、アダルトやシニア)を大事にすべきで、既存顧客にタンス在庫にない提案により、購買喚起を促す事が最優先です。常に前年実績のある商品のマイナーチェンジでの提案には既存顧客は飽きが来ています。
また、バイヤーも既存顧客はこの程度のファッションだと思い込みが強く、どんどん既存購買の実績が低下してきているのです。既存顧客はもっと若々しいファッションを好みだしているのです。
しかし、チャレンジしていない訳ではないのです。既存顧客を若々しく見せようとして、商品を細くしたり、行き過ぎたファッションを提案したりしているのです。

これはリアル店舗のアパレルブランドにも言える事で、細くする事と細く見える事は自ずと異なるのです。本当のヤングやヤングアダルトには細くしても対応できるのですが、ミセス、アダルトやシニアには細くすると着られないので、細く見えるカッティングが重要なのです。
これをパターンとデザインで構築すれば、ミセス、アダルトやシニアが若々しく見えるので、購買喚起に繋がるのです。そうするとコーディネとしないとバランスが取れないので、トータルでの購入に繋がり、「周りの人に若々しくなったわね!」とか言われると、タンス在庫の商品を着る事に抵抗感が出て来るのです。

3.百貨店通信販売のターゲットの絞り込み
商品の売れ行きは、そのブランドの知名度に依る部分が大きいので、まずそのブランドを企業全体で、セールスプロモーションを行う必要があるのです。
しかし、それ以前に大切なのは、ターゲットの絞り込みなのです。今は「アレもコレも」を望む時代でなく、「アレでなくコレを」を望む時代であり、ターゲットを絞れば絞るほど消費者の求めている「コレ」が見えてくるのです。

例えば、「参観日に行くためのスーツが欲しい」といったように、「コト需要を満たすためのモノを提案する売場」の構築が課題になっているのではないでしょうか。
これからは、お客をターゲットごとにくくり、フレッシャーならフレッシャー、団塊世代なら団塊世代など、細分化した顧客ターゲットに向けた、別個の回答書を準備すべきでしょう。これにより、ターゲットごとのブランディングにつながるものなのです。

「このような生活をしている、このような感性のお客さまに、この商品を、このようなシーンで着てもらいたい」との思いがVP、商品、販売員の接客で表現できれば問題ないのです。
「事は簡単」なのに、みんなで難しく考えてしまっているのです。
大きな売場を担当し、仕入れ量も額も増大し、目が「質」から「量」に奪われているのでしょう。

4.テーストゾーニングの必要性
これからは、1エイジに向けて、わずか10P程度を1つのテーストでくくり、いろんなテーストの売場を集積し、1つのゾーンを構築する必要があるのです。当然のことながら、そのゾーンにも大きなくくりのテーストは必要ですが、このような10P程度のテースト売場の組み合わせが重要です。
消費者は同じテーストの商品を大量に見せられても、購買意欲が湧かないのです。10品番あっても同じタイプの商品なら、1枚しか買わないし、自分に不向きなら1枚も買わないのです。逆に、3品番しかなくても、欲しい商品なら2枚でも買うのです。こうした複数の購買を促すために大切なのが、コーディネート提案が必要なのです。

もちろん、エイジターゲット毎に顧客分析を実施することは言うまでもありません。その上で、テースト売場を構築するのです。
このような方法なら、ある程度のテーマのグループピングができるので、商品統一化もできます。
これにより、これからの百貨店通信販売の衣料品売上は活性化するのです。

5.百貨店通信販売のオンライン
暫くは難しい状況が続くと思われます。理由は間違いなくリアル店舗のショップブランドが、ヤング、ヤングアダルトには浸透していなく、百貨店離れを起こしているからなのです。百貨店で育った子供達はすでに30〜45歳であり、彼らの欲しいウェアは百貨店ではほとんど取り扱っていないのです。レディスは多少展会されてはいるものの、メンズに至っては指名買いのブランドは多少あるものの、本来のコンサバリッチなお客様向けの売場はどこにも存在していないのです。

