株式会社オチマーケティングオフィス 


<18>衣料品小売業のバイイング

百貨店、GMSの苦戦が続いています。
これは経営者のコメントの中に、天気、景気、人気の三気にすべての要因を見つけようと
しているように見える事もありますが、決してそうではありません。
経営者が自社の方向性やヴィジョンを明確に持っていない事や、持っていても社内に
開示、徹底できていない事も重要なポイントです。
現場においては、リストラの嵐が吹きまくり、モチベーションも上がらない環境です。
しかし、この様な状態から脱却するには、経営者のみ指針を出せば良いのではなく、
現場一体となっての企業改革が必須です。
そこで今回、大型小売業の百貨店、GMSのバイヤーの職務について掘り下げてみます


1.現在の小売業バイヤーの実態
現在の百貨店やGMSの仕入れを見ると、バイヤー(買う人)ではありますが、実態は
仕入先からの提案(アパレル展示会やメーカーからの提案)の中から、自店に合うと
思われるものをセレクトしているのに過ぎません。
セレクターと呼ぶ方が正しいとさえ思われます。
本来は、

1.ファッション傾向の把握
2.自店の顧客スタンダードの把握
3.自店の顧客に次シーズン提案すべき「モノ・コト」の検討
4.それに沿った商品をPB開発するか、NB提案よりセレクトして仕入れる

実はこの2.3が出来ていないケースが多いのです。
自店の顧客の動向は把握していると思い込んでいるバイヤーが多く、把握できている
なら、そう間違った仕入れをしていない筈で、これだけ売上が苦戦していると何が売れる
かの予測が立てられないので、総花的な仕入れに依存していると言っても過言ではあり
ません。
つまり、売上の結果データがあっても分析が出来ていないのです。
それが出来ないのに顧客の声と称しての商品別注企画を作るのが仕事と勘違いして
いる事も多いのです。確かに顧客一人一人の満足を大事にする事の積み重ねですが、
まず、多数の顧客を満足させる事を最優先させるべきでしょう。

2.ファッション傾向の把握の方法
欧米の展示会のファッション傾向の入手も重要です。また、国内のアパレルや素材
メーカー等の企画情報も大事です。
しかし、現在のバイヤーに不足していると思われるのは、そのトレンドの「どの部分を」、
「どのくらい」、「いつの時期に」取り込むべきか?が課題です。
つまり、自店顧客ニーズを把握していないとそれが出来ないのです。
また、仕入れ計画を数字で先に立案し、その数字を忘れてブランドや商品を見る事も
重要です。
つまり、数字合わせからの組み立てに捉われずに、ブーム的な商品の力を借りる事も
必要です。


3.自店顧客スタンダードの把握
要は、自店の顧客マーケティングに不備があるのです。
徹底した顧客マーケティングにより、自店顧客のニーズと現在の提案ブランドや商品との
ギャップを認識し、自店顧客に合ったブランドや商品を開発やセレクトしていくのです。
前年売上が最悪の状況であった小売業では、最初に企業ヴィジョンありきで、自店の
顧客には「こう在って欲しい」と理想を掲げ、その後に現状認識をして、そのギャップに
対し、どのルート、方法でそれに向けて進めていくかを決めるべきでしょう。
また、自分が自店で、定価で、自分着用の商品を購入しましょう。
その時に初めて顧客目線が出来るのです。
「顧客視点での課題(売場・商品)発見、プロの目線での改革」が必須です。

4.自店顧客への次シーズン提案構築
上記自店顧客スタンダードの把握ができれば、彼らに何を提案すべきかが、明確に
なってきます。
その商品をまずPBで埋めるか、NBを中心に置くかは、自社の方針に則って順序を
決めるべきです。
バイヤーはそれ位の事は判っていると思っている人が多いのですが、実行に移せて、
結果を出して、初めて正しかったと言う表現が妥当なのです。
このようなバイヤーを育成できる仕組みを構築する事が必要不可欠です。
これからの小売業経営はヴィジョンと現実の把握、そのギャップを縮める方策、
迅速な実行、検証の繰り返しに尽きます。
判っていても売上・利益を落としているのは、判っていないだけでなく、間違っています。
不透明な経済環境の中、トップダウンも重要なポイントですが、現場あっての小売業です。
今こそ、現場のバイヤーが自らリードしていく燃える集団作りが望まれています。

是非とも健全なる店頭売上になるように、衣料品小売業バイヤーの意識改革を早急に
推進できる事を祈念致します。

2008.03.01

株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之



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