株式会社オチマーケティングオフィス 


<71>通信販売の課題

リーマンショック以後、低迷していました景気も一昨年秋より、徐々に消費者の買い控えも脇が緩み出してきました。しかし、昨年3月の東日本大震災に一度元に戻りかけましたが、昨年4月以降夏の後半まで、順調に継続していました。その後はまた、低迷です。

これは消費者の節約モードに飽きがきて、購買意欲が高まっていたのであり、一巡した昨秋秋以降からはまた、節約モードに戻りつつあります。この1年前の震災時には通信販売も必需品の供給不足と流通事情の悪化により、取り立てて芳しくなく、昨年末より漸く復活しつつあります。

1.カタログ通販
カタログ通販は全体的に縮小傾向にあると言われていますが、果たして本当なのでしょうか?
千種会やニッセンなどは、ネット通販に比べての伸び率は劣っていますが、それなりの伸長率を残しています。業界全体はネット通販に目が向いていますが、カタログ通販にもまだまだ伸び代は十分なくらいあるのです。高齢化社会においては、健常者の比率の低下もプラスには働いていますが、本来のモノの購入体系の変化が顕著に表現しています。

要は、お客様は商品の詳細が分かって、どこでも同じ物であるなら、わざわざお店に行っての購入ではなく、価格を比較して、楽に購入できる方法を選んでいるのです。その手法の一つに通販があり、高齢者中心にカタログ通販とコールセンターが有効に作用しているのです。まして高齢者のみではなく、中年層にまでカタログによるPC発注の利用頻度は広がっているのです。若年層もすべてがネットではなく、ゆっくりカタログを見るアイテムもあるのです。

カタログ展開する商品の顧客ターゲット分析を徹底して行い、そのターゲットの商品に対する購買方法を把握し、その方法に乗せる告知方法をセレクトすればそれがネットを利用する人ではなく、カタログでもそれが妥当なら選択すべきなのです。
通販は商品と顧客をつなぐ手法の一つであり、通販に乗せれば商品が売れるとは限らないのです。目的と手段を取り違えている通販企業が今後淘汰されてくるのは自明の理でしょう。

2.ネット通販
ネット通販は全体的に拡大傾向にあると言われていますが、果たして本当に適正な道程での拡大なのでしょうか?一部は足踏み状態で停滞している場合も多いのです。
欧米では小売業自社の売上の30%までは拡大できるとしての戦略を立てて、その方向で進み出していますが、日本ではまだまだ平均5%にも達していなく、ユナイテッドアローズで10%強、アーバンリサーチでも10%前後であり、百貨店のNET通販(PC画面からのPC発注)等は2%未満です。

千種会やニッセンのようにカタログがメインな企業でも、ネット売上は伸長率が高いのですが、本来のターゲットに伝わっているのでしょうか?ファッションを中心に展開している企業でも、カタログやデジタルカタログ、PC画面等は商品の羅列が主であり、ライフスタイル提案やコーディネイト販売などは意識しているようには見受けられません。
百貨店でもギフトによる6〜7月11〜12月のネット売上は(安定しているのですが、それ以外の月の売上をファッションで作ろうとしていますが、全くできていないのが現状です。

では、何故出来ないのでしょうか?
一つにはギフトのようにブランドや商品が明確で、店頭にいかなくても判る商品が売れており、ギフトですから極端に言えばこれを選んだ私のセンスを評価してといった贈り手の自己満足によるものが商品セレクトのメインなのです。ファッションのように自家需要メインで、触らないと判らない素材感覚やサイズ面、カタログやPCによる色の再現性に疑問が生じているのです。

二つ目はこのデメリットを凌駕するファッション提案のライフスタイル、コーディネイト提案が出来ていないのです。単品表現が多く、この単品を購入しても自分でもっている何とコーディネイトすれば良いのかが判り難いので、単品では苦戦しているのです。逆にコーディネイト提案にすればこのブラウスを購入すれば、コーディネイト提案させているこのようなスラックスは持っているから大丈夫とか、このままトータルで購入すれば大丈夫とかで、1人に2枚〜3枚との購入に繋がり易いのです。

