株式会社オチマーケティングオフィス 


<67>百貨店・次世代顧客獲得への挑戦

(ヤングアダルトのコンサバ・リッチ層を取り逃がすな!)


リーマンショック以後、低迷していました景気も一昨年秋より、徐々に消費者の買い控えも脇が緩み出してきました。しかし、昨年3月の東日本大震災に一度元に戻りかけましたが、昨年4月以降夏の後半まで、順調に継続していました。その後はまた、低迷です。
これは消費者の節約モードに飽きがきて、購買意欲が高まっていたのであり、一巡したこの秋以降からはまた、節約モードに戻りつつあります。
この1年間、小売業もアパレルも取り立てて店頭に向けての大掛かりな消費喚起の仕掛けをしていたのではないので、再び不況に陥るのは自明の理なのです。

百貨店が業態としての将来の方向性を見失って10年以上経過してきています。
そこで今回、百貨店が今後、自助努力にて安定基調に戻るためにクリアすべき次世代の顧客獲得について掘り下げてみます。

1.現状の顧客
百貨店の現在の顧客は各店に多少の差があるのですが、大半が50歳代を中心として、40歳代から60歳代に渡っています。このまま後10年も経過すれば、60歳代が中心となり、将来は高齢者の溜り場になりかねないのです。
高齢者が悪いといっているのではなく、高齢者になれば健常者のみでなく、売場に来店しにくい状況の方も増加してきます。売場に来られない高齢者の方達はネットショッピングでは難しいので、カタログを見ての電話注文が主流です。
売場に来られないなら持込販売の手法も可能であり、「待ちの商売から攻めの商売へ」の転換も、ポーラ化粧品の豪華デラックスバスによるラグジュアリーファッション商品の訪問販売のように効果が出るものもありますが、先細りは否めません。この現状を憂慮しても何も解決しないのです。

この世代以外に百貨店の顧客になり得るお客様は本当にいないのでしょうか?
レディスは既に40歳代から30歳代までを取込みつつあり、大丸松坂屋百貨店の「うふふガールズ」に至っては20歳代までも挑戦しています。勿論すべてがうまく展開できている訳ではありませんので、トライ&エラーを繰り返し、精度の向上を求めているのです。
メンズに至っては、伊勢丹メンズ館と阪急メンズ館を除いては、次世代に向けた挑戦はほとんどなされていないに等しいのです。

2.次世代顧客とは
百貨店の次世代顧客とは、現在の顧客の中心層の25歳下を中心とした層なのです。要は自店に来店されていたお客様の息子様、娘様がターゲットです。彼らは子供の頃、ご両親に連れられて自店に来店されていたのですが、大人に成長しても彼らに提案できる商品が見事に展開されていないのが現状です。自店の30歳代のバイヤーも自店で購買できる商品が少ないのです。
「卵が先か?鶏が先か?」の議論になりますが、過去のTD6のようなDCブランドも当時は20歳代に向けてマルイのみでなく百貨店も展開し、それなりのパワーのある売上を残していました。
しかし、既にそのブランドも顧客と共にエイジが上昇し、消費者の中心は40歳代になっています。

よって、ご両親、その子供(25歳下)、そして孫(30歳下)を意識したファミリー(一族)を狙った顧客ターゲットを縫っていく事が必要不可欠と考えます。
ご両親が百貨店顧客でない場合は、息子様、娘様が百貨店に足が向きにくいものですので、百貨店顧客の息子様、娘様にターゲットを絞っての戦略を構築すべきでしょう。

また、百貨店客の息子様、娘様ですから、商品は上質で、ファッション的にはコンサバティブなものを好みがちです。彼らはグッズブランド嗜好よりも、ショップブランド嗜好が強く、たまたま百貨店で勧められたブランドを気に入ってブランド名を覚え、リピータになっていくのです。
このような上質な顧客が30歳代(ヤングアダルト)でも買物難民として存在しているのです。
現状の百貨店ではアダルト、ミセス、シニア等しかなく、各メンズ館においては、面積が狭いので、トレンド商品が中心の構成であり、上質でコンサバティブな商品が不足しています。

3.次世代顧客獲得への挑戦
レディスは各百貨店も挑戦してきていますが、メンズはまだまだ手付かずの様相を呈しています。
百貨店のメンズのバイヤーは、既存百貨店アパレルの工(匠)は素晴らしいと評価しているのですが、ヤングアダルトの商品は企画できないと考えているのか、ヤングアダルト向け商品の仕入れ先については、他業態をメインとする新規アパレルを選んでいる事も多く見受けられます。しかし、本当に既存アパレルで質の高いヤングアダルトの商品を提案できないのでしょうか?

ここも「卵が先か?鶏が先か?」と判断され、売場はアダルト、シニア層向けであったために、いくら提案しても、アダルト、シニア売場の中に埋没しており、ヤングアダルト層がそのような売場に足を向ける筈もないのです。
この状況のままで、中心顧客エイジが高くなってくると、それはそれとして対応が必要ですが、次世代へも目を向けないと自社の今後の新入社員達が存続できなくなってくるのは明白です。
今後は是非、既存アパレルの工を運用しながら、ヤングアダルト層に向けた質の高い商品企画を外部の力を借りてでもディレクションして、自店の次世代顧客獲得に向けての売場構築へのチャレンジを望むものです。

2012.03.26
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之

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