株式会社オチマーケティングオフィス 


<60>百貨店のOUTLET出店

リーマンショック以降低迷を続けていました百貨店売上が少しずつ底打ちし、浮上しつつあります。しかし、百貨店もオリジナリティを具現化するために、買取商品を増加しつつあります。
しかし、買取品は消化状況により、最終残品比率が高くなり、処分に困っている事例が発生してきています。そこで百貨店の倉庫SALEやOUTLETに活路を求めて、最終在庫処分を模索しつつあります。

リーマンショックという台風が過ぎ去り震災復興の後は、従来のマーケティング&マーチャンダイジング手法では生き残りません。オールORナッシングと言っているのではなく、理想を研究し設定しそれを掲げて、現状分析しそれを把握した上で、既存の良い部分はより精度を向上させ、悪い部分は思い切って改善するといった事が必要な時期なのです。「計画は慎重に緻密に!実行は大胆に迅速に!」が必須です。

百貨店のOUTLETは過去に近鉄百貨店が札幌ファクトリーに出店し、はやばやと引き上げてからは中々出店していません。数年前に三越が神戸三田プレミアムアウトレットに出店し、昨年春に撤退しています。今回は伊勢丹が御殿場に期間限定で出店し、売場作りを含め順調とは思えません。

まず、日本のOUTLETは欧米のOUTLETと異なり、お客様がデッドストックとは言え、色サイズ欠品には不満を持っています。よって、OUTLET用商材を生産し、残品を回りに鏤めて、そのOUTLET用商材で利益を上げているのが実情で、BROOKSBROTHERSからUNITED-ARROWSまで当たり前のように展開しています。ノーリーズ・アウトレット等は割引除外品と称して当期物をプロパー価格展開しているSHOPもあります。よって、日本のOUTLETに対する認識を残品処理のみに置く事は実情に合っていないのです。

また、お客様は今まで百貨店で購入していたBRAND品をリタイヤしたり、買えなくなった方達が生活の質を落としたくないために、OUTLET利用している方も多く、ヤング層では単純にFBやSCで買えない方がOUTLETにて購入している方達も多いのですから、全くお客様を取られているとは言えない状況と思います。

SCに比べ、ベビーカーが少なく、2極化したエイジ顧客を持っているのです。
売場作りにしても同様で、ラルフローレンやビームス等はプロパー店と同様かそれ以上の店作りであり、器が良く見えるので、余計にOUTLET商品が価値あるように見えるのです。

そして、一番の問題はお客様はショップブランド(店の暖簾)とグッズブランドを確実に認識しているから、OUTLETの百貨店名のOUTLETでは魅力を感じていないのです。
過去はショップブランドとグッズブランドを同一視して、高島屋や三越のネームの付いたドレスシャツやセーター等が百貨店の店頭に並んでいたものでしたが、現在は全くありません。
SC等のSHOPは全部がユニクロであったり、GAPやZARAであったりしているので、1テイストブランドであるために認識が異なるのです。

百貨店は様々なテイストを包含して、幅広いお客様のニーズに提案しているために、1テイストに絞り込めないから、結果としてショップブランドとグッズブランドを区分けして展開して行かないといけない業態なのです。
もし、百貨店がショップブランドとグッズブランドを同一認識して、ショップブランドで商品を展開して行こうとするのなら、納入しているNBまですべてショップブランドに変更し、デザイン、品質、色サイズ、価格、什器等をすべてNBと同じにしたショップブランドで展開してみれば一目瞭然に売上が20〜30%に落ちると思われます。
勿論アパレルのブランディングが確実な商品ほどその落ち込み比率は高いのです。

このような状況下、アパレルはブランド名でのOUTLETは全体的に順調ですが、企業名でのOUTLETはそう上手くは進行していません。つまりグッズブランドをブランディングしてからのOUTLET出店が望ましいのです。要はグッズブランディングが課題なのです。
これはWEBにも言える事で、サイトブランディングをどのように構築すべきかが必須です。

また、ルミネのTOPが都心近隣にOUTLETを作る事は問題があるとの批判的なコメントも聞こえてきますが、お客様が必要として利便性があるなら、結果として継続するものです。
自分達が過去の業態に対して同様の事をやってきているのです。
現在のお客様は価格にも不満を持ち始めている事も促進要因になっている事も否めません。
他店の動向もマーケティングは必要ですが、要は如何に自店を魅力的に維持させる事が重要なのです。

欧米の上記ブランドなどは買取で商品を仕入れる限りは、プロパー店で最終残を10%と設定し、プロパー店を10店出店すれば、OUTLETを1店出店し、プロパー店の残10店分で商品供給している店もあり、自社のビジネスフレームの中での背伸びのない業態戦略を運営しています。
百貨店のOUTLETは、現在の日本のOUTLETの実情をもっと研究し、残品処理のみではなく、新しいビジネスフレームとして認識しての参入が求められています。

要は、自店の顧客マーケティングに不備があるのです。徹底した顧客マーケティングにより、自店既存顧客に自店が何を提案してくべきなのかを模索する必要があるのです。
来店されているお客様の顔とライフスタイルが見えれば、次はお客様が「何を提案して欲しいのか?」の把握よりも、お客様に「何を提案すべきなのか?」が重要です。

お客様は何を提案して欲しいのかが明確に認識出来ていないのです。それに仮説を立てて、潜在需要を顕在化する的確な提案商品のラインナップと、それを必要とする顧客ターゲットへの的確なアプローチが必須条件なのです。そして、その情報を流すチャネルの見直しが欠けているものと考えます。セブン&アイ・ホールディングスの鈴木会長が言われているように「小売業はお客様との心理戦」です。

「困っていない」と言われる人もあるでしょうが、困って無ければ売上不振にはなりません。
その人達は「困っていることに気が付いていない」のです。怪我をして血が流れ出しているのに、痛くないと言っているのです。今一度自店・自分を厳しく現状分析されるべきです。出来ていると考えた瞬間から自店・自分の成長は止まっているのです。

「顧客視点での課題(商品と価格のバランス)発見、プロの技での改革」が必要です。
是非とも健全な店頭売上に向けて、百貨店のOUTLET参入の早急な再構築を祈念致します。

2011.08.30
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之

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