株式会社オチマーケティングオフィス 


<62>サービスを科学する

小売業の売上が苦戦しています。「みんなで悪ければ怖くない?」 決してそうではありません。
小売業やマスコミは「顧客満足度向上」との謳い文句を10数年前から唱えていますが、現実は逆行していると言っても過言ではないでしょう。
営業日数や営業時間は拡大に一途を辿り、売場に配される人員は削減傾向にあり、1人の販売員の守備範囲はますます広がってきているのです。それでいままで以上の接客サービスを求められているのが実態ですが、この体制化で接客サービスの向上は見るべくもない状態なのです。

この様な状況下、「顧客満足の向上」は望むべくもなく、「顧客不満足の解消」に目を向けるべきでしょう。その為には、顧客はどのような対応に不満を感じているのかを認識する必要があります。
そこで、小売業のサービスについて、科学的な分析手法で、今後の方向性を提言してみます。

1.サービスの定義
顧客が求める無形の価値を開発して、顧客に対し長期的友好関係を構築し継続させる事
サービス(無形の価値)の効率的な運用や個別に要求される新たなサービス創造のために、企業が保有する膨大な顧客データから、「サービスのカスタマイズ」の実現を目指します。

2.CRM(Customer-Relationship-Management)の重要性
欧米や日本等の成熟市場では、新規顧客獲得に掛かるコストが既存顧客維持コストの500%以上必要であり、20%の優良顧客からの利益が全体の80%を占めます。(パレードの法則)
顧客の関係性を長期的に良好に維持して、顧客の価値に基づいたマーケティング投資を顧客毎に行うという考え方です。
A)顧客のニーズを把握して、期待される価値に応じた経費を掛ける
B)マーケティングによるカスタマイズ
顧客毎に
1) どのようなサービスが求められるか(Product)
2) どのような価格が認識されるか(Price)
3) どのようにアプローチするべきか(Promotion)
4) どのように届けるか(Place)
を的確に把握した上で、
どのように長期的良好関係を維持構築するか(CRM)―――マーケティングが基本

3.顧客満足度の測定(Customer-Satisfaction-Index=指数)
サービスのセグメント
1. 来店前の期待(既存認識+告知)
A) 既存認識=いつもこのくらいの売場にはなっているだろうとの認識
B) 告知による新提案=今回このような提案をしていて、潜在需要を喚起する告知表現
2. 来店時の印象
A) 既存売場の磨き上げ=いつもある売場や商品、販売員なのに、何か新しく見える技術
B) 新売場、商品の提案=旬な時期のいままでの商品と同じであっても、見せ方等で新しく見える
3. 売場の環境(什器+商品+VP=VMD)
A) 目的買いの商品の売場が判り易い
B) 新提案から潜在需要の顕在化(掘り起こし)

4. 商品の特長
A) 使用時に必要な説明が明確
B) 潜在ニーズにない新しい商品や使用方法の提案(こんなものがあって良かった)

5. 接客
A) お客様に判り難い詳細の説明
B) 新提案により、新商品の使用時のイメージを創造

6. クローズ
A) 目的の商品を購入して、来店時の期待以上の満足を持って帰宅される
B) 目的以外の商品を購入して、目的の商品への期待以上の満足を持って帰宅される

*1来店前の期待に戻り、顧客に繰り返しの意識付けを行い、リピータをロイヤルリピータに!

上記1〜6を各売場やカテゴリーに振り分け、各売場・カテゴリーにおける採点比率を按分し、その点数目標に対し、業務内容を具体的に落とし、毎月どこまで達成しているのかを売上、顧客数、顧客単価の前年比を見ながら達成度を数値化することが必要です。

心のこもった接客・サービスは、まだまだ隠れた所にも存在しているようで、これを経営者から従業員・パート・アルバイトまでを含む全員に拡大できるシステムをトップは考え、構築し、実践させる工夫を摸索するべきです。
つまり、店の格や質の見た目による期待感と実態との差によって、消費者は良かった・悪かった等の店の評価をするものです。

常に店を売り手の都合による設定にしておくのではなく、買い手(消費者)の買い易さ(価格のみではなく)を1ランク・2ランク上の接客で対応することで充分消費者の満足度は高まり、リピータの確保が出来ていくのです。

そのためにも、後方部門のIT化推進による業務改善・改革は当然の事であり、如何に投資効果に見合った、またはそれ以上価値あるIT投資をローコストで導入し、業務改善を求め、後方部門の人員を削減し、その余剰人員を店頭に配することで、お客様との接点が増加し、お客様満足度が向上できる環境が生まれてくるのです。

「顧客視点での課題(提案と売場のバランス)発見、プロの目線での改革」が必要です。
是非とも健全なる顧客満足向上になるように、小売業の顧客対応力を早急に再構築できる事を祈念致します。

2011.10.31
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之

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