株式会社オチマーケティングオフィス 


<70>食品売場の課題

リーマンショック以後、低迷していました景気も一昨年秋より、徐々に消費者の買い控えも脇が緩み出してきました。しかし、昨年3月の東日本大震災に一度元に戻りかけましたが、昨年4月以降夏の後半まで、順調に継続していました。その後はまた、低迷です。

これは消費者の節約モードに飽きがきて、購買意欲が高まっていたのであり、一巡した昨秋秋以降からはまた、節約モードに戻りつつあります。
この1年前の震災時には食品も必需品の供給不足と流通事情の悪化により、一瞬供給不足の状態でしたが、各企業は一丸となり食品を最優先に復活させました。

ここ1年で落ち着きを取り戻した食品売場も、お客様の満足のいく売場構築や、商品構成が取れているとは思えません。まだまだ改善、改革の余地を残していると言っても過言ではありません。

1.導線と商品レイアウト
一部の食品売場は、主導線やサブ導線が直線的に確保されていないために、迷路の様な売場になっています。これでは、お客様にとって何が何処にあるのか全く不明な状態なのです。これでは「お客様に探して下さい」と言っているようなものなのです。
食品という目的買いが中心のカテゴリーにおいて、とても売上を向上しようとは見えないのです。

買い物を楽しむ売場との言い訳も聞こえてきそうですが、買い物を楽しむお客様は、売場の商品レイアウトがある程度、何処に何があるのかが判っていて、ある程度何を買うつもりなのかが明確であって、そのカテゴリーの中で少し良いものや、これは安くても良いものと区別、認識しながら選択をしている楽しみ方が多いのです。

商品レイアウトもまずはアイテム集積を作り、その中に価格の高低、品質の幅、旬な商品、話題のある商品等を並べ、それ以外にすき焼きをテーマに括った売場で、その1部の商品も並べてあり、1物2か所という展開も妥当ですが、常にアイテム売場には全商品が並んでいる事が重要です。しかし、テーマのところにはあるのに、アイテム売場から欠落している商品展開をしている売場が多い事も事実なのです。

2.鮮度と音楽
過去にカルフールが日本に上陸し、幕張等に出店していました。その時の食品売場の特に鮮魚の売場は全く照明を落とし、その商品のみにスポットライトを当てて、良く見せるといった過去のパリの百貨店のギャラリーラファイエットの衣料品売場のような展開でした。
一時の伊勢丹新宿店やマウジーやXEBIOの少し前の新店舗等がその表現を採用していましたが、現在の日本のマーケットにおいては、その手法はマッチしていないのです。現在において売場は明るければ明るい程良く、VPはそれ以上の照度が必要な時代なのです。

音楽(BACK-GROUND-MUSIC)もお客に合わせて、少しUP-TEMPOの方が良いのです。落ち着いたCLASSICやJAZZなどは落ち着きを必要とする喫茶店等は重要なのですが、物販業であれば、お客様の中心顧客を想定した音楽より少しUP-TEMPOの音楽が妥当です。勿論VOCALでは聞いてしまいますので、インストロメンタル(演奏のみ)が適しています。
音楽は必需アイテムです。音楽を一度止めてみると一目瞭然ですが、売場にTEMPOがなくなり、売上にも影響してくるのです。逆に適した音楽であれば購買TEMPOも向上し、売上の活性化にも繋がって行くのです。

3.価値と価格
食品の購買動機は確かに価格のウェイトが高いのですが、見た目、味、品質、大きさ、価格の5つの購買ポイントから見れば、最優先は見た目なのです。美味しく見えなければいくら安くても購入して頂けません。まずは、見た目が良くなっているかを見直すべきでしょう。この刺身がこのトレイで良く見えるのか、高く見えるのかが重要です。良く見えてリーズナブルだから購買して頂けるのです。その次が大きさであり、この大きさなら家族4人で丁度とか夫婦二人ならOKとの判断が下され、それから価格なのです。この見た目でこの価格なら安いと感じていただければ良いのです。味は持ち帰って食べてみなければ判りませんし、売場では試食でもしない限り伝わりません。品質の賞味期限等はクリアしていて当たり前の事なのです。

この課題をクリアする事を前提に、味を高めていくのです。味が悪ければお客様はリピーターになって頂けないのです。どの小売業においてもリピーターは最優先顧客であり、特に食品においてはリピーターのシェアを高めないと店の売上が安定拡大できないのです。
よって、味は万人受けするメインアイテムと特別な顧客向けの拘りのアイテムが重要で、拘りは多少の細分化が必要です。
この様に、商品の売上のポイントは価値と価格のバランスが取れて入る事なのです。

4.現場対応力
現在の食品売場では、現場対応力が弱体化しています。店頭売上が時間単位に把握できる今、何が売れて、何が売れていないかは瞬時に把握できるインフラ整備は行われているのも関わらず、データの分析による即時の対応策に不備があるのです。
それはデータ分析に課題があり、お客様は何を買って、何を買わないのかを見抜くデータ分析の角度が不足しているのです。

百貨店もGMSも総じて言える事なのですが、データから読み取ろうとしていないのです。それはあくまでもお客様の立場での目線でのデータですが、それをプロの目で解析し、どのように時間単位での変化に対応し、閉店までに帳尻を合わせられるかの現場対応力が不足しているのです。この対応策がある程度集約でき、事象毎に3つくらいの引き出しができればそれを全店に流し、現場店長や、カテゴリーマネージャー、アイテム担当者まで徹底し、自ら売場変更、商品価格コントロール等ができる体制にすべきでしょう。

その前に、朝にお年寄り中心に来店し、夕方にOLが来店される売場なら、例えば惣菜売場は朝から16:00位までは塩分控えめの惣菜を、16:00以降は油の多い惣菜を並べる等のプロント方式(夕方までは喫茶店、17:00以降はWINEを出すお店に早変わり)を取るべきでしょう。
このような時間帯の変化も可能になるには、現場にノウハウの伝授と権限移譲を早急に実行する事が必要です。

5.まとめ
現在の食品売上不振は、顧客ニーズの把握と現在の売場や商品構成にギャップがあるのです。そのギャップを縮める方策、迅速な実行、検証の繰り返しに尽きます。判っていてもできていないのは、判っていないと言えるのです。
経営層自らが自分を律し、率先垂範できるような体制作りが早急に求められています。
社員は上を見て仕事をする事は当然であり、この上を見る習慣はなかなか外せないのです。
よって、上を向くのは当然として社員を動かす仕組みを構築する事に目を向けるべきで、その上に、お客様目線を持つ事による行動規範を明確にし、それが評価に反映する評価基準を設定し、その基準をガラス張りにしていく事が必要不可欠であり、経営層自らリードしていく燃える集団作りが今後、望まれています。当然、店頭売上の向上と安定黒字化の方法は異なりますが、、

取りあえず、健全なる店頭売上に早急に改革できる事を祈念致します。

2012.06.28
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之

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