株式会社オチマーケティングオフィス 


<24>ユニクロ(勝組)の不足点

現在の日本の衣料品小売業の中で、カジュアルにおいてはユニクロの一人勝ちと
言っても過言ではないでしょう。
しかし、ユニクロの実施している戦略MDのすべてが正解とは思えません。
一部不足と思われる点も見受けられます。
そこで今回、ユニクロをお客様目線として感じるままに掘り下げてみます。

1.ユニクロの素晴らしい点
A) カジュアルのベーシックアイテムをベースに、ノンエイジ対象に必需品を価格破壊して
  現在に至っています。
B) 素材開発から入った戦略は素晴らしく、特にフリースやヒートテック素材などは秀逸
  のアイテムです。それ以外にカシミヤやダウンなども、市場を席捲しているのです。
  原料開発力は他小売業の追随を許さず、各紡績とのタイアップで「チームMD」として、
  ヴァーチカルなMDを構築しています。
  過去にIYが構築しようとしていた「チームMD」とは質が全く異なります。
C) お客様視点の商品開発力は素晴らしく、ブラトップなどはそのヒット商品と言えます。
D) ネーミングも素晴らしく、プレミアムダウン、プレミアムコットン等少し違うとの差別化
  表現も功を奏しています。
E) 有名タレントを起用したTVによるプロモーション戦略も卓越したものであり、ドライ
  ウェアのTシャツなどは、その最たるものです。
いままでの実績からみて、勝ち組の筆頭に挙げても問題ない状況です。

2.ユニクロの不足と思われる点
A) 単品に注力しており、パワーアイテムと後面に配されている商品とのコーディネイト
  (素材感、色、デザイン等)が上手く噛み合っているとは思えません。
  GAPの様なヴィジュアルMDが不足しているからではないでしょうか?
  紳士物で言えば、デザイナーまたはコーディネイターに問題があるのか、ポスターの
  ジャケットの釦が2つ釦なのに2つとも留められているなど紳士服の基本が判って
  企画されているとは思えない状況です。売場に納品された商品も同様のままです。
B) 合繊系紡績との素材開発に注力しており、08SS以降特にポリエステル混が多く、
  風合いも含めてタウンユース素材に適していないと思われます。
  ドライウェア(吸汗速乾)とは言え、着ているだけで暑いのは問題でしょう。
  その分、天然素材の開発が遅れているのか、プレミアムコットン等表示はしても、
  「何がプレミアムなのか(風合いも)?」お客様に伝わっていないと言えます。
  GAPのヌメリ感のあるTシャツや、イオン・トップバリューのサンホーキン綿のTシャツの
  方が、洗った後までも着心地が良いと感じるのです。着比べれば明白です。
C) 円筒型のケースに入れたTシャツを展開するUTストアは、果たしてお客様に判り易く、
  買い易い商品展開なのでしょうか?
  プリント柄がメインのTシャツをプリントされたポリケースに入れての商品は柄が
  はっきり見えないために、画面でセレクトしてオーダーするような手の込んだ対応では
  お客様視点とは言えないのではと思われます。
  過去コムサイズムが別店舗で雑貨を展開し、雑貨のみでは持たなく、コムサイズムの
  ショップに雑貨のコーナーを組み込む様になったのと同じ展開で、現在ユニクロの
  ショップに様々なプリントTシャツ(ユニクロのイメージに不要と思われるものまでを
  含む=私見)まで導入しています。
D) チラシも表現についても、いままでは店名を押えてもユニクロと判明できたのに、
  最近は表現がGMSのチラシに近づいてきています。
  GMSのチラシは店名を押えると、どのGMSか判らないくらい特長がないのです。
  また、通販のカタログと同様に、売れなければ1ページ当たりの品番数が増加して
  くる様に、チラシも品番数が増加してきており、かなり縮小された品番などは素材や
  サイズなどは、ルーペが必要なくらい小さくて読めない大きさになっています。
E) 現在のファッションは、ヤングとアダルトではサイズを区別して生産せざるを得ない
  のですが、ユニクロと言う単一ショップブランドでは、その2WAYへの対応に苦慮して
  いるように見受けられ、サイズの違いをタグで表現せざるを得ない状況です。
  この問題はショップブランドとグッズブランドを併用している店舗に発生する課題で
  あり、ネームの色を変化させる程度(ノンエイジはベージュ、ヤングはブルー等)の
  テクニックが良いでしょう。
  サイズが一つで対応できる時代になれば、ノンエイジ1つに戻すべきでしょう。

この様な実態を踏まえて、ユニクロの「長所・短所」を見極め、良い点のみ自店の
衣料品売場に参考にしていただきたいものです。

「顧客視点での課題(提案と売場のバランス)発見、プロの技での改革」が必要です。
是非とも健全なる店頭売上になるように、小売業衣料品の売場・商品を早急に再構築
できる事を祈念致します。

2008.08.31
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之



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