株式会社オチマーケティングオフィス 


<56>GMS衣料品売場のやるべき事

リーマンショック以降低迷を続けていました百貨店売上が少しずつ底打ちし、浮上しつつあります。しかし、GMS衣料品売上は低迷を続けています。またこの震災の影響で一時低迷していますが、この時期にこそ自店の在り方を根本的に見直す良いチャンスなのです。
そこで今回、GMS売上が今後、安定基調に戻るためにクリアすべき課題について掘り下げてみます。

リーマンショックという台風が過ぎ去り震災復興の後は、従来のマーケティン&マーチャンダイジング手法では生き残りません。オールORナッシングと言っているのではなく、理想を研究し設定しそれを掲げて、現状分析しそれを把握した上で、既存の良い部分はより精度を向上させ、悪い部分は思い切って改善するといった事が必要な時期なのです。「計画は慎重に緻密に!実行は大胆に迅速に!」が必須です。

1.基本はお客様
小売業ビジネスはお客様が売場に来ないと始まりません。
まず自店に来店されているお客様の実態を把握する事が重要です。
カードデータがあるので把握できていると思い勝ちですが、実はカードデータは約半分強のデータしか確保できていないのです。
また、代理購買やご主人のカードを利用されている事もあり、実態は不明瞭です。
そして、実年齢では把握できない見た目の印象の方がより商品MDやライフスタイル提案には重要なのです。
コンビニのレジの様に、実際購入されているお客様の見た目の性別と年齢を把握して、データとして入力すれば実質購買層は把握できます。

また、フロアへの来店客については、エスカレータや階段、エレベータでのそのフロアへの来店客を先ほどの見た目の性別、エイジ別に把握し、実質購買層とのギャップを確認することが重要です。
食品フロアで商品を購入しても、衣料品フロアまでは上がって来ていない事を把握すべきです。また、衣料品フロアまで来ても購入されていない事が多いのです。
まずは、衣料品フロアに来店されたお客様のターゲットを絞り、中心エイジターゲットに向けて購買していただく事に注力すべきです。また、既に購入されているお客様には2枚3枚とまとめ買いをしていただく商品MDのニアリ―の集約とシーンの幅出し、及びシーン別売場環境を整えるべきです。

衣料品売場に来られていて購入されないお客様に向けてのMDが最優先で、食品売場には来られていて、衣料品売場に足が向かないお客様はその次のターゲットです。
また、お店に来られない新規のお客様に向けての施策など最後の最後でしょう。
基本的には新規顧客の獲得は、既存顧客のリピータ化の5倍のコストとエネルギーが必要なのです。ここに注力するよりもまず衣料品フロアに来店されているお客様の分析ができれば商品MDの見直し、売場の展開・提案方法の見直しをする方が楽に売上が見込めるのです。

2.衣料品売場のターゲット認識
まず、衣料品フロアに来店されているお客様の性別、エイジ別(見た目優先)を把握し、その同時期の購入されたお客様の性別、エイジ別(見た目優先)を把握します。
第一に、購入されているお客様へのライフスタイル提案をエイジ別(シニア、アダルト、ヤング別)に最低2つのグループを構成してショップまたはコーナーを構築します。お客様の少ないエイジ・ゾーンは削除して必要なエイジ・ゾーンに注力する事も重要なポイントです。

当然、ショップ、コーナーはメンズで言えば、ビジネス〜カジュアル、雑貨までをトータル提案します。レディスで言えば、オンタイムウェア(ハレの日)、オフタイムウェア(ケの日)の区分です。それには合致しないで、単品アイテムで売れているカテゴリー(下着、パジャマ等)は単品訴求型売場も必要となり、その場合はショップ、コーナーの中にある商品とバッティングしても2箇所展開をすべきです。
このライフスタイル展開のショップ、コーナー展開により、お客様にとってはコーディネイトがやりやすくなり、纏め買いに繋がるものです。

