株式会社オチマーケティングオフィス 


<51>輝く百貨店へ! 

リーマンショック以降低迷を続けていました百貨店の衣料品売上が少しずつ底打ちし、浮上しつつあります。
そこで今回、百貨店が今後、安定基調に戻るためにクリアすべき課題について掘り下げてみます。

1.現状の既存中心顧客分析
現在の百貨店はカードを軸にした顧客実態把握を実施しています。しかし、データを集積する事が主たる目的になっているように映ります。自店のお客様が店内の何処で、何を、いくらで、どの位購入されたのかや、お客様の実年齢や性別はともかく、何故、どのようにといった理由や経緯や見た目の感覚年齢はほとんどといって把握や分析ができていません。まずは、実質購買者層の実態把握、推定利用者層の推定把握が必要です。
代理購買の多い百貨店で、この2つを確実に把握する事で、どのような商品やサービスを誰にどのように提案すれば良いのかが見えてきます。つまり、リアルターゲットの把握が最優先されるのです。
セブンイレブンのレジでは店員がお金を払って頂くお客様の見た目の年齢層で、レジ入力時にデータをインプットしています。但し、現社長就任時のコメントに、いままでは50歳以上が一括りであったので、50歳代、60歳代、70歳以上に分割していくと言われていましたが、既におでんの展開を始めた10年位前からアダルト層が増加してきているのですから、その時点で分割対応すべきであったと思われますが、このような対応は流通では早い方なのです。
百貨店では接客販売しているのですから、実際にお金を支払っているお客様の性別と見た目の推定年齢は把握できます。また、紳士服であれば代理購買も多いのですから、接客の中での会話で実際の着用層が推定できます。つまり、お客様のお父様向けなのか、ご主人向けなのか、大学生の息子様向けなのかが推定把握できます。このデータ集積と分析により、実質購買者層と推定利用者層が浮き彫りにされます。

2.今後の既存中心顧客対応
MD本部はこの推定利用者のライフスタイルを分析し、彼らの半年、1年後にどのようなライフスタイルを提案すべきかを研究し、商品の開発や仕入れに活用できます。
プロモーションとしては、これらの商品を誰に向けて提案するのかも把握できているのですから、紳士服売場だからといって、男性向けの高いフェイスアウトやパイプや棚什器などではなく、女性に見やすい低い什器や女性の情報源への提案が不可欠です。
これにより自店の中心顧客ターゲットがリアルに確認でき、MD本部も売場も既存顧客の確実な確保が可能となるのです。そして、その中心顧客ターゲットに必要な商品群を再度品揃えしていくのです。既に切り捨てたものも再度見直しラインナップに組み込むのです。効率は後から考える事です。ともかく何が必要なのかが重要なのです。つまり、来店されている既存顧客に既存の展開品目以外も含めて必要な商材を提案し、そのターゲットの顧客層で取り込めていない人に向けての情報発信も付加していく事により、中心既存顧客ターゲットと同じフレームに存在するお客様をすべて確保する戦略なのです。つまり、自店の強みのフレームに存在する新規のお客様の獲得が可能になるのです。

3.次世代顧客ターゲット対応
現在の百貨店の戦略は中心既存顧客に十分対応できていると考えており、しかし、じり貧となっているので、次世代顧客の獲得に目が向いてきています。果たしてその次世代が本当に自店には取り込み易いターゲットなのでしょうか?
既存顧客の完璧な把握により、取りこぼしの無い対応策は前述に記しましたが、次世代とは果たしてどこのターゲットを捉えて戦略としているのでしょうか?ほとんどの百貨店は自店の中心顧客ターゲットが50歳代となっていて、彼らの10歳下の40歳代を次世代ターゲットとして狙おうとしている百貨店が多いのです。しかし、本当に自店の中心顧客が50歳なのでしょうか?リアルターゲットを確認すると、団塊世代である63歳が一つの山であり、その息子さん娘さん達の33歳(団塊ジュニア)がもう一つの山となっています。但し、団塊ジュニア向け商材の展開の不備により、大半が他チャネルに逃げられており、実態は逆瓢箪型であり、平均すると実質人数の少ない50歳代が中心となっている店もあるのです。また、50歳代が実質中心であれば、いままで自店にほとんど来店した事がない10歳下の40歳代よりも、息子さん娘さん達の20歳代向けの商品展開が必要となってくるのです。つまり、父親や母親に手を引かれて来店していた百貨店こそ彼ら息子さん娘さん達は来店しやすいのに、彼らに向けた商品展開が全くないのが現状なのです。一部の各アダルトブランドがフレッシャースーツと称して大卒生を確保してはいますが、彼らが百貨店で購入した後はスーツをどこで購入しているのでしょうか?他チャネルより取り返しましょう。全く勿体無い対応をしているといっても過言ではないでしょう。

4.今後のMD本部の対応
上記2、3における対応のために、MD本部は自店の顧客分析を店毎に実施し、それを横並びに見て、共通項を模索し、その共通項こそセントラルバイイングに適する仕入れが可能になるのです。先にセントラルバイイングありきではないのです。そして、各店毎に、地域毎に、顧客層の違いによる特徴のある品揃えが必要となるものが見えてきます。これこそローカライズされた仕入れとなるのです。
小売業は地域商圏に密着しないと生き残れない訳ですから、その地域に居住されている顧客層のニーズにあった品揃えを最優先させるべきです。

5.最後に
要は、自店の顧客マーケティングに不備があるのです。徹底した顧客マーケティングにより、自店既存顧客が自店に「何を提案して欲しいのか?」の把握とそれに対する的確な提案商品のラインナップこそが不可欠なのです。
出来ていると言われる向きもあるでしょうが、今一度自分に厳しく現状分析をされるべきです。出来ていると考えた瞬間から自店の成長は止まっているのです。
また、自分が自店で、定価で、自分着用の商品を購入しましょう。着用、洗濯等により自分がお客様になる事において、商品や売場環境の不備が認識できるのです。その時に初めて顧客目線が身に付くのです。

この内容はお客様と接点を持つGMSやアパレルにも適用できるのです。
「顧客視点での課題(商品と価格のバランス)発見、プロの技での改革」が必要です。

是非とも健全なる店頭売上になるように、小売・流通、アパレルの早急な戦略再構築を祈念致します。

2010.12.01
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之


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