株式会社オチマーケティングオフィス 


<16>最近の百貨店リニューアル+SCの店頭事情C

9月の大和富山店の新店移設に伴うリニューアルオープンを3ヶ月経過した現在、落ち
着いた状況で、その後金沢の百貨店とSCを中心に、店頭状況をリサーチしてきました。
近視眼的ですが、北陸にて感じた内容を想いのままに記載してみます。
少々乱暴な点はご容赦願います。

1.百貨店リニューアルの実態
百貨店は一般的には、50〜60歳代をメインにしており、通常はその下の40歳代を取り
込もうとしています。しかし、それが効を奏している事は全くといってよい程できていません。
何故ならば、いままで30歳代まで、違う小売業や他のヤングの強い百貨店で、購買して
きた人達が40歳になったからといって、急にエイジの高い品揃えの店に来るはずも
ないのです。
要は、親子世代、孫世代の家に関わる世代を立て串さしたビジネスを進行すべきでしょう。
 
つまり、親がこの百貨店に来店し易いなら、当然その子供達も来店慣れしているので、
問題はないのですが、彼らが世帯を持ち、自分のテイストにての購買をするようになって
くると、その百貨店では品揃えに不満を持ち出すのです。
昔から言われてきた事ではありますが、「ヤング層が来ないから、ヤング層向け商品群を
切り捨てている」のか、「ヤング層の商品群を切り捨てたから、ヤング層が来なくなった
のか」要は「卵が先か、鶏が先か」といった事なのです。
子供に目を向けなくなった事が、次世代マーケットを捨てた事に繋がっている事を実感
すべきです。

百貨店のリニューアルはここ数年、ことごとく失敗を積み重ねており、数年前の伊勢丹
メンズ館のリニューアルを除き、目を見張る効果は見受けられません。
今年春にリニューアルした店もMDとしては、妥当であるにも関わらず、売上苦戦の
ために、ほぼ元に戻すといった話が巷間飛び交っている情勢であり、本来リニューアル
したなら、売上が即伸びるといった高度成長的な時代ははるか昔に過ぎ去っています。
リニューアルによって、新しいコンセプトに合わない顧客はすぐに去り、新しいコンセプト
になって、欲しい顧客の定着には時間が掛かるものです。
よって、ある程度の我慢も必要です。

リニューアルもマーケティングを頭で考え、自分の店の顧客のライフスタイルの分析も、
ほとんど外部任せで、その積み上げでのリニューアル案を、現場を余り知らないトップ
チームで判断をして作った売場では、売上の向上など、「夢のまた夢」と言えます。
要は、思った様にお客様は動いてくれないという事です。
リニューアル後の手直しが可能か否かが、今後のリニューアルの成否を占うポイントです。
この経費を捻出できる企業が、結果としてリニューアルを成功に導くのです。

2.大和富山店・新店移設リニューアルオープン
大和富山店のリニューアルは移設が伴い、継ぎ足し増床による地型が悪かった前店舗
より、スクエアな形状になり、すっきりとした見易い売場になっています。
立ち上がりから順調に入店客も増加し、いままでのエイジの高い一般的な百貨店の
客層が一変し、40歳代を取り込む計画が、30歳代のニューファミリー層まで取り込めて
います。
この成功は、本部と店サイドの地に足ついた顧客密着型マーケティングが予測以上の
結果を生みだして効奏しています。

大和富山店は、結果としてベビーカーを押したニューファミリーまでが押しかけ、思いの
外の効果も引きずりだした稀に見るラッキー店舗と言えます。
一部のフロアのパーツ部分等に多少の課題を残してはいるものの、相対的には満足の
行くものと判断すべきでしょう。
結果としての予想外の客層を、今後のMD進化にてどのように育てていくかが重要であり、
これを怠ると若い顧客はすぐに離れて行ってしまいます。
今後の店の固定客作りのためのMD進化と接客対応進化に期待します。

3.大和香林坊店
北陸1番店として、格調のあるMD構成であり、地域密着度も掌握できています。
武蔵地区が凋落の一途を辿り、小売業が閉店、閉鎖状況であり、下層階に小売業の
誘致されるマンションの建設が完成するまでは、まだまだ活性化は見るべくもありません。
片町の大和香林坊店はその中で、凛として構えた店作りをし、ミドル層からエイジの
高い顧客までカバーできています。
唯一の弱点と言えば、上記記載のヤング層であり、駅前のフォーラスにほとんど取られた
状態と言えます。
今後の課題は、富山店のリニューアルで体感した世代循環MDをマーケットの大きい
金沢で、どう実践させるかがポイントであることは否めない事実でしょう。
今後の香林坊店の対応が、地方百貨店の今後の方向性を示唆するものになると考え、
期待しています。

4.金沢フォーラス
駅前立地であり、中型の商業集積でありながら、ヤング層の顧客をしっかりと取り込んで
おり、すべてSHOPを貼り付けた状態です。
問題点といえば、アイランドのSHOPが高い壁面を作っており、エスカレータ廻りからは、
裏通りのSHOPが見えない状態です。
これはエスカレータ位置も問題がありますが、導線の取り方と、アイランドのSHOPに高さ
規制をしなかった事が問題と言えます。
改善すれば、まだまだ館としての売上は伸びるでしょう。
その他、ニューファミリーになっていくフォーラスの卒業生をどのような形で繋ぎ止めるかが、
今後の課題と言えます。
前述の大和香林坊店の今後の課題とのせめぎ合いが予測されます。
 
これからも、特にリピーターを財産として捉え、既存顧客への進化させたMDの提案、及び
新規ターゲット(子供といってもニューファミリーとその子供=孫)へのアプローチ方法を研究
しながら、価値創造による消費者のライフスタイルの確立を提案できるビジネスの重要性が
増すものと考えます。
これらの実行が、皆様の企業の発展に寄与できるものと確信しています。

2007.12.29

株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之


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