株式会社オチマーケティングオフィス 


<43>ファッション流通におけるデジタルVSアナログ

リーマンショック以降、景気の下落傾向は留まるところを知りません。
特にファッションビジネスにおいては、特に高付加価値ゾーンに大きく傷跡を残しています。
如何にファッションビジネスの基本とも言える付加価値ビジネスの再生に向けて、
各業界や企業がチャレンジして行くべきかを考察してみます。

1.店頭データ収集
小売業やアパレルが店頭における顧客データや売上データを収集していますが、
なかなか店頭売上の回復に寄与できているように見受けられません。
各企業はハードなコンピュータ整備に相応の経費を費やし、データの土台になる部分に
ついては十分と言えるだけの投資を行ってきています。
しかしながら、そのコンピュータに取り込むデータ設定の不備や取り込んだデータの加工、
分析について、一部次シーズンの発注参考利用を除いてはほとんど有効活用出来て
いないと言っても過言ではないでしょう。
各企業の経営層や現場にヒアリングするとまず「出来ています」「十分に活用しています」
との声を耳にしますが、果たして事実なのでしょうか?例えば、通信販売のメンズウェアの
発注者は女性客が多いですが、発注者の履歴は取れているのですが、代理購買のため
そのウェアを着用する消費者の顔が見えていません。
発注者のご主人なのか、お父さんなのか、大学生の息子さんなのか、サイズはすべて
大人サイズで対応できても、消費者の実像を把握できていません。
よって、バイヤーは想定して商品企画や発注をせざるを得ないのです。
その結果通販のメンズウェアの打撃率、消化率の悪化に繋がり、在庫増に苦しみ、
どんどん売上シェアを落として、ページ数の削減に陥っているのです。
対応策としては発注者が発注する場合、誰のために購入するのかのワンクリックを
追加するだけで、着用層の実像を把握でき、バイヤーもより精度の高い商品企画や発注が
可能になるのです。

2.店頭データ分析
店頭にて収集した売上データの分析利用についても同様であり、売上の品番、色、サイズ、
価格等のデータは収集できているのですが、そのデータを加工してのさまざまな角度の
データによる「次の一手」が打たれていません。
例えばGMSにおける低価格ジーンズ(スゾ上げ済)の股下の長さの設定など、バイヤーが
修理伝票を調査すれば平均実態を把握できるのですが、確認しないで設定して発注し、
店頭でほとんどのジーンズの修理を対応したGMSもあります。
1000円以下のジーンズに裾丈直しの修理代の300円や400円でも割高に感じるものです。
すべてのお客様に修理なしとはできませんが、修理本数の削減には寄与できるものです。
このようなデータを加工、分析し、利用する事で、購入者のお金と時間消費を軽減でき、
お客様のためになるのです。例えばファイルメーカー等のパッケージソフトを利用する事で、
如何様にもカスタマイズしたデータに加工でき、分析、対応が可能になるのです。

3.店頭データ対応
一部の百貨店では、店頭データは結果であり、そのデータのみでは次シーズンの店頭に
不備が発生するので、お客様の機会ロスを低減するために、お客様に対応できなかった
商品の詳細を販売員がメモをバイヤーに流すといった方法を取っています。
それは重要なポイントですが、まず自店の購買実態を把握できていないと消費者像の
実態把握ができません。その消費者の実態把握ができれば、そのライフスタイルを
創造していくのですから、ターゲットの絞り込みのベースとなるデータが手元のあり、
再現性が高まるのです。
ファッションビジネスは、@自社の独自の特長を明確化して指名され買っていただくか、
Aお客様のニーズに合わせて商品開発していくか、Bお客様のニーズに適応できないかの
3つに大別されます。@AになれないとBのように脱落していくのです。
また、ブランドビジネスは@しかありません。
企業がこの@Aに残るためには、顧客データの収集と徹底活用以外に道はありません。
そう簡単にオンリーワンは開発できないのです。

4.デジタルとアナログのバランス
各企業は上記デジタル・データを平準化、共有化し、同じデータを商品開発、仕入、
販売等の担当者が見て、現状分析や「次の一手」の議論をして、今後の対応を
決定していくのです。
仕事の配分を、このデジタル部分を全体の3割以下にして、残りの7割以上をアナログで、
次シーズンの方針決定や売場の運営のアナログ部分に当てていくべきなのです。
ファッション流通はアナログ部分を高めて行かないと勝ち組になれないのです。
店頭は生き物です。お客様も商品も時間も変化しているのです。
その変化に対応するためには、データによる分析や加工をより活用し、如何に店頭を
活性化させるかに注力すべきです。店頭もマニュアルの整備が必要ですし、デジタル化も
できるのですが、それを運用するのは「人」なのです。この「人」の育成には、
「自ら考える」といった事を経験し、研鑚を積む事が重要です。

「顧客視点での課題の発見、プロの技での改善、改革」が不可欠です。
是非とも健全なる店頭売上になるように、ビジネスを早急に再構築できる事を
祈念致します。

2010.03.29
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之



Copyright@2010 Ochi Marketing Office.All Rights Reserved.