特に女性はカタログやネットの画面で買物を楽しむ傾向が強く、ギフト等とは異なり自家需要においては、ゆっくりと探す事を楽しんでいるのです。その為の画面構成、商品提案構成等はどうあるべきかを検討すべきなのです。

3.通販業界の今後の対応戦略
売上が低迷しているのは、自社のカタログやPC画面を見られているお客様と提案している紙面構成、画面構成、商品提案等がずれている以外に原因はないのです。
よって、自店顧客マーケティングが最優先されるのですが、購買履歴のみでは不十分であり、顧客のイメージ年齢、ファッションテイスト等の分析が必要です。

通販業界は百貨店やGMSのデータ分析よりも高い精度の分析が行われていますが、これは頼るところが購買履歴しかないところに問題があるのです。百貨店やGMS等はお客様の実際の顔が見られ、実質の戸籍年齢のみではなく、イメージ年齢を把握できるので、そのイメージ年齢に合わせた商品提案が可能(実質は出来ていませんが、、)になるのですが、通販ではそれが出来にくいので、戸籍年齢のみでのデータ分析から商品構成、提案を決めているので、お客様のニーズとは遊離している事が多いのです。データを分析する角度や精度、またそこから何をどう読み取るかが課題なのです。

これからは、顧客のイメージターゲットに合わせたライフスタイル提案と商品のコーディネイト提案が重要で、これにより既存顧客に対し、1枚ではなく2枚、3枚との購入に繋がる戦略を取るべきなのです。もう一つはサイトのブランディング化であり、既存顧客に2枚目、3枚目との1客購買単価UPを狙いながら、併行してサイトブランディングを構築し、このサイトならば私のテイストに合う提案があるので、ここですべて賄えるとイメージ付けしていただく事なのです。

ブランドを作る時には、コンセプトを設定し、このようなエイジのこのような環境で生活している人に来て貰いたいとの仮説ベースを明確にしてから、そのライフスタイルに沿った商品開発に入るのですが、そのトレンドの位置付けを確定しなければ企画は成り立ちません。
このようなコンセプトで作られた商品は狙った顧客に対してぴったりと構成出来た場合、その商品を着る人はその狙い通りの顧客、または少しエイジの高いトレンドセッターであり、逆に少しエイジの低いコンサバティブな顧客なのです。エイジだけ見れば幅広くノンエイジに見えますが、現在のマーケットでは、エイジの高低によりサイズが2種必要になっているのです。

4.経営層の判断
あとは経営者が自分でできる事と出来ない事を早期に見極め、出来ない事は外部の力を借りてでも早期に仕上げる事が重要です。自分達の勉強している間に世の中はもっと早く進んでいるのです。相手はお客様なのです。自社サイトに来店されるお客様に評価されなければ自社の今後はありません。外部に頼りながら自分も研鑚を積みながら、いつか自社で運営できるレベルまで自分達の能力を引き上げていく事が望まれています。

これからの通販戦略はヴィジョンと現実の把握、そのギャップを縮める方策、迅速な実行、検証の繰り返しに尽きます。判っていてもできていないのは、判っていないと言えるのです。
経営層自らが自分を律し、率先垂範できるような体制作りが早急に求められています。
社員は上を見て仕事をする事は当然であり、この上を見る習慣はなかなか外せないのです。よって、上を向くのは当然として社員を動かす仕組みを構築する事に目を向けるべきで、その上に、お客様目線を持つ事による行動規範を明確にし、それが評価に反映する評価基準を設定し、その基準をガラス張りにしていく事が必要不可欠であり、経営層自らリードしていく燃える集団作りが今後、望まれています。

是非とも健全なる黒字体制に早急に改革できる事を祈念致します。

2012.07.30
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之

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