この事により、百貨店の暖簾(ショップブランド)は、百貨店での購買がスタンダードな親の子供も認知はしていても、購買場所には考えていないのです。このことがネットにも影響しており、グッズブランド嗜好者は前述のようにダイレクトにグッズサイトに入り、百貨店の暖簾(サイト)には入ってこないのがスタンダードです。本来ならまずリアル店舗にて、次世代顧客獲得を目指すべきでしょう。これができてからではないと本来の百貨店の暖簾に信頼を置いていただいているお客様を取り戻す事はできません。

また、既存顧客はPCのハードルが高く、なかなかPCのデジタルを見ての発注に苦慮しており、40歳前半の女性がやっとカタログを見ながらのPC発注になっているのが実態であり、ウィンドウズ95がオフィスに普及した95年に職場で働いていた場合であり、それ以前に結婚して家庭に入られているとPCを見てのPC発注にはまだ時間が掛かっているのです。
高齢者が、ここ5年間や10年間でPCに馴じんできたとのデータもありますが、いままでオフィスで使いこなしてこられたビジネスマンが定年を迎え、リタイヤしても自宅でPCを触っているのであり、いままで触っていない方がPC教室で勉強している等はほんの一握りに過ぎないのです。

本気で百貨店通信販売が事業としてオンライン強化を狙うなら、百貨店の顧客の子供達を第1ターゲットとし、ヤング・ヤングアダルトにターゲットを絞り、サイトブランディング化を徹底して推進する覚悟が必要です。これが確保できた段階で、第2ターゲットの同世代の百貨店の顧客でない子供達をターゲットにすべきですが、その場合の商材は第1の商品構成(特に価格ライン)ではありませんので、作りこみの幅が広がりやすく、効率も悪化しやすいので、当面第1ターゲットに向けての深堀(ライフスタイル全般向けの提案=ロイヤルリピータ化=顧客単価向上)が優先されるべきでしょう。

6.百貨店通信販売の経営判断
まずは、百貨店の通信販売における戦略構築が第一義に挙げられます。基本は「誰に、」「何を、」「いつ、」「どこで、」「どのくらい、」「いくらで」買っていただこうとするのかを設定する必要があります。その次に「どのような方法で」を設定します。お客様はどのような方法で購買されるのか、オンラインは手法の一つであり、リアルとバーチャルの融合も視野に入ってきます。店頭で商品の素材や着心地や重さ等を確認し、QRコードで品番を確認して、サイトで商品の特長等を確認して、どこが安いのかを確認してからの購買になります。そうであれば、価格の高低に左右されない購買商品を開発しなければなりません。そうなるとPBまで構築する必要がでてきます。

また、お客様はどのように商品を探しているのかも重要です。オンラインサイトは男性と女性でも購買方法は異なります。男性は時間もなく、購買商品(得意に家電等)を決めてから、店頭で商品を確認し、その後ネットで一番安いショップを探し、ネットでの購買が主流ですが、レディスは目的を決めていなく、自分の心地良いサイトの中を散策して、気に入ったものを見つけようとしており、リアルな店舗と同様の動きをしています。よって、心地良さを共有しての帯留時間の長いサイト作りが基本です。
まだまだ、ダブルインカム比率の低い日本においては、女性の取り込みがメインになっているのは明白です。よって、男性服も女性の代理購買を意識したサイト(カタログも同様)構築が望まれます。

どのような戦略でオンラインビジネスを軌道に乗せるか、どのような手法で顧客開拓をすべきなのかの戦術を設定し、構築することがアナログでの企業の戦略になるべきでしょう。このようなサイトを作ってくれと外部のインフラ整備会社に指示できるのは経営者の仕事でしょう。インフラは日進月歩の進化を遂げています。社内で構築する事はその真価を享受しにくくなるのです。
コピー機器の能力は進歩しているのに、リースしないでコピー機器を買取するようなものです。

実践はやってみないと判らない事もあるのですが、やる前に判断できる事は事前に抑えておくべきです。是非とも健全なる事業改革に早急に緒に就かれる事を祈念致します。

2012.11.27
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之

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