株式会社オチマーケティングオフィス 


<39>不振のGMS衣料品売場対策

経済環境の悪化に伴い、SCやOUTLETや通販も苦戦中ではありますが、百貨店、
GMSが特に衣料品売上の落ち込みが激しいのです。
百貨店はいままでラグジュアリーブランドに依存度が高く、その反動で落ち込みが
激しいのは、三越、伊勢丹を見ても歴然です。しかし、安価なGMSも大幅な苦戦を
強いられています。
では、何故GMSまで落ち込んできているのでしょうか?

経済産業省のDATAによると、08年の紳士服衣料品売上は、
百貨店で5919億円(前年比94.2%)、GMSで4097億円(前年比96%)。婦人子供衣料品
売上は、百貨店で21317億円(前年比93.6%)、GMSで9654億円(前年比93.1%)です。
つまり、紳士服は百貨店がGMSより44%多く、婦人・子供服は2倍以上売っているのです。
衣料品全体としても、百貨店は39604億円、GMSは19043億円と2倍以上売っています。
特に子供服はGMSでの購入ウエイトが多いので、婦人服に至っては、2.2倍以上の
差があります。

この事からまだまだ百貨店の衣料品売上額は大きいと言え、百貨店の衣料品の在り方を
見直す時期に来ているのです。
また、GMSにおいても、衣料品をなくして食品に特化する事も出来ず、粗利率の高い衣料
品ビジネスの構築が課題となっています。

紳士服の売上と婦人服の売上の差は、メンズはビジネスウェアとしてのSUITの需要が、
平日(月〜金)までの仕事に対応してしまっているために、毎日SUITを着替えない
人が多く、土日のカジュアルしか当てに出来ないので、年間衣料品購買額がレディスに
比べて低いのです。
レディスはオフィスでユニフォームに着替えたり、主婦層においても、毎日デイリーウェア
が必要であり、メンズVSレディスの売上比率は1対3や、1対3.5とも言われているのです。

では何故衣料品はGMSで買わないのでしょうか?
実はGMSの業態イメージに問題があり、食品中心の必需品対応の店のイメージがあり、
いままでも衣料品を扱ってはいても、肌着やソックス、パジャマの必需品中心でした。
衣料品を扱っていても、百貨店では扱っていないシニアやシルバーのカジュアルウェアが
中心で、ファッショナブルな必欲品は全くといって扱っていませんでした。
このイメージが払拭できずに、まだまだGMSの衣料品はダサいとのイメージがお客様に
こびり付いているのです。商品はそこそこ洗練されつつあるのにも関わらず、
払拭できていません。

その為に、女性は自分の服をGMSの平場で探している姿を近所の知人に見られたくな
いという心情が働き、メンズ(ご主人等)のものなら多少仕方ないといった感覚で購入
しています。
よって、百貨店の紳士服売上と婦人・子供服売上の比較は、1対3.6なのに比べ、
GMSは1対2.4になっているのです。

この心理を逆手に取って、GMSの衣料品売場のやるべき事は平場を止め、
テイスト編集売場を構築し、柱巻きでも壁面でも天蓋などを設置して、テイスト別に
ネーミングを付け、SHOPに見せるべきです。
商品は品質、サイズ、価格等はそのままでも、纏め直すと価格以上に付加価値が
表現でき、お客様に購買を促すものです。
GMSの平場の横にテナントで入っているRIGHT-ONやHONEYS、BISPAGE等の
商品を見ても、現在のGMSの商品の方が品質が上回っているものも多いし、
価格もそう変わらないか安いくらいなのです。でも、彼らの方が売上も高いのです。

セブンアイホールディングスの鈴木敏文氏が言われている様に、「小売業は心理戦」とは
当然ですが、現在のGMSにはそれを現場に具現化できる人材が不足しているのです。
常にお客様は変化しています。企業はこのお客様の変化に付いて行くか、付いてきて
もらうかのどちらかしか生き延びません。
付いていくなら、お客様のマーケティングを徹底して実行し、必需品の対応力を付けていく
しかないのです。また、付いてきてもらうのは、必欲品を徹底してマーケティングして、
これが無いと不満であるといった心理を生み出すために、BRANDを磨く必要があります。

業界全体が、お客様目線にて売場や商品を見直す時期に来ているのでしょう。

2009.11.30
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之



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