株式会社オチマーケティングオフィス 


<68>顧客カードデータの功罪

リーマンショック以後、低迷していました景気も一昨年秋より、徐々に消費者の買い控えも脇が緩み出してきました。しかし、昨年3月の東日本大震災に一度元に戻りかけましたが、昨年4月以降夏の後半まで、順調に継続していました。その後はまた、低迷です。
これは消費者の節約モードに飽きがきて、購買意欲が高まっていたのであり、一巡したこの秋以降からはまた、節約モードに戻りつつあります。

この1年間、小売業もアパレルも取り立てて店頭に向けての大掛かりな消費喚起の仕掛けをしていたのではないので、再び不況に陥るのは自明の理なのです。
従来から小売業や店頭で小売を直接運営しているアパレルはカードデータを集めているのですが、どのような分析をして、MD再構築に向けての手を打てているのでしょうか?

1.データの分析
百貨店もGMSもクレジットの付いたカードやポイントのみ貯められるカードを発行し、顧客の特性(性別、年齢、居住地等)と購買履歴を追う動きをしています。
しかし、購買履歴データについては、性別、エイジ別に購入された商品の特長を把握して、バイヤーは次の提案商品の仕入れに利用しているのです。
また、小売業やアパレルはデータを持っている事だけで安心しており、分析まで及んでいない場合も多いのです。

しかし、そのデータを分析する前に、そのデータ自体の特性が本来把握すべき内容のものなのでしょうか?甚だ疑問に感じるのです。
特に衣料業界においては、戸籍年齢がどこまで重要なのでしょうか?衣料品においては見た目と実際の戸籍年齢との遊離が結果として、自社の提案商品にズレを生じさせており、ここを正さなければ顧客への的確な提案商品が見出し難いものと思われます。

2.ファッションビジネスの必要顧客データ
セブンイレブンではカードデータではなく、顧客の見た目での年齢をレジ釦を打っていると言われています。現在の社長が就任された時には50歳代以上の釦を50歳代、60歳代、70歳代に区分けしなければと言われていましたが、今年ローソンの社長が同様の事を言われており、安定成長のコンビニでは見た目のイメージ年齢と購買履歴をリンクさせており、的確な商品構成が可能になっているのです。

百貨店もGMSも衣料品においては、特にファッションアイテム(必欲品=なくても困らないが欲しいと思われるもの)においては、特にこのイメージ年齢の把握が重要になっているのです。このイメージ年齢 の把握なくして、顧客への的確な衣料品の提案と売上の向上が見込めないのです。

3.イメージ年齢と戸籍年齢のズレ
自店で展開しているあるブランドの商品の購買履歴を追うと、商品企画のイメージターゲットエイジより、戸籍年齢が高い場合が多いのです。これは如何に実質戸籍年齢の人が若々しい商品を望んでいるという事なのですが、サイズ対応に難が多く、対応し切れていないのです。企業が提案しているヤングマインドな感覚の服は細身に作られているケースが多く、エイジの高い顧客には対応できていないのが実情です。
この事は通信販売のカタログにも言えており、50歳代向けに提案した商品も、実質は60歳代以上がメインに売れている事でも同様な把握が出来ます。

これからの小売業の経営はヴィジョンと現実の把握、そのギャップを縮める方策、迅速な実行、検証の繰り返しに尽きます。判っていてもできていないのは、判っていないと言えるのです。
経営層自らが自分を律し、率先垂範できるような体制作りが早急に求められています。
社員は上を見て仕事をする事は当然であり、この上を見る習慣はなかなか外せないのです。よって、上を向くのは当然として社員を動かす仕組みを構築する事に目を向けるべきで、その上に、お客様目線を持つ事による行動規範を明確にし、それが評価に反映する評価基準を設定し、その基準をガラス張りにしていく事が必要不可欠であり、経営層自らリードしていく燃える集団作りが今後、望まれています。

是非とも健全なる衣料品売上に、早急に改革できる事を祈念致します。

2012.04.30
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之

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