また、商品の同質化が判りにくくなり、お客様にとっては「私はこのブランドショップに来れば適した商品が購入できる」と認識していただく事により、ブランドリピータになって頂けるのです。
次に、衣料品フロアに来店されていますが、購入されていないお客様を性別、エイジ別(見た目優先)に把握し、そのお客様に上記にて余る面積での売場構築、MD構築をすべきなのです。要は上記の2種データの差に対し、購入客に対するライフスタイルMD提案を構築するのです。

3.店頭販売強化
現在の売場の販売員はベストをやっていると考えているのですが、本当にベストを尽くしているのでしょうか?自分の知識、経験の中でのベストはこなしているのでしょう。
また、前年踏襲型でやっていればほぼ大丈夫だろうとの考えがないとは言い切れません。
実は前年踏襲でない部分はどの位あるのでしょうか?また、自分達の知識、経験がお客様のすべてを満足させられているのでしょうか?
もっと研鑚を積んで、世の中(GMS業態以外も)を見渡し、自店のお客様の為になることができないのかを見つけましょう。
既存の売場で、既存の商品で、既存の販売員で、什器レイアウトと商品レイアウトとVPを変更することにより、お客様に見やすく買い易い売場が再現でき、当然、既存前年比は難なく達成できるのです。

もう一つの考え方は、リーズナブルなITを導入して後方部門の業務を半減させ、余剰人員を退職させずに、教育し直して店頭へ増員する事です。コンビにでさえセルフからお客様への声掛けを実施していこうとしているのですから、GMSならより説明の必要な衣料品等においては販売員は重要です。
店頭はお客様との接点を多く持つことが売上増加に繋がるのですから、店頭販売員の増加が必然です。しかし、現在の状況下では単なる増員は不可能です。
よって、上記リーズナブルなIT投資により業務改善を行い、それに伴う余剰人員の店頭強化への道筋を作る事なのです。

4.MDの自主性
現場が研鑚を積んでベストを尽くして、ある程度は伸びると思いますが、それでも限界は出てきます。現場のベストを尽くしても売れなくなる時期が来るものなのです。
売れなければ商品と売場、ゾーニング・リレーションに問題があるのです。
いままで衣料品売場は自分の目を捨てて、他に依存し過ぎて売上を落としてきたのです。
自分達のお客様を自分達の目で確認して、そのお客様の欲する商品を自分達で企画開発し、バイイングしてこそ売上が取れるのです。
そこで既存顧客のマーケティングをお客様目線で実施していただき、それにより売場のリアルターゲットを再確認し、それに向けて時代に即した商品開発やバイイングが出来ているかを求めるのです。その為にはバイヤーの育成が急務です。売場の将来はバイヤーの組み立てるMD如何によって、売上の拡大縮小が余儀なくされるのです。

5.最後に
要は、自店の顧客マーケティングに不備があるのです。徹底した顧客マーケティングにより、自店既存顧客に自店が何を提案してくべきなのかを模索する必要があるのです。
来店されているお客様の顔とライフスタイルが見えれば、次はお客様が「何を提案して欲しいのか?」の把握よりも、お客様に「何を提案すべきなのか?」が重要です。お客様は何を提案して欲しいのかが明確に出来ていないのです。それに対する的確な提案商品のラインナップとそれを必要とする顧客ターゲットへの的確なアプローチが必須条件なのです。そして、その情報を流すチャネルの見直しが欠けているものと考えます。小売業はお客様との心理戦です。

「困っていない」と言われる人もあるでしょうが、困って無ければ売上不振にはなりません。
その人達は「困っていることに気が付いていない」のです。血が流れ出しているのに、痛くないと言っているのです。今一度自店に厳しく現状分析をされるべきです。出来ていると考えた瞬間から自店の成長は止まっているのです。
また本部のMDやバイヤー、店長や販売員は、自分が欲しい商品はどの様に探しているのでしょうか?自分が正価で購入というお客様になる事において、商品情報の流し方や売場表現の不備が認識できるのです。その時に初めて顧客目線が身に付くのです。

この内容はお客様と接点を持つ百貨店や小売直結のアパレルにも適用できるのです。
「顧客視点での課題(商品と価格のバランス)発見、プロの技での改革」が必要です。
是非とも健全な店頭売上に向けて、小売、アパレルの早急な戦略再構築を祈念致します。

2011.04.26
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之

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