株式会社オチマーケティングオフィス 


<54>良いものが売れない?

リーマンショック以降低迷を続けていました百貨店売上が少しずつ底打ちし、浮上しつつあります。
そこで今回、百貨店売上が今後、安定基調に戻るためにクリアすべき課題について掘り下げてみます。

1.アパレルは良いものを開発しているが売れない
百貨店に納入していますアパレルは一生懸命「良いもの」を開発し、ブランドイメージを上げ、お客様に認知され、購入され、使っていただき、喜ばれる商品を開発しようと日々努力しています。しかし、中々店頭でその様な評価を受けず、売れなく苦しんでいます。
また、百貨店もその様な商品を出来るだけ、お客様に伝わる様に売場に並べ、お客さまの目に留めて頂くように飾り、販売に日々注力しているのです。
しかし、売れていないのが実情です。では、何故売れていないのでしょう。
大きく捉えれば、百貨店にお客様が入店されない。価格が高く、お客様の手が届かないや全商品がお客様の目に留まる好立地に並べられない、百貨店業態そのものが衰退している等の他に売れない要因を求めている事が多いのです。
でも本当にすべての売場が売れていないのでしょうか?そうではありません。
確実に前年実績を達成し、前年実績以上の予算を達成している売場も皆無ではないのです。他に不振の要因を求めている売場は今後も苦戦を免れません。

2.本当にお客様にとって「良いもの」とは?
アパレルや百貨店が開発しているものは、本当に「良いもの」なのでしょうか?
実は彼らにとって「良いもの」とは、お客様にとって「良いもの」とは限らないのです。
開発側は「作り手」、「売り手」であり、彼らのブランドや商品への「こだわり」が、本当に顧客側の「買い手」、「使い手」にとって「良いもの」とイコールと言えるのでしょうか?
開発側が自分でその商品を店頭で、正価で購入して、自分で使ってみて、初めて実感できるのです。その時に価値観が価格と見合っているかも重要なポイントです。
つまり、お客様目線での商品開発、及び商品展開が出来ていなく、お客様にとっての「良さ」がお客様に伝わっていないのです。
よって、再度商品開発と商品展開の視点のお客様目線での見直しが必要です。
お客様にとっての「良いもの」が開発され、展開されてもまだ売れるとは限らないのです。
商品開発をする為には、この商品を「何処の」、「誰に」、「どの様な場所で」、「どの位の価格で」、「どの様に使って頂くか」を想定し、開発すべきです。

3.自店顧客分析と商品情報展開
百貨店サイドは、そのターゲットとなるお客様はどの様な方法で情報を入手し、どの様な購買方法で購入されるのかを分析し、その情報チャネルに商品情報を流すのです。
当然お客様の年齢層によっても情報の入手方法は大きく異なり、また商品購入チャネルも大きく異なるのです。
従来の百貨店顧客が高年齢化していく中、一番大きな顧客の年齢層は50〜60歳代となっています。それに伴い、告知方法も新聞折込チラシに頼っているのがほとんどです。
しかし、その50〜60歳代の顧客が90%を占める位なら当面それでも良いのでしょうが、それでは今後の自店の延命は不可能です。当然、次世代顧客の獲得も意識せざるを得ないのです。

4.百貨店の今後のMD政策

A)百貨店が生き延びるための戦略は、
1. 地域密着型商品構成
2. 結果論セントラルバイイング
3. 世代を縫う顧客マーチャンダイジング
が重要なポイントです。

B)売上を向上させるための戦術は、
1. 既存顧客に必要な商品構成を見直し、現在展開していないカテゴリーの復活
(効率の悪い売場の見直しか通販でも可能)
2. 既存顧客と同属性の顧客へのアプローチ
(現在の商品構成のままで可能=中身の見直しは必要)
3. 次世代(息子さん・娘さん)への商品構成
(既存売場の効率見直しと同質化ブランドの整理整頓による売場の捻出)

その次世代とは主顧客層の10歳程度下の層ではなく、主ターゲット層のお子様達(20〜30歳代)です。両親に手を引かれて、子供の頃に良く連れて来られた百貨店こそ、来店し易いのですが、彼らに必要な商品は現在揃っていません。まずは揃える事です。
その後、彼らに対するその商品の訴求方法を模索し、その訴求方法により次世代のお客様に来店していただくのです。
このテーマは様々なところでレポートしたり、セミナーしたりしていますので、ここでは詳細に述べませんが、今後の百貨店のMD政策には最も重要なポイントです。

5.最後に
要は、自店の顧客マーケティングに不備があるのです。徹底した顧客マーケティングにより、自店既存顧客が自店に「何を提案して欲しいのか?」の把握とそれに対する的確な提案商品のラインナップとそれを必要とする顧客ターゲットへの的確なアプローチが必須条件なのです。そして、その情報を流すチャネルの見直しが欠けているものと考えます。
「困っていない」と言われる人もあるでしょうが、困って無ければ売上不振にはなりません。その人達は「困っていることに気が付いていない」のです。今一度自分に厳しく現状分析をされるべきです。出来ていると考えた瞬間から自店の成長は止まっているのです。
また、自分が欲しい商品はどの様に探しているのでしょうか?で、正価で、自分がお客様になる事において、商品情報の流し方や売場表現の不備が認識できるのです。その時に初めて顧客目線が身に付くのです。

この内容はお客様と接点を持つGMSやアパレルにも適用できるのです。
「顧客視点での課題(商品と価格のバランス)発見、プロの技での改革」が必要です。

是非とも健全なる店頭売上になるように、小売・流通、アパレルの早急な戦略再構築を祈念致します。

2011.02.28
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之

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