株式会社オチマーケティングオフィス 


<11>百貨店の魅力あるメンズフロア構築@

(自主編集平場の構築)


百貨店のメンズフロアは、「メンズ」と名付けられても、入店客の70%以上は女性客です。
NYでは来店の45%が男性であり、中国では55%までが男性の来店比率と
言われています。
これはダブルインカムの比率に準じているのであり、
日本はまだまだ女性の労働できる環境が整備されていないのが実態です。
当然、男性にその負担が掛かり、女性には自由時間が生まれているのです。
よって、女性がウィークディのお昼に百貨店に来店できるのです。

まずは「女性」であり、ウィークディに来店される女性の目を通して、
ウィークエンドに男性と同伴で来店してもらう事を意識した売場構築が必須条件です。
某百貨店メンズのように、自分で衣料品をセレクトする男性の入店客と購買客の増加を
目的に、リニューアルして成功してきている百貨店もあります。
それは新宿という巨大なマーケットでできる事であり、
地方・郊外店の顧客の少ない地域にて成功するとは思えませんが、
地方・郊外店の自店の顧客密着対応、つまり地域のスタンダードに合わせるのであれば、
成功する可能性は十分ありえます。

百貨店の紳士服フロアは、「オン」と「オフ」を明確に区分したゾーニングに
なっている事が多いのです。
入店客の70%を女性が占めている状況で、果たしてこのままで良いのでしょうか?
入店客の中での、購買層(実際にレジでお金を支払っている人)と
着用層(購買された商品を実際に着用されている人)のギャップを認識すべきであり、
この購買パターンを意識した売場構築が最も重要です。
再度、百貨店紳士服フロアに来られているメインターゲットを確認して、
これからの売場構築・商品提案を見直して見ましょう。

1.メンズフロア構築の注意点
来店客の70%が女性と言う環境のメンズフロアの中で、
ウィークディは80%を超える状況になってきています。
これを否定せずに認識すると、売場構築のあり方が変わってきます。
女性の目で見たメンズフロアとは、まずは「高さ」が重要です。
つまり、女性の平均身長が男性より約10CM低い事を理解し、
高さを男性向け設定より10CM下げて、
ウィークディに来店される女性に見やすい売場作りが必要です。
また、ゾーニングにおいても同様で、「オン」と「オフ」に区分けした売場なら、
「オン」の売場にはウィークデイに誰もいないといった状況になるのです。
そこで、壁面をすべて「オン」に設定し、中島(アイランド)をすべて「オフ」に設定すると、
ウィークディの女性客に「オン」の良さも伝えられ、
ウィークエンドに男性客を伴っての来店まで促せます。


2.自主編集平場構築の注意点
現在のメンズフロアはショップ、ブランドのコーナ、アイテム平場の3つに大別されており、
特に百貨店バイヤーの仕事は平場の運営が大きくなっています。
しかし、団塊世代の台頭とその次のポスト団塊世代までの広がりを考えると、
この従来型平場のアイテム編集は通用しなくなってきています。
つまり、団塊世代の人達はコーディネイトでの提案が無ければ、
単品と言えど購入しないのであり、トータルで演出されたものを見て、
1枚または2枚を購入するのです。
このような実態を理解した上で、編集平場のあり方を考えてみますと、
「コトのためのモノ売場」を意識し、テーマ編集平場の構築が必要です。
ここにきて、百貨店は本気で「顧客ニーズにフィットしたい」と考え、
しかも実践に向けて重い腰を上げつつあります。問題はここから先です。
ニーズ・ウォンツ等と称して、モノから入ったマーケティングは具現化しつつあります。
売場に来て「スーツどこですか?」「ベストはどこですか?」と目的買いのお客様は
当然声を出して聞いてこられますが、ほとんどのお客様は「何か良いモノがあったら」と
軽い気持ちで来店されているのです。
要は見つからなければ、無理してまで聞かないで、購入しないで帰られるのです。
特にカジュアルアイテムは、衝動買いのお客様を無視しては成り立たないのです。
よって、顕在需要のみでなく、潜在需要の喚起を意識したマーケティングと
マーチャンダイジングが必要なのです。
お客様はフォーマルウエアやスーツの買換え目的以外は、
衝動買いのパターンを踏襲されていて、
前述の「何か良いものがあったら」程度の来店が多いのです。
よって、その時に「旬」なテーマを打ち出し、ライフスタイル全般の中でのシーン訴求で、
お客様のフォーカスされていない需要をフォーカスしてもらい、
「このコーディネイトで着れば、ご主人はこのようにかっこ良くなれる」とのイメージ提案を
打ち出すべきでしょう。
自主編集は何も自主企画、自主販売、買取とはリンクさせなくても可能な手法ですが、
基本は買取であり、価格のイニシアティブの取れる事が出来ない自主編集とは言葉が
独り歩きしているのです。できるところからでもアプローチを実行すべきです。

3.自主企画の買取商品における最終残品問題
最後に、買取商品の最終在庫処分の問題に少し触れておきましょう。
欧米のショップは10店に1店の割合で、アウトレットを持っているケースが多いのです。
そのショップ1店は、百貨店のメンズ平場の規模と同様です。
つまり、店頭にフェイスがある限り最低1割の最終在庫は免れないのです。
委託・消化なら返品もできるが、買取最終在庫は自店の責任において処分が
必要不可欠です。
各百貨店は買取による最終在庫処分を意識して、粗利益の確保が必要であり、
アパレルが最終在庫に苦しんでいる事がその証左です。
是非とも、最終在庫の「捨て場」まで意識した買取による正しい自主企画、自主編集、
自主販売の構築を望むものです。

これらを包括的に把握し、目的を絞ったマーチャンダイジングによって、共通商品を
中心としたコアターゲットに向けた商品MDとエリアの特異性を理解した商品の開発を
バランス良く仕掛けることが重要であると言えます。
特にブランドを資産と捉え、ブランド価値創造による消費者のライフスタイルの確立を
目指すビジネスの重要度が増すものと考えます。

これからのマーケットの推移を予測しながら、
顧客視点によるマーチャンダイジングの徹底が、必要な時代に突入してきています。
この実行が、皆様の企業の発展に寄与できるものと確信しています。

2007.08.01

株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